「ミナミの魔王」
「ミナミの魔王」
シンゴ達はミヨシから、副長の様子を聞き、その原因と思われる実況コメントを見る。
「このコメントの内容に、何か心当たりありませんか?」
そうミヨシが聞くと、シンゴが答える。
「うーん私はよくわからないです、そもそも救援要請って何ですか?」
それを聞いて、ミヨシは説明する
「救援要請とは、パーティ壊滅や補給物資の枯渇などで、ダンジョン内に生存者はいるものの、帰還が困難になってしまった場合に、
同じダンジョンを攻略している、交流の深いパーティに救援を要請するというものなんですが、普通はあまりしないですね」
それを聞いてハッちゃんは聞く
「あまりしないって、どういうことですか?」
ミヨシは頷くと、説明を続ける
「あまりしないというか、「しなくてもいい」という感じでしょうか、
皆様は公式の大会と同様に、実況動画という形で、第三者の目がある状況でプレイされています、
そのため、ルール通り、全滅しゲームオーバーなんてこともありますが、
公式の大会や実況動画で配信する訳でもなく、
内輪だけでプレイしてて、ダンジョン内で進退窮まったらどうしますか?」
それを聞いて、シンゴは納得し答える
「なるほどね、内輪の友達だけでプレイするなら、救援要請しなくても、誰に気にする事もないんだし、ダンジョンに入る直前からやり直してもいいよな…」
ユキは眉をひそめて聞く
「それってズルじゃないですか?」
ユキにそう聞かれ、シンゴが困った顔をすると、
ミノがシンゴの代わりに答える
「えーと…、ユキさんが、オフラインの家庭用ゲーム機でRPGをやってて、パーティが全滅した場合、まさか最初からやり直すなんてこと、しないですよね?」
それを聞いて、ユキは納得する
「そっか、そうですよね、直前のセーブデータからやり直す、とかが普通ですね…」
ユキがそう言うと、タフが顎に手を当てる
「じゃあ、別に救援要請しなくてもいいのに、敢えてするって、どういう事なんだろう?」
タフが考え込むのを見て、ミヨシが答える
「TRPGの醍醐味は、自分たちが作り上げた世界に、どれだけのめり込めるかが全てです、
救援要請を出したパーティにとって、この冒険がよほど思い入れのあるもので、全滅という事実をどうしても避けたい、
そういう「思い」あってのことではないでしょうか」
そこまで聞いてハッちゃんが呟く
「やり直してもいいのに、やり直せないくらい強い「思い」があるんですね、この「獅子の泉」というパーティには…」
シンゴはあることを思い出す
「そうか、「獅子の泉」って…、そうだったか…」
シンゴが言うと、ミノも思い出す
「たしか副長は「七色の旅団」に入る前、「獅子の泉」ってTRPGのサークルに所属してたよな?」
タフも思い出す、
「たしか…、「獅子の泉」が新入生が集まらなくて解散した後、部長が「七色の旅団」に副長を勧誘したんだよ」
ユキは首を傾げ質問する
「何の話ですか?」
それを聞いてシンゴは頭を掻くと、学生時代に副長を勧誘した時の事を説明する。
「へー、そう言うことがあったんですね」
シンゴと副長の出会いを聞いて、ユキが頷くと、
続いてハッちゃんが聞く
「だったら、このキャラクター名のミユって、もしかして副長さんの名前なんですか?」
シンゴは頷くと、ハッちゃんはさらに質問する
「じゃあ、副長さんはプレイヤーだったんですね」
それを聞いて、ミノは思い出す
「そういえば副長が「七色の旅団」に合流して、何度かTRPGをやった記憶はあるが、副長がプレイヤーで参加した記憶は無いなぁ…」
タフも疑問に思う
「副長は今でも実況動画を上げて評価されるほど、ゲームの腕は凄腕だし、もともとTRPGのサークルに入ってたのであれば、それこそ、プレイヤーで参加しそうなもんだがな…」
タフがそう言うと、ミノがさらに続ける
「それに「七色の旅団」の頃から今まで、副長本人から相談が無いのも気になるな」
そこまで聞いて、シンゴが口を開く
「まぁ何か事情があるのは間違いないだろう、だが、今に至るまで副長から「七色の旅団」メンバーにさえ相談が無かったんだ、副長に直接聞いても、答えんだろう、それに…」
それを聞いて、タフが続ける
「頼み事するの苦手なんだよな副長は…、もっと俺たちを頼ってほしいもんだが」
ミノが苦笑いする
「「七色の旅団」時代から苦労かけっぱなしだったからな、よく支えてくれたよ副長は、まぁ一番苦労かけたのはこの人だが」
ミノはそう言ってシンゴの肩を叩く、
シンゴは反論しようとするが、図星だったのか諦める
「まっまぁな…、イベントから何から任せっきりだったからな、今回もそうだし…」
それを聞いて、ユキは目を細めて言う
「そういうことなら先輩、是が非でも副長さんを助けないといけないですよね」
ハッちゃんも頷いている、シンゴは心を決める
「そうだな、救援要請を受けよう」
それを聞いてミヨシは笑顔で頷いた後、【GMミヨシ】として説明を始める
「では少しだけ説明させてください、まず救出するには、パーティ内に救出するメンバーの枠を、作らないといけません」
そう言われ、シンゴは嫌な顔をする
「じゃあ、パーティメンバーを一人外さないといけないのか…」
それを聞いて【GMミヨシ】は首を横に振る
「いえ、正規パーティのフルメンバーは6人なので、救出するメンバーの一枠については問題ありません」
シンゴはホッとする、それを見て【GMミヨシ】は説明を続ける
「あと…、これが問題なんですけど、今回救出するのがカメザキさん(副長)であれば、新たに魔王役が必要となります」
それを聞いてシンゴは考え込む
「そうか、魔王がいないのか…、どうするかな…」
シンゴ達が考え込むと、その瞬間
「皆さんお待たせしました!」
クリアーした際に注文しておいた、ビールと料理を持って、
女子高生アルバイトのフクヤマ ミナミが、元気よく戻ってくる。
「クリアーおめでとうございます」
明るく祝福するフクヤマを見て、シンゴはあることを思いつき、【GMミヨシ】に聞く
「女子高生が魔王で、都合が悪いことなんて、…無いよね?」
それを聞いて【GMミヨシ】は苦笑いする
「ええ、別に都合が悪いってことはないですけど、…大丈夫かしら」
それを聞いてシンゴはフクヤマに聞く
「フクヤマさん、魔王やってみない?」
それを聞いて、フクヤマはキョトンとしている。
「え?、魔王ってなんのことですか?」




