戦争は人を救えない
今回は少しリアルじみたものを書きました。戦争の事について少しでも分かってもらえたら……。それでは、どうぞ。
「まったくバカな人だよ、あの人は」
おばあちゃんが椅子に座りながら急に話し始めた。何事かと思い振り返ると、椅子の上で編み物をしているおばあちゃんの姿があった。メガネをかけていて補聴器も付けている。目も耳も戦争のせいで悪くなったのだと聞かされていた。
「あたしはね、あの人がした事はこの国を救おうとしたことなのだから責めやしないよ。だけどね、戦争に行き戦争が原因で亡くなってしまったのは許せないね」
おそらくおじいちゃんの事を言っているのだろうと僕は思った。おじいちゃんは僕が生まれる前に戦争の傷が原因で亡くなった。丁度僕が生まれる三年前のことらしい。だから僕はおじいちゃんの事を写真でしか見たことないし、どんな性格なのかもわからない。優しかった。ただそれだけしか聞いていない。おばあちゃんは編み物をする手を止めた。そして僕の顔を見る。
「あんたは、優しく強い子になるんだよ? ケンカはしてはダメ。戦争がおこりそうだったら真っ先にそれを否定しなさい。おじいちゃんはそれをしなかったから、後に後悔したの。戦争は繰り返してはならないの」
当時の僕にはまだ何のことか解らなかった。だけど、今になってはっきり分かる。戦争―――。
それは人を傷つけ愛す人をなくし帰る場所さえも奪ってしまう残酷なもの。戦争まで行かなくともケンカは戦争の序章となる。同じように大切なものをなくしてしまう。それを見つけられなくては残るは絶望しかない。今、僕の頬を涙が伝う。それは悲しいからではない。自分が醜いからだ。人生を放り投げ自殺しようとも考えたあの時の自分は一体何だったのだろうか。本当の自分ではなかったのかもしれない。
その後、普通の日常を取り戻した僕は優しく強い子になると誓った。
とある絶望から這い上がってきた、夏の暑い日の事だ。
いかがでしたか?
戦争というものは決してなくなることはありません。本文にも書いたようにケンカも戦争の一つなのです。するなとは言いませんが、極力避けていただきたい。残るのは絶望のみですから……。
※このストーリーはフィクションです。登場人物は作者とは一切関係ありませんのでご了承ください。