激動の樹木使い
「それで?どうやってクルーはん倒すつもりなん?」
「いえ、倒すではなくまずはここを出ることが先です」
「出てもまた捕まってしもたら意味ないやろ?」
地下牢で作戦会議中。
また捕まったら……を考えるのではなく、2度と捕まらないことを考えることが大事なのだ。
そうすればなんとかなったりする。
「出たら、そこからは僕達が攻める番です」
「攻めるってどうやって?榎谷君は仮面がないし、私は剣もない。タルトちゃんに任せるわけにいかないでしょ」
諸刃さんの言う通りだった。
仮面がない。
これは僕にとって致命的だった。
「僕が……能力を使えるようになればいい」
「鞘はんの能力って何なん?」
「〝バランス〟です」
「〝バランス〟!?それなら勝算あるな」
そう、この〝バランス〟という能力はゼウスと呼ばれる全能神の能力と紙一重らしい。
紙一重で劣っている能力。
しかし、クルーさんを倒すことに支障はないはず。
「タルトさん」
「タルトちゃんが……」
「タルトさん」
「むむ、鞘はんタルトちゃんと呼ばんとうちは何も」
「タ、ル、ト、さん」
「酷いなぁ、まぁええとするわ。それで?」
意地でもタルトさんを通す。
女子をちゃん付けでなんて呼んだことないし。
「能力を使うコツとかってありますか?」
「コツ?」
タルトさんは「う〜ん」と唸りながら首を傾げる。
「いらんことを考えなければ普通に使えると思うで」
「いらないこと、邪心とかですか?」
「せやな。能力で何をするのか。それだけを考えれば使えるはずや」
能力で何をするのか。
僕が今することは、ここから出ることだ。
ゆっくりと深呼吸をし、自分の体の前に。折に向かって手をかざす。
檻よ、柔らかくなれ!
「ふっ!」
全身に力を込めて祈った。
檻へ近づき、曲げようと横へ引く。
曲がるわけがなかった。
「はぁ……ダメかぁ」
「鞘はん……努力しような」
「はい」
とは言っても今の状況を打開できなければ意味がない。
「あ、あの……」
女性の声に僕は前かがみなった。
そこに居たのはユウカさんだった。
鍵を持っている。
「これで、開けますので……逃げて下さい」
「でもそんなことしたら」
「私は大丈夫ですから」
僕の入っている檻の鍵穴をガチャガチャといじる。
ガチャンという音と共に扉が開いた。
「2人もすぐに……」
「はぁ、君にはガッカリだよ。ユウカ」
この声は……クルー。
もう、彼にさん付けなどする気もない。
「あなた、どうして」
「君の異変には気付いていたよ。でも確信が持てなかった。ま、それも今ハッキリとしたんだけどね」
「だって……こんなことしたって!意味ないじゃない!あの子だってあなたを止めるために」
「うるさいなぁ。裏切り者は黙って死ね」
裏切り者は死ね?
あんた達は夫婦だろ?
その相手に死ねだと……ふざけるな。
僕は両手を強く握った。
すると……バキンッ。という金属が壊れる音がなった。
「あ、あれ?扉が」
「開いたで?」
2人のいた檻が歪曲し、開いていた。
もしかして、僕の?
「なっ!馬鹿な!?その檻が壊れるなどっ……ちぃっ!全員ここで死ね!」
クルーが手を突き出し、その平に炎が集まった。
「させへんよ」
しかし、タルトさんのその一言と同時に地面からボコボコと音を立てて植物が生えた。
そしてそれはクルーに巻き付いた。
「くっ、なんだこれは!?」
驚くクルー。
「かっ、は!……やっぱりアレがないと辛いわ……」
いきなり吐血したタルトさんに、諸刃さんとユウカさんが駆け寄った。
「タルトさん、これを」
「おぉ、ありがとうな」
ユウカさんから受け取った雫の形をした綺麗なネックレス。
“精霊の涙”を首元につけたタルトさんはすぐに復帰した。
「まずはここから出ましょう!」
早く出なければ、彼の能力はわからないけどフィフティファーレが使ってきた〝火術〟に似ていた。
この狭い空間では危ない。
僕達4人は急いで階段を駆け上がった。
「それで、仮面はどこに!?」
「……その……わからないんです」
「わからない!?」
それではまずい。
僕に勝ち目がなくなってしまう。
「手分けして探してもらってもいいかな?」
「うん、榎谷君には仮面は必要なんだものね!」
「さっき助けてもらった恩もあることやし、手伝うよ」
「私も……お手伝いします」
みんなが手伝ってくれることになった。
クルーがこの部屋に来る前に見つけなければ。
しかし、あの樹木を燃やすことはそう難しいことではなかった。
「全員動くなぁっ!」
足音も立てずに上がってきていたのだ。
全員が止まる。
「もう、こんなの耐えられない!」
ユウカさんが走り出した。
「そうだな、君はこの炎にも耐えられない」
まずい!
このままだと燃やされる。
なんとかする方法はないのか!?
必死に考えるも、いい案は思いつかない。
「死ねぇ!」
クルーが叫び、手から炎が飛んだ。
その炎は人に当た……らなかった。
爆発のような音と共に、樹木に当たっていた。
「アンタの好きなようにはさせへん」
タルトさん!
その間にもユウカさんは仮面を見つけていた。
「鞘さん!これを!」
投げられた仮面。
少し高い。
でも!このチャンスを逃すわけにはいかない!
足に力を込めて思いっきり跳んだ。
その手に仮面が当たりし時、勝利の鐘が鳴る!
しっかりと右手で取る。
「どこまでも馬鹿にしやがって!」
怒り狂ったクルー。
仮面を持った僕の前では、風の前の塵に等しい。
『さぁて、処刑の時間だゲス野郎。〝鞘〟が怒るくらいだ。覚悟しやがれ』




