本当の能力?
「うぐ……あ」
目を開いて視界に入ったのは平地。
森が続いていたはずの場所が全て平らになっている。
あるのは扉のみ。
その前に立っている……神。
「目が……覚めたかぁ……はぁはぁ」
彼の口にした〝全能〟。絶大な能力ではあるが身体への副作用も相応らしい。
どうする……。
諸刃さんもタルトさんもまだ目を覚ましてない。
二人を担ぐことだってできる。
最悪の場合は僕一人でも逃げ……。
馬鹿野郎!そうじゃない!この不条理な世界を変えるためにここまで来たのに僕が仲間を諦めてどうする!二人とも助けるんだ。
「次は……どんな芸を見せてくれるんだ?なぁ、レプリカ」
芸か……アイツにとっては本当にその程度なんだろうな。
でもやるしかない!
「諦められねぇんだよぉおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「正面から突っ込んでくるとは、自殺願望でもあるのか?」
自殺願望……自殺未遂まで行ったさ、でもまだ生きてる。生きてる限りはもう、諦めない
。ただひたすら目的のために!
「借り物だが、使うとしよう。〝豪神の雷槌〟」
デカイ……。アレがきたらまた一帯が……てことは二人も!?
なんとかして止めなければ。
「崩れろ」
「させねぇぇぇええええええ!」
くっそ!間に合わない!なんとか方法はないのか!どこかに!なにか!
「うぅ……榎谷くん?」
なっ!嘘だろ!?タイミングが悪すぎる。
でも尚更諦められなくなった!
「黒キ心ヨ、光ヲ打チ消ス剣トナレ、光ヲ止メル盾トナレ、ソシテ、全テヲ呑ミ込メ」
呪文詠唱と呼ばれるものなのかもしれない。
0.2秒で唱え終わった僕自身、自分の速度に頭がついていかなかった。
気づいた時には槌の下に、剣を持った状態で構えていた。
「なんだと!?」
原理は不明だが好都合。
「オムニポテントだかなんだか知らんが、全てが上手く行くわけがねぇだろ!僕がいる限りはなぁ!」
「チィッ!そのまま潰れてしまえ!」
「ありえねぇよ!!」
想像以上に槌は重かった。
それはもう地面に足がめり込むほど。
比喩ではなく事実上でだ。
「うおおおおおおお!」
「はあああああああ!」
そして再び目の前に雷光が瞬く。
競り……勝った!
「なぜだ!〝豪神の雷槌〟が負けるなど!」
「刻メ、天之尾羽張神」
その詠唱後、ゼウスはバラバラになった槌を驚いた顔で見ていることしかできなかった。
「奮エ」
斬波のような、しかし決定的に違うそれがゼウスを吹き飛ばした。
「グッ!?」
扉にぶつかりヒビが入る。
「俺の方が弱かったと……ふふ、ふはははははっ!」
「何を笑って」
「すまんな!少々侮っていたようだ。扉を壊すという当初の目的は達成したんだ。一時休戦といこうじゃないか」
休戦だと!?ふざけるな!
俺はここでお前を!
「お互い深手だ、これ以上は価値を持たん」
価値など元からなかったはずだろう。
「逃げるのか!」
「……あぁ、そう取ってもらって構わない。最後に、貴様の本当の能力は〝感情の英雄〟。いい能力だ。俺のレプリカに相応しい」
感情の英雄?なんだそれは。
「ではな。再度会えることを楽しみにしてるよ」
「待て!」
僕の声を無視して壊れた扉の隙間から吸い込まれるように消えていった。
速く、僕らも行かなきゃ。追わなきゃ……。




