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フェブラリーオブラウンド  作者: 超人テリー
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「建国記念日」

              「建国記念日」



 2月11日 木曜日

 


 午前0時を回った深夜のオフィス、


 シンゴは急に背後に現れた、女性を唖然として見ている。


「先輩、こんな時間まで会社で何してるんですか?、バレンタインデーを別の世界の事にするとか、そのために葬儀に出るとかって、多分…、仕事じゃないんでしょうけど…」


 そう言って、シンゴを怪しんでいる彼女は、『ホリカワ ユキエ』といい、


 入社3年目で、シンゴと同じ部署の後輩にして紅一点、


 同僚からは「ユキ」と呼ばれている。


「ユキこそ、こんな時間になんで会社に?」


 シンゴは慌てて聞き返す


「さっき出張から帰ってきて、遅くなっちゃったから、会社で少し休んで帰ろうかなぁと…、で、そこの応接スペースのソファで、横になってたんですけど」


 ユキはそう答えると、


 シンゴのデスクから、死角にある応接スペースを指差す。


『くっそ…、炊事場で聞いた音は、気のせいじゃなかったのか、何がポルターガイストだよ!、俺のバカ!』


 シンゴは自分の迂闊さを悔やみ、顔を真っ赤にしながら言う


「かっ、かっ、帰ってきたんなら声かけろよ!」


 シンゴが興奮しているのを見て、ユキは驚く


「すっすいません…」


 ユキは一言謝り、理由を説明する


「本当は、先輩がコーヒー持ってデスクに座ったのに気づいて、声かけようと思ったんですけど…、先輩がブツブツと、バレンタインデーに葬儀に行くとか言い出しちゃったから、声かけづらくなっちゃって…」


 そう言って、ユキが申し訳なさそうな顔をすると、


 それを見てシンゴは思う


『…無理もない、真夜中のオフィスで、先輩が「バレンタインデーを忘れたいから、葬儀に行く」みたいなこと言いだしたら、声かけづらいよな…、トホホ…』


 シンゴがガックリと項垂れると、


 ユキはシンゴを見て言う


「でも先輩って、変わってるなぁって思ってたけど、ホント変わってますよね、バレンタインデーが気にいらないからって、赤の他人の葬儀に出るなんて…、アハハハ」


 そう言ってユキは笑うと、シンゴはさらに落ち込むんでしまう、


 そんなシンゴを尻目に、ユキは思いつく


「そうだ!、面白そうだし、一緒に考えましょうよ、うーん、確かに葬儀に出るのはちょっと無いですよねぇ…、他に楽しくない行事ってないかなぁ…」


 ユキはそういうと考え始める。


 シンゴはハッと気を取り直し、ユキを見る


「え?、ユキ、今の話…聞いてたんだよな?、面白いとか言ってたけど、本気か?」


 シンゴがそう言うと、


 ユキは考えるのを一旦止め、キョトンとして聞き返す


「本気に決まってるじゃないですか、なんでそんなこと聞くんです?」


 ユキに聞き返され、シンゴは答える


「いや、女性なら別に、バレンタインデーを楽しめるだろ?、別世界の事にするなんておかしいと思わないのか?」


 シンゴがそう答えると、ユキは目を細める


「先輩わかってないですねぇ…、女性は本命がいるいない関係無しに、義理チョコを用意しないといけないんですよ?、そんなの楽しいと思います?」


 ユキにそう質問を返され、シンゴが納得すると、


 ユキは急に真剣な顔になり質問する


「それはそうと先輩、もう一度聞きますけど、本当に葬儀に出るんですか?」


 シンゴは苦笑いする


「いやさっきも言ったが、葬儀に出るって方法は、駄目だな…」


 ユキはニコリと笑い、シンゴに聞く


「やっぱ、常識ある大人が、やることじゃないですもんね?」


 ユキに笑顔でそう聞かれると、


 シンゴは頭を一つ掻いて答える。


「まぁ、それもあるが、何というか…葬儀に出るよりは、気に入らないと言っても、バレンタインデーの方が、まだマシなんじゃないかと思ってな…」


 それを聞いて、ユキは笑う


「アハハ、それはそうですね」


 ユキの笑顔見て、シンゴはため息をつく


「はぁ…、一瞬でもいいから、バレンタインデーを、忘れられるような場所へ行ければなぁ…」


 シンゴがそう呟くと、ユキは少し考えてから提案する


「忘れられるような場所…、普通に家でテレビゲームやったりすれば、バレンタインデーなんて忘れられるんじゃないですか?」


 シンゴは頭を横に振って答える。


「ユキ、バレンタインデーに、一人で家庭用のテレビゲームするなんて虚しいだけだぞ、俺は何年もその気分を味わってる…」


 何ともいえな表情で返答するシンゴを見て、ユキが苦笑いすると、


 シンゴは、打つ手無しと椅子に座る。


「じゃあ、実際にみんなで集まって、バレンタインデーなんてない別世界へ行ければ…、って無理ですよね…、それこそファンタジーの世界ですし…、うーん…」


 ユキがそう言って考え込むと、シンゴは何かを思い出す


「それだユキ…、流石に二人では無理だが、確か何人かで集まって、ファンタジーの世界を楽しむ…、」


 シンゴは顎に手を当て、さらに何か思い出そうする。


「たしか…、テーブルを囲んでやる、なんかそういうゲームがあって、学生のころ何回かやった記憶があるんだが…、」


 シンゴはそう言って考え込むと、唐突にユキに聞く


「そうだユキ、今日は…、いやさすがに今日は無理か…、明日、金曜の夜は予定あるか?」


 ユキは怪訝そうに聞き返す


「明日の夜なら空いてますけど、何ですか突然?」


 そんなユキの質問に構わず、シンゴは続ける


「じゃあまずは明日夜、仕事終わったら、この続きをしよう、で、可能ならだが…、一人でも、二人でも、友達を連れて来てくれないか?」


 シンゴがそう言うと、ユキはさらに怪訝そうに聞く


「あのぉ、コンパかなんかですか…?、ていうか、今の話についてこれそうな友達、いると思います?」


 ユキにそう指摘され、シンゴはハッとして気づき、頭を掻いて申し訳なさそうにする。


「いや急に誘ってしまって、すまん、別にコンパとか、そういうのじゃないんだ、あぁ、あと、そうだよなぁ、こんな話ついてこれそうな友達、いないよな…、いや、すまん忘れてくれ、ゴメンな」


 そんなシンゴを見て、ユキは仕方なさそうな顔をする。


「とりあえず、当たってみますけど、あまり期待しないでくださいね?」


 ユキはそう答えると、帰り支度を始めた。


 ユキが退社した後、


 シンゴはスマホでメールを何通か送る、


 そのメールの内容には


「二月一二日 金曜日 19:00、カエデ亭にて待つ」


 と書かれていた。


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