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空になれ

足が完全に再生し、同時に頭痛も止む。

「鞘はんの足が……」

『人間にはそれなりの治癒能力ってのがあるだろ。それを変えるんだよ』

と、いうことらしい。

にしても気持ち悪いな。

『今は目の前の敵に集中しろ〝鞘〟』

了解。

それで、アイツの能力の詳細は?

『奴の能力は〝虚無〟。造った球体を肥大化させて呑み込んだ物全てを異次元空間へ飛ばす』

は!?

勝ち目ないじゃないか!どうするんだよ!

『電位ってわかるか?』

なにそれ。

今は雑学の話してる場合じゃないだろ!

『落ち着け。同じ電位の物には雷は落ちないんだ。そして奴の周り、土までもが飛んでるのに、奴の体の大きさに合わせた地面だけ残っている』

だからなんだよ。

『電位と同じ性質。自分の周りに次元バリアを張って防いでいるんだと思う。だから攻撃が終わった瞬間に叩けば』

ちょっと待てよ!

次元バリアなんて張ってたら触れることすら出来ないじゃないか!

『いや、奴が張っているのは攻撃中だけだ』

なぜそう言いきれる。

ずっと張っているかもしれないじゃないか。

『ずっと生身の人間が張っていたら窒息するに決まってんだろバーカ』

それもそうか……もうちょっと言い方を。

『さて、狩るぜ』

はぁ……無茶はしないでくれよ。

地面を蹴り、飛躍する。

「何を考えているんだ? 空中では逃げ道が絶たれるだけだが……こちらとしては好都合!」

案の定、カオスは球体を肥大化させてきた。

残念ながらコッチは空気の温度変化で凍らせることも出来るのさ。

文字通りの空気の壁を生み出し、蹴って地面へ戻る。

『原初神カオス!その首頂くぜ!』

いける!

この速度なら球体が消える瞬間に首を落とせる。

「何ッ!?」

戸惑ったカオスの体勢が崩れた。

残り30cm。

なのだが。

いきなりカオスの周りに5つの球体が現れた。

「球体は1つだと誰が決めた?」

ニィと笑ったカオスは体勢を立て直した。

『チッ!』

今回は伸ばしていた手が呑まれた。

バック宙ですぐさま戻る。

おい、どうするんだ!

『すまない、誤算だった』

なぁさっきの攻撃…………。

『!お前頭の回転と目だけはすごいな』

だけは余計だ。

これでいけるのか?

『次こそ決める』

頼んだぞ。

再度走り出すピエロ。

今度こそ神を討つ。

「何度来ても無駄だ!」

7つ、カオスを囲むように出てきた。

『アスタルトォッ!』

少し遠くにいたタルトさんに叫んだ。

『奴のいる地面に植物を生やせ!』

「了解や!」

ボコボコと生え始めた植物によって地面が崩れた。

「なんだと!?」

やっぱり。

奴の次元バリアは内側からなら簡単に破壊できる。

触れるだけでも。

ガラスが割れるような音と共に、見えない何かが割れた。

どんどん呑まれるカオスの体。

勝った。

「くっ!ならば最後の手段!」

カオスは残っている右手をこちらへ向けた。

球体が出現したのは後方。

タルトさんと諸刃さんのいる場所だった。

この距離は……間に合わない。

助けなきゃ……なのにっ!

どうする、どうする!

助けるんだよ!

助ケル!

ナラ、奴ヲ殺スノミ!

1秒も要らず、カオスの前に移動した体。

『死ネ、ゲス野郎」

カオスの体に触れた左手。

そして奴の体は、内部から破裂した。

球体は一瞬にして消え、2人も助かった。

『グッ……カハッ」

倒すと同時に僕は血を吐いた。

さっきの力はなんだ?

僕自身?ピエロ?いや、どちらにも当てはまらない。

なんだったんだ。

「榎谷君!」

すぐに諸刃さんが駆け寄ってきた。

「諸刃……さっん!?」

抱きついてきたのだ。

僕も少し驚いた。

「ありがと」

諸刃さんの一言でホッとする。

僕は守ったんだ。

自分の守るべきものを。

今回は……守れた。

「すごいなぁ、鞘はん」

「いや、タルトさんのおかげですよ」

「そう言ってもらえると嬉しいなぁ」

照れくさそうに言うタルトさん。

力のことはまた今度話そう。

今は優越感に浸っていてもいいだろう。

視界がぐにゃりと歪む。

あれ、僕……ちょっと……力使いすぎたか……な。

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