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無零荒野の原初神

荒野。

見渡す限りの荒野。

「鞘はん……?」

「何?タルトちゃん」

恐る恐る声かけてきたタルトさんをわざとちゃん付けで呼ぶ。

それはこれまで会話がなかったからだ。

人の心に近づきたくない。

確かにそう言った。

しかし、今近くにいる人。

これからも……きっと、僕の最後しにぎわまで関わるであろう人と喋らないというのはなかなか辛いものがある。

「ちっ……ちゃん!?鞘はん、どないしたん!?」

「え?いや、ただ言ってみようかなと」

「続けてもら」

「タルトさんで」

「やっぱりダメかいな……」

しょんぼりとした仕草はしたものの理解した上だった。

すぐに立て直した。

「さ、次は唯はんに言う番やな?」

「はっ!?僕は別にそんなっ……」

無茶ぶりや、応用というものには戸惑うのが人として当たり前なのだが、僕はそれの対応が人一倍遅い。

目を泳がせていると、諸刃さんと目が合う。

「あ、あの榎谷君……」

「はひぃっ!?」

噛んだと言うよりはテンパったと言うべきだろう。

「ちゃん……で呼んでもらえると嬉しいな」

「えぇ!?いや、タルトさんのは何と言うか悪ふざけで……」

「私は悪ふざけでも言えないの?」

悲しんでいるような、ねだるような顔。

えーと……どうするべき?

呼んであげるべきなのかな。

ピエロが変な事言ってたから余計意識しちゃうじゃないか。

彼女が僕に好意なんて……。

あぁっ!もっと恥ずかしくなってきた!

「唯……ちゃん……」

言ってしまったあぁぁぁぁ!

「ん……」

なんだろうこの感じ、心拍数すごいことになってる!

ニヤニヤしながらタルトさんが言ってくる。

「若いってええなぁ。2人とも青春やなぁ」

「若いって……タルトさんも同じくらいでしょ!」

「うち?うちは20歳やで?」

「「は?」」

僕と諸刃さんの声が揃う。

この外見で20歳?

いやいや、同い年くらいでしょ?

2歳しか変わらないけどさ……この、何と言うか……20代の層は厚いと言うか…………。

「だから、20歳やて。若く見えてたなら嬉しいわぁ」

「えええ!?20歳!?」

年上だったのか……。

なんて失礼な言葉遣いしてたんだ僕は……。

「い、色々と失礼な言動を……」

「ええんよええんよ!うち、そうゆーの気にせえへんから!」

優しい。

さすがはタルトさん。

ここで思わぬ音が。

ぐぎゅるるるるる〜。

僕じゃないぞ?

タルトさ……んでもなさそう。

目を丸くしてる。

と、いうことは……。

ゆっくりと諸刃さんの方を見ると、顔を真っ赤に染めていた。

「おなか……空いたの……」

呟くようにボソボソと諸刃さんは言った。

「いやいや!別になんとも思っとらんで!?生理現象やし!仕方ないことやて!ホンマに!」

「そ、そうだよ!僕も今鳴りそうだったんだ!ぐ、ぐぎゅるる〜……。みたいな?」

必死に僕とタルトさんでフォローする。

「う、うん。そっか……」

顔は赤いままだが、普通に戻った。

にしても、食べれるものなんてなさそうだしなぁ。

タルトさんも捕まっていたわけだからお金ないし……。

かと言って、植物があるわけじゃない。

どうしたら……?

「こんな時はタルトちゃんに任せといたらええねん!なんでも出したるでえ!」

「カレー」

「パスタ」

「無理です。ごめんなさい」

僕がカレー、諸刃さんがパスタ。

わざと言ったのだが、なまりを抜いて謝ってくれました。

「冗談ですよ!僕はなんでも!」

「私も、食べれるのに贅沢はいいません」

そう、冗談。

そして世界も冗談のように、ふざけているかのように、わざとらしくも惨たらしく……変わってしまう。

植物を育てたタルトさんの後ろに……黒マントの男。

片手を胸まであげて、手の平に何かを集めている。

次の瞬間、音もなく黒い球体が膨らみ始めた。

全てを呑み込むように。

「タルトさん!危ない!」

「え?」

僕は仮面なしで動いていた。

なのに、速い。

やっと制御が出来るようになったのだ。

嬉しい。

でも今は喜んでいる場合じゃない。

タルトさんの後ろへ回り込み、球体に呑まれぬよう急いで加速。

タルトさんを抱えて踏み込もうとした……しかし、球体は僕のすぐ後ろにあったのだ。

「足に力が入らな……足がないっ!?」

後ろにあった足が呑まれていた。

呑まれ、消えていた。

なら!

体勢を崩し、地面に這うような感じになる。

地面を掴み、思いっきり体を引き寄せた。

ものすごい低空飛行だ。

荒野だからできること。

体を捻って諸刃さんも抱えた。

とうに音速なんて超えているだろう。

「タルトさん!僕の前に植物出せる!?」

「い、いけるで!」

タルトさんの出した植物に背中からぶつかった。

しかも力強く。

「痛ッ……2人とも無事!?」

「だ、大丈夫」

先に返事をしたのは諸刃さんだった。

「うちも平気や……それより、鞘はん……足が」

「あぁ、うん。呑まれた」

「痛くないんか!?」

言われてみればそうだ。

何故痛くないのか。

仮面もつけていないのに……。

『おい〝鞘〟今すぐ俺に代われ』

脳内に直接来たピエロに言われ、仮面をつける。

『これは……〝虚無〟だな。それに応じて奴はカオスだろう』

カオス?ってあの混沌とかそういう意味の?

『はぁ?お前は馬鹿か。カオスってのは〝大口を開けた〟〝からの空間〟を意味する原初神の名前だ。何が混沌だこの馬鹿』

そうだったのか……。

今の人達は「やば!これカオスじゃん」とか「やば!これ大口開けてんじゃん」って言ってるのか……。

恥ずかしいね、こーゆーの聞いちゃうと。

『そんなことはいいから、足治すぞ』

治せるの?

『あぁ、でも頭痛程度は覚悟しとけよ』

わかった!

いつでもどうぞ。

『やるぞ』

ピエロのその一言で足に変化が起きた。

それと同時に頭痛が。

ガンガンと響くような痛み。

でも、足が治るなら。

グチグチと音を立てながら再生しだした。

気持ち悪いんだけど……。

そう思いながら再生する自分の足を眺めていた。

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