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使い魔日記  作者: narrow
25/68

続き 2

 「零くん!」

 「零さん!」

 あわてて助け起こすレイとスズキ。

 「・・・ぃ、・・・たか?」

 かすれた声で、零がなにかつぶやく。

 「なに?なんですか零さん、零さん大丈夫ですかっ?」

 半泣きのレイがアホなことをほざく。

 お前には、大丈夫に見えるのかよこれが。

 と、やっと意識をたもちながら零は思う。

 泣きそうなせいか、レイの顔が、なんだか、いつもと違う顔に見える。

 「ちょっとー、僕 何もしてないよ?しっかりしてよぉ!」

 困った顔のスズキ。

 ぷぎゅ。

 「あうっ」

 零が小さな手でのぞきこむスズキの顔をおしのけた。

 「レイ、みたか?」

 「なんですか?ケンカじゃないですよね?仲良しですよねっ?ふざけてただけでしょ?」

 不安そうにまくしたてるレイ。

 「あぅあー・・・」

 小さな手に、顔をギリギリの角度までそむけられたスズキが、答えるようにうめいた。



 「こいつも、人間じゃない・・・キケンな生き物だ」

 「ぅー・・・はなしてぇ・・・」

 もうこれ以上伸びないくらいに首をのばして、零の手の圧力に耐えながらも、倒れた零のカラダを抱き起こしているのはスズキだったりする。

 そんなスズキを見つつ、レイはさっきの様子を頭の中で再生してみる。

 「・・・」

 「ぁう、ぼく、あぶなくない、よー・・・」

 首を反らせているせいで話しにくいらしく、スズキは本人の主張とは裏腹に、あぶない人そのものな口調になってしまっていた。

 「翼、見ただろ?人じゃ・・・ないんだ」

 切れ切れに言葉を続ける零は、力を消耗しすぎていて、もうそろそろしゃべるのも限界だった。

 レイは考えをまとめると、

 「でも、さっきのは零さんが悪いと思います!」

 ピシャリ、と叱るように言い、たしなめるような目で零を見た。

 「あははは。」

 叱られた零を、のけぞるような姿勢のまま、少し間延びした声でスズキが笑った。

 「・・・」

 行動を否定されたショックは、ギリギリで保っていた意識を、零から切り離してしまったようだった。

 彼のカラダから、力が抜ける。

 「えっ?れ、零さん?!」

 「零くん!」

 零は、消えかかる意識の中で、悲鳴のようにレイとスズキが自分を呼ぶ声を聞いた。




 目を覚ますと、部屋に戻っていた。

 カラダを起こす零に気付いて、レイがそちらを見る。

 「あ、零さん起きた。」

 ベッドまで運んだのは、レイだろうか?

 無理をしたせいで、さらに体が縮んでいたら、と一瞬不安になった零だが、見たところそうでもないようで安心する。

 「スズキさんが部屋まで運んでくれましたよ、もう帰っちゃいましたけど。零さんあんなことしちゃったのに、やっぱり優しいですよね、スズキさんって!」

 にこにことレイはそう言ったが、零は不愉快極まりなかった。

 同じ人間じゃなくても、スズキだったら怖くないのかよ。

 自分が一方的に攻撃をしかけたことも忘れ、ムッとする。

 だが、この件に関して誰が考えても零が悪者であり、スズキが恐れられる要因はない。



 訳のわからないイライラで、自分を見失ってしまっている零は、それに気付く余裕もなかった。

 「どしたんですか?怒ってます?」

 ムスッとした零に気付いて、レイが声をかける。

 「なんでもない。」

 レイが気を使って話しかければ話しかけるほど、なんだか零は苛立っていく。

 とうとうその日、零の機嫌が直ることはなかったし、零が自分のあやまちに気付くこともなかった。

 その苛立ちの理由にも。

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