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彼女は僕のお姫様(もとい魔王様)  作者: 一葉
2章:厄介者、もとい弟子を育成することになりました
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11.『密会』

もちょっと登場人物欲しいなぁと思う今日この頃。


クライフはリディエールと別れた後、そのまま宿屋に戻っていた。

まだ日が落ちたばかりなので、趣味に勤しむためだ。

誰にも言っていないが、クライフには密かに嗜んでいる趣味がある。

何かと言えば、編み物だ。

指先に集中して没頭できる時間が心地よく、暇があれば編み物をしていた。

クライフの作品はとある服飾店にこっそり委託販売をお願いしているのだが、実は納入即完売の大人気商品だったりするが、それはまた別のお話である。




部屋に戻り、クローゼットの奥に隠した袋を取り出す。

中には編み棒と何色かの毛糸、それから編みかけのストールが入っている。

続きを編みだしてしばらくしたら部屋のドアがノックされた。


誰だろうと思い、編み道具一式を袋にしまって、覗き穴から外を伺う。

すると、ドアの前にピシっとした感じの女性が立っていた。

長い栗色の髪をしたなかなかに美しい女性だが、雰囲気は刃のような鋭さを持っている。


誰だ・・・?


恐らくかなりできる・・・気配から起きていることは察されているだろうと判断してドアを開けた。


「どちらさんかな?」


そうのんびり言いながら、すでにQuickMoveは起動済みだ。

近接格闘系のアーツもいくつかを起動待機させている。


しかし、その雰囲気を感じたのだろう、女性が謝罪とともに名乗ってきた。


「警戒させてしまったようで申し訳ございません。

 私はアルディエル様にお仕えいたしておりますシンディア・フェルニーと申します。」


「リディの?」

クライフは軽く驚きの表情を浮かべた


「はい。

 お嬢様からベルクライム様に師事する旨をお伺いいたしました。

 突然のことでございましたので、御挨拶に参りました次第です。」


「なるほど・・・」


クライフはフェルニーがひととなりを伺いに来たことに気付いているし、それに気づかれていることにフェルニーも気づいていた。


「こんな所で立ち話もなんだから、下で茶でも飲みながらでどうかな?

 日が落ちたばかりとはいっても、男の部屋でってのはまずいだろ?」

部屋から出たクライフが促がす。


「お気遣い痛み入ります。」


そう言ってフェルニーもついて行った。




二人は隅の方のテーブルに座ると、ウェイトレスを呼んでお茶を頼んだ。

そう時間をかけずにお茶が運ばれてくる。

そのお茶で軽く喉の渇きを潤してからクライフは口を開いた。


「もうぶっちゃけちゃうけど、俺のこと見に来たんだろ?」

クライフがストレートに切り出す。


「ぶっちゃけちゃいますが、そうですね。」

クライフのストレートっぷりを気に入ったのか少し楽しそうに返してきた。


「んで、あんたのお眼鏡には適ったのかな?」


「正直予想以上ですね。」

少し真剣な声で応えてきた。


「そりゃ良かったって言いたいところだが、なんであんたが教えないんだ?」


「と、申しますと?」


「リディは俺に師事したいと言ってきた。

 でも、あんたなら十分、いや十二分に教えられるだろう。

 もしかして、リディは知らないのか?」


「それもありますが、私がお教えしては甘えが出る恐れがあるからです。」


「なるほど。

 でも、あの腕前でDランク依頼を請けるのはやめさせて欲しかったよ。

 あんたの大事な主人が危うく死んじまうところだったんだぜ。」

ふぅと溜息をつく。


「もしこれで死んだとしたら、あの方はその程度の人だったというだけです。」


声の調子から本気であることが感じられた。


「とんでもないスパルタだな・・・」

クライフは半ば本気で呆れていた。


「それに、おかげであなたという人に出会えました。」


「こっちはいい迷惑だよ・・・」

げんなりしながらクライフが呟く。


「それにしても、突然訪問したのに落ち着いていらっしゃいますね?」


「ああ・・・安心したからね。」

崩れかけていた体勢を正して答えた。


「安心?」

フェルニーが眉をひそめる。


「そ。

 あの時遠くからこっちを伺っている奴がいたけど、その正体が判明したんで。」


「気付いていらっしゃったんですか・・・」

フェルニーは本気で驚愕の表情を浮かべた。


「まーね。

 小さい頃から山で狩りとかしてたせいか、視線や気配には人一倍敏感なんだよ。

 リディが狙われてんのかと気になってたけど、なんのこたぁない。

 口では色々言っても、ご主人様が心配なメイドさんが陰から見守ってただけだったってことか・・・とね?」


「・・・・・・・・・」


視線や表情は全く変わらなかったが、耳に少し赤味が射したのをクライフは見逃さなかった。


フェルニーは、ん”っ、ん”っと誤魔化すように喉を鳴らした。


「ともかく、お嬢様の事よろしくお願いいたします。」


「よろしくしたくないけど、よろしくしておくよ。」


「お嬢様にはご自身のお力で運命を切り開いていただきたいと考えています。

 そのための協力でしたら何でもいたしますので、いつでも仰ってください。」

そう言い、深く頭を下げた。


「へいへい・・・」




その後、差し障りのない世間話を少ししてフェルニーは帰って行った。

クライフも部屋へと戻り、編み物の続きにとりかかった。

しかし、名人級のはずのクライフは、この日何故か何度もミスをしていた。

編目を間違えて、その度にほどいては編み直すを繰り返す。

集中できていないことを自覚して、早々に切り上げてベッドに横になるのだった。


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