12.『師弟』
なんだろう・・・
設定がだいぶ固まったからなのか筆が乗ってきた気がします。
勢いがある間に頑張って書きますw
クライフは朝いつも通りに目覚めたため、のんびり朝食を取って、のんびりギルドへと来た。
それでも時刻は9時を過ぎたくらい、約束の時間には30分以上の余裕があった。
(茶でも飲むかな・・・)
そう思ってカウンターの方へ行こうとした背中に声がかかった。
「おはようございます、師匠。
お早いですね。」
声の主はリディエールだった。
クライフはゆっくりと振り返る。
「そっちこそ早かったな。」
「稽古の前に準備運動を済ませておこうと思ったものですから。
まさか師匠もこんなにお早くいらっしゃるとは思いませんでした。」
「宿屋にいてもする事もないしな~と、思ってさ。
んじゃ、ちゃちゃっと始めようか。」
そう言って、リディエールを引き連れてギルドの奥へと向かい、そのまま裏手へと出て行った。
そこは広場になっており、壁際には人型の模型が置いてあり、打ち込み練習もできるようになっているようだ。
たまたまなのか普段からなのかは分からないが、利用者はほとんどいなかった。
しかも、利用者はどうみても子供ばかり。
将来冒険者になりたいと思っている子供が練習しているようにしか見えなかった。
「ここっていつもこんななのか・・・?」
「と言いますと?」
「いや、なんか子供ばっかなんだが。」
「そういうことでしたらいつも通りですよ。
時々アーツの練習に利用していますが、いつも子供たちばかりですね。」
「他の冒険者たちは何で利用しないんだろうな・・・」
「さぁ・・・?」
「まぁいい・・・
とりあえずリディの腕前の方を見せてもらおうかな。
教えると決めたからには、それなりに本気で取り組むから。」
「はい!」
「んじゃ、来な。」
そう言って、リディに向かって掌を上にして手を伸ばし、中指をちょいちょいっと動かした。
「よろしくお願いいたします。」
そう言って相変わらず見事な最敬礼をしてきた。
その頭に向かって軽くコンっと音をさせて鞘が付いたままの太刀を落とした。
「え?」
驚いたように顔を上げてクライフを見つめてくる。
「俺は来いって言ったよな?
何律儀に礼なんてしてんの。」
一呼吸おいてさらに続ける。
「リディにとって強い人間ってのは騎士ってイメージなんだろう。
だけど、今のリディは冒険者なんだ。
初めに言っておくけど、冒険者は騎士様とは違う。
どう違うと思う?」
「ええと・・・主人の有無でしょうか・・・?」
「一般的にはそれもありかな。
でも、俺が言ってんのはもっと根本的なことだよ。
騎士は体面を重んじ、冒険者は自由を重んじる。」
一旦切って、リディが聞く姿勢になるのを待った。
「自由ってのは聞こえはいいけど、人によって解釈は千差万別。
いろんな奴がいるんだ。
そんな中でそんなお上品にしてたらカモられるぞ。
礼儀正しいのはリディの良いところだと思う。
だから、他の冒険者のように振る舞えなんてことは言わない。
けど、相手を無条件に信用しちゃダメだ。
隙も見せちゃダメだ。
特にリディは・・・わかってるよね?」
「!・・・はい。」
神妙な面持ちでリディは頷いた。
「ま、とはいえ常に気を張ってても疲れるだけだしな。
要は相手の思惑を感じ取れるようになれってことだよ。
何故こいつは自分に接触しているのか?
敵なのか味方なのか。
味方だとしても、今だけなのかこれからもなのか。
その辺りの空気を読むように気を付ければいい。
人を見る目には自信があるんだろ?」
「はい!」
(あー・・・似合わねぇ説教なんてしちまったぁぁぁ・・・
なんかほっとけないんだよなぁ。
こんなんだからリセリアの奴にも頼られっちまうんだよな。
って、もしかして俺って女運が悪いだけか!?)
軽く凹んだが、それを顔には出さずに太刀を腰に戻した。
「じゃ、改めてやろっか。」
「はい。」
そう言って、リディは手に持った木剣を構えてきた。
「待った。
腰のを抜いて。」
「え?
真剣でやるんですか?」
「普段使ってる剣じゃないと細かいところが分かんないよ。
木剣と真剣じゃ重さが全然違うからね。」
「なるほど。
でも、危険じゃないですか?」
「リディまさか俺に当たるとでも思ってんの?
まぁ、寧ろ当てて見せて欲しいところではあるんだけど・・・」
「分かりました。」
そう答えるとリディは真剣な表情で腰の剣を抜いた。
それはブロードソードと呼ばれる両刃の両手剣のように見えた。
しかし、刃の幅が狭い。
細身だが長さは若干長いように見える。
刀身の鈍い輝きは鉄ではなく鋼、それもかなり上等のもののようだ。
リディエールが特注で作らせたのかと思ったが、リディの体格には少し刀身が長い気もする。
それに、ずいぶん使い込まれている。
「その剣どこで手に入れたの?」
「これ・・・ですか?
これは冒険者をすると決めた時に、私の侍女が手に入れてくれたものです。
この剣が何か?」
(なるほど、メイドさんか。
フェルニーさんはリディより若干身長が高かったな。
おそらく彼女が使っていたものなんだろう。)
「いや、見たことない形だったから気になっただけだよ。
気にしないでくれ。」
「はぁ・・・」
と、納得したようなしてないような微妙な表情だ。
「ずいぶん良い剣だな。
その剣に負けない使い手になれ。」
そう言ってごまかす事にした。
「はい!」
(素直なのは良い事です。
でも、師匠としては心配です・・・・・)
ふぅ、ふぅ・・・
ゆっくりと呼吸を整える。
剣は正眼に構えた。
師匠は私より早いから攻撃にも防御にも動きやすいようにした。
しかし、師匠は軽く足を開いて立った体勢から動こうとしない。
言葉通り私の動きをみると言う事なのだろう。
ならば・・・と、軽く構えた体勢からQuickMove(瞬動)を起動して一気に懐に潜り込んだ。
そして、そのまま勢いを利用して刺突を放つ。
師匠はそれでも動かない。
あ・・・当たる・・・
そう思って、剣を引こうとした瞬間、ギンっと鈍い音がして手が痺れた。
くっ・・・受けられた!?
つ、次の手を出さないとっ
って、あれ・・・
動こうとした瞬間、手に重さがないのに気付いた。
呆然としている私の目の前で、空から落ちてきた私の剣を師匠が受け止めていた。
しかも、刃を掴むようにして・・・
そのまま私に差し出して、”もう一回”と言ってきた。
凄い・・・
師匠はやっぱり凄いです。