仇討ちの仇討ち
小さな丘の上。
少し長めの薄茶色い髪がなびく。
僕は墓を立てた。
この世界の通貨は持っていない。
だから買ったものでもなければ、破裂したので遺体も埋められていない。
しかしそれは墓だ。
僕が墓だと思うから墓だ。
「レキウナさん、ランフィリアさん、クランさん。お守りすることが出来なかった件、心よりお詫び致します。仇だけは討ってきますので」
拾ってきた花を添え、町へ戻った。
しかし町から感じられるのは恐怖。
両腕を飛ばし、頭を踏み潰した仮面の適合者。
恐怖以外の感情を持たれるはずがなかった。
「あ、あんた……この町から出て行ってはくれんか?また遣神に狙われてはひとたまりもない」
「えぇ、もう出ます。その前に1つだけ……遣神の最高機関はどこですか?」
「……遣神の最高機関はギノフタル神殿。まずは天冥の境界へ向かいなさい。そこから神域へ行くことができる」
「ありがとう、町長さん」
町長に一礼し歩き出した。
この先にある場所、まず向かうべきは森。
食料に困ることはないだろう。
僕が森に入る寸前。
人が出てきた。
「我が名はファフティール・ナジェリア・セランシエ!フィフティファーレの弟で遣神なり!ここに道化の仮面の適合者はいるか!?」
先日殺した奴の弟らしい。
青い髪、兄とは違う色だ。
髪型も違い、コッチはショート。
黒マントは変わらない。
そして用事があるのは僕。
「僕が適合者。榎谷鞘だ」
「君か。まずは謝罪させてほしい」
そう言うと彼は勢い良く頭を下げた。
「兄の度重なる無礼な行為、兄に変わって謝罪致す!……しかし!我は貴殿を許すつもりはない。それ故に、決闘を申し込む!」
決闘……か。
それは僕への言葉じゃない。
ピエロに向けてなんだろう?
奴なら受けるに決まってる。
「いいでしょう。受けて立ちます」
「ここでよろしいか?」
「僕は構いません」
「では始めるとしよう!生まれろ〝影武者〟!」
彼のその言葉と共に、僕にそっくりな影が目の前で形成された。
「我が力は〝影武者〟相手と同じ力、速さ、知能の影を生み出す」
「僕はそんなことに興味ありませんので」
説明を一蹴し、右手に持っていた仮面を顔につけた。
『あー、体がなまってやがる。〝鞘〟はインドア派か?』
「行け!影武者!」
走ってくる。
…………遅い。
僕自身をかたどったからだろう。
『ふざけてんのか?』
やっと辿りついた僕の分身をピエロは握り潰した。
『つまらねぇな』
「なっ!?何故だ!彼を作ったはずなのに!」
『おい、遣神とやら。この〝鞘〟はな、自分で何も出来ないから俺を頼った貧弱適合者なんだよ。しっかり覚えとけ』
否定できない。
確かに何もできなかったのは事実だから。
「くっ!ならば!」
彼、ファフティールの横一列に5人の影が生まれた。
が、そんなことはピエロの障害にならない。
地面を思いっきり蹴り、ファフティールの横の木まで飛んだ。
その後は目に見えぬ速さ。
0.2秒で影5人+本人。
合計6個の首が飛んだ。
『面白くねぇことに俺を使うな〝鞘〟よ』
顔から外れた。
戦闘時間は1分30秒程度。
「ごめんなさいファフティールさん。ですが、僕も貴方と同じ仇討ち組なんで死ねないんです。安らかに」
そして僕は死体をそのままに森へ入った。




