続き 2
「零くん!」
「零さん!」
あわてて助け起こすレイとスズキ。
「・・・ぃ、・・・たか?」
かすれた声で、零がなにかつぶやく。
「なに?なんですか零さん、零さん大丈夫ですかっ?」
半泣きのレイがアホなことをほざく。
お前には、大丈夫に見えるのかよこれが。
と、やっと意識をたもちながら零は思う。
泣きそうなせいか、レイの顔が、なんだか、いつもと違う顔に見える。
「ちょっとー、僕 何もしてないよ?しっかりしてよぉ!」
困った顔のスズキ。
ぷぎゅ。
「あうっ」
零が小さな手でのぞきこむスズキの顔をおしのけた。
「レイ、みたか?」
「なんですか?ケンカじゃないですよね?仲良しですよねっ?ふざけてただけでしょ?」
不安そうにまくしたてるレイ。
「あぅあー・・・」
小さな手に、顔をギリギリの角度までそむけられたスズキが、答えるようにうめいた。
「こいつも、人間じゃない・・・キケンな生き物だ」
「ぅー・・・はなしてぇ・・・」
もうこれ以上伸びないくらいに首をのばして、零の手の圧力に耐えながらも、倒れた零のカラダを抱き起こしているのはスズキだったりする。
そんなスズキを見つつ、レイはさっきの様子を頭の中で再生してみる。
「・・・」
「ぁう、ぼく、あぶなくない、よー・・・」
首を反らせているせいで話しにくいらしく、スズキは本人の主張とは裏腹に、あぶない人そのものな口調になってしまっていた。
「翼、見ただろ?人じゃ・・・ないんだ」
切れ切れに言葉を続ける零は、力を消耗しすぎていて、もうそろそろしゃべるのも限界だった。
レイは考えをまとめると、
「でも、さっきのは零さんが悪いと思います!」
ピシャリ、と叱るように言い、たしなめるような目で零を見た。
「あははは。」
叱られた零を、のけぞるような姿勢のまま、少し間延びした声でスズキが笑った。
「・・・」
行動を否定されたショックは、ギリギリで保っていた意識を、零から切り離してしまったようだった。
彼のカラダから、力が抜ける。
「えっ?れ、零さん?!」
「零くん!」
零は、消えかかる意識の中で、悲鳴のようにレイとスズキが自分を呼ぶ声を聞いた。
目を覚ますと、部屋に戻っていた。
カラダを起こす零に気付いて、レイがそちらを見る。
「あ、零さん起きた。」
ベッドまで運んだのは、レイだろうか?
無理をしたせいで、さらに体が縮んでいたら、と一瞬不安になった零だが、見たところそうでもないようで安心する。
「スズキさんが部屋まで運んでくれましたよ、もう帰っちゃいましたけど。零さんあんなことしちゃったのに、やっぱり優しいですよね、スズキさんって!」
にこにことレイはそう言ったが、零は不愉快極まりなかった。
同じ人間じゃなくても、スズキだったら怖くないのかよ。
自分が一方的に攻撃をしかけたことも忘れ、ムッとする。
だが、この件に関して誰が考えても零が悪者であり、スズキが恐れられる要因はない。
訳のわからないイライラで、自分を見失ってしまっている零は、それに気付く余裕もなかった。
「どしたんですか?怒ってます?」
ムスッとした零に気付いて、レイが声をかける。
「なんでもない。」
レイが気を使って話しかければ話しかけるほど、なんだか零は苛立っていく。
とうとうその日、零の機嫌が直ることはなかったし、零が自分のあやまちに気付くこともなかった。
その苛立ちの理由にも。