使い魔 第一部 エピローグ
・・・思えばあれが、初めてあいつをきちんと受け入れた瞬間だった気がする。
それでハッピーエンド、二人はいつまでも幸せにくらしました・・・とはいかなかったが。
むしろ、始まりだったと言ってもいいくらいだ。
力もまだまだ取り戻さなければならなかったし、それにかかわる数々の事件、あいつの周りの濃い面々、出会った人々。
まあ、それはそれとして。
俺たちの関係は、ここを起点としてかなり変わっていった。
最初に出会ったとき、ホンモノの幽霊のように姿を消してあいつから逃げることなんて本当はカンタンだった。
だが俺は、そうしなかった。
ほんの少しでも、興味を持ってしまった。
隣に座ることを許した。
確かにそれはその時点で、自分と違うモノへのほんの少しの興味でしかなかった。
それでも、興味を持った。
そばにいることを許した自分がいた。
それすら自覚できずにあがいた日々。
冷たくしても、イヤガラセをしても、あいつはいつも俺を受け入れ、自分の痛みよりも俺のキモチを優先しつづけた。
何もわからないくせに、まるで反対の性質をしているくせに、俺を理解しようといつも一生懸命だった。
それが、あがき続ける俺をゆっくりとからめ取り、包み込み、満たした。
満たされる、という感覚は悪魔には縁遠い。
味わうことができても、それはたいてい一瞬。
だから、満たされない場所をうめるために人を餌食にし、次々と獲物を探す。
とはいえ、満たされているからといって、人の命や感情の味が忘れられるというものでもないわけだが。
心の中が、誰かのことでいっぱいになる。
それは、いつも幸せとは限らない。
それでも、その人が自分に笑いかけることを思うと、ほかの事はどうでもよくなってしまう。
その笑顔よりも大事なことなどない。
幸せで、満たされて・・・なんだか、眠くなってきた。
思い出にひたって、ずいぶん長い時間を過ごしてしまった。
はぁ・・・う。
アクビを一つ。
少しだけ、眠ろうか。
あなたの、夢を見て。
お疲れ様でした。
一部はこれで終了です。
最後までお付き合い頂き、ありがとうございました。
まだ奴らと遊んで下さるようでしたら、次作と続編もよろしくお願いいたします。
では、一度ここでお別れです。
ご縁がありましたら、また。