「タイムアップ」
「タイムアップ」
午後18時48分、シンゴ達はボスの部屋の扉を開く
「ダンジョンボス戦です、敵は「魔王」、戦闘開始です」
【魔王(副長)】はダイスを振る
「出た目は1、魔王の行動順は1番です、続けてダイスを振ってください」
【GMミヨシ】が行動順の結果を言うと、【魔王(副長)】は続けてダイスを振る。
「出た目は1です、前列ナイトは90のダメージ受けました」
【魔王(副長)】がガッツポーズすると
タフは舌打ちをする
「ちっ、連続で1かよ!、全くついてるな魔王は…、部長、回復は大丈夫か?」
タフがそう言うと、シンゴは頷く
「大丈夫だタフ、余裕だよ、今回の回復役は俺だけじゃない、ハッちゃんもいるんだ、ガンガン行けよタフ、あとミノも回復はいらないから、どんどん弓で攻撃しろ」
シンゴはタフの質問に答えつつ指示を出すと、ミノがダイスを振る
「オーケーだ」
ミノがそう答えると、シンゴは続いてハッちゃんに指示を出す
「ハッちゃんは、前列ナイトのHPを見ながら回復を頼む、足りなそうなときは俺もポーションで回復に回るよ」
指示を聞いて、ハッちゃんは答える
「任せてください、ヒールと回復ポーションを使え分けて、前線を支えます」
ハッちゃんの言葉を聞いて、タフはニヤニヤする
「支えるって、なんか・・・いいよな」
そんなタフを見て、シンゴは呆れる
「攻撃しかしてないのに、羨ましいことだなタフ、ほらさっさとダイス振れよ」
そう言われタフはムッとすると、シンゴを睨む
「そう言う部長は、回復以外で何ができるんだよ?」
タフにそう聞かれ、シンゴは答える
「ロードが前列に出ると、回復がばらけるからな…、そこで俺は全職装備可能の「木の弓」で、シーフと同じく中列から弓で攻撃する、
誰かさんと違って、俺は考えて戦ってるんだよ」
不穏な応酬をする二人を見かねて、ハッちゃんが注意する
「もういい加減にしてください、時間が無いんですよ?、ねぇミノさん」
二人を注意するハッちゃんに、
急に話を振られ、ミノは驚き
「え?、あっああ、全くだ、困ったやつらだ・・・」
とミノが答えると、タフは苦笑いしダイスを振った。
戦闘が始まって10分が経過し、
魔王は強敵ではあるが、ここまで特殊な攻撃をしてくる訳でもなく、
単に5階のボスより1・5倍攻撃力が高いだけのようだ。
「攻撃力はともかく、あとは削り切れるかどうかだが…」
シンゴはそう言って時計を見る、時計は19時まで残り2分を切っている
「大丈夫だ部長、5階のボス戦の時より、火力も回復力も上がってるんだ、行けるよ」
ミノがそう言うと、シンゴは頷く、
そして残り1分、タフがダイスを投げる
「出た目は2です、「魔王に」32のダメージ、「魔王」を倒しました」
【GMミヨシ】が戦闘終了を告げると、シンゴ達はガッツポーズする、
【魔王(副長)】はため息をつく
「はぁ…、まさか間に合うとはな、だがセーフティゾーンまで戻る時間はあるのか?、いや…間に合わなくてもいいのか…」
そう言って【魔王(副長)】はPC画面の地図を見る、
地図には、ボスの部屋にいるシンゴ達パーティの印とは別に、
もう一つセーフティゾーンにもパーティの印がある。
時間は戦闘開始前まで遡る
シンゴは【GMミヨシ】に確認する
「【GM】、パーティを二つに分けることはできるのか?」
シンゴがそう質問すると、【GMミヨシ】はシンゴを見る
「はい、できます」
そう【GMミヨシ】が答えると、シンゴは続けて質問する
「では、片方のパーティが戦っている間、もう一つのパーティはどうなる?」
シンゴの質問を聞いて、【GMミヨシ】は答える
「戦闘しているパーティがターン数を重ねるごとに、戦闘していないパーティはターン数ごとに、ダイスを振ることができます、
このとき魔王役が一人しかいないため、戦闘していないパーティはエンカウント無しで進めます」
その返答を聞き、シンゴは頷くと、ユキに指示を出す。
「ユキは戦闘が始まったら、一人でセーフティゾーンへ向かってほしい」
シンゴにそう指示され、ユキは耳を疑う
「どういうことですか先輩?、冗談でしょ?」
ユキが聞き返すと、シンゴが説明する
「心配するなユキ、戦闘が始まれば、ターン数ごとにエンカウント無しで進める、安全にセーフティゾーンまで戻れるよ」
シンゴがそう答えると、ユキはさらに聞き返す
「戻れるかどうかじゃないんです、ウィザードの火力無しで勝てるんですか?」
ユキがそう言うと、シンゴは説明する
「当然ウィザードの火力を失うのは惜しい、だが、ウィザードはここまで来るのにスキルポイントをかなり消耗してるし、だからと言って回復するために帰還する時間も無い、
それに、明日の事もあるんだ、ボスを倒せなかったとしても、全滅だけは避けなければならない、
だから「リターン」が使えるウィザードには、セーフティゾーンからタウンへ戻ってほしいんだ」
ユキはやむを得ない状況を理解し、顔をしかめる、
そんなユキを見て、ハッちゃんが言う
「「リターン」がある、ウィザードがいるから、攻略できるチャンスがあるんだよ?、そんな顔しないで?」
ハッちゃんにそう言われると、ユキは渋々了承する
「先輩の言う通りセーフティゾーンまで戻ります、でもみんなで帰るのがベストだと思いますし、ギリギリまで待ちます」
ユキが真剣な顔をするのを見て、シンゴがニコリと笑う
「あと、どうせ俺は弓で戦うことになるから、コンバージョンソードを持って帰ってくれ、死んだら間違いなく、失うことになるからね」
シンゴのそれを聞いて、タフは脱力し怪訝そうに聞く
「おい部長、コンバージョンソードを失くしたくないってのが、本音じゃないのか?」
タフにそう指摘され、図星をつかれたシンゴは、頭を掻いてごまかした。
時間は戦闘終了後に戻る
「すまない、セーフティゾーンまで戻る時間が無い、ユキ、帰還してくれ」
シンゴが指示を出すと、
それを聞いてユキは頷き、一人だけセーフティゾーンから「リターン」でタウンに戻る、
そして、時計の針が19時を回る、
「タイムアップ、ゲーム終了です、「はじまりの塔」クリアー、おめでとうございます」
【GMミヨシ】がゲームクリアーを宣言すると、
シンゴ達は席を立ちハイタッチした。




