使い魔 4 横顔
あたしの大好きな恋愛ドラマ。
一人で見ても楽しいけど、好きな人がそばにいると、もっと楽しい。
でも、その人は、零さんはいつもつまらなそうにそれを見ている。
フキゲンな顔になってる時もあるくらい。
チャンネルを変えられたりテレビを消されたりしたことは
ないから、けっこう楽しんでるのかな?
こんなシュチュエーション、自分達だったら、って思いながらチラチラ視線を送る。
その視線を受け止めてもらえたことはない。
最初は気付かなかったけれど、どうやらわざと目をあわさないようにしてるみたいで、少し悲しいけど、遠慮なくチラ見できちゃうからいいや、と思ってあきらめてる。
ドラマを見てるときのつまらなそうな顔も、かっこいい。
表情がないようでいて、あの人の目は時々、悲しそうに見えることがある。
今思い出すと、初めて会ったときにみた横顔も、こんな目をしていた気がする。
無表情な顔に、どこか悲しそうな目。
ただキレイな顔って思ってたけど、その、影みたいな部分にも惹かれたのかもしれない。
でも、気付いたのは最近。
何かいやなことでもあるのかな、と思うけど、私と居るの
がイヤだって言われたらと思うと、怖い。
彼は、ここ以外に家が無い。
だからここに居るだけ、なのかもしれないから。
そう考えていたら、目が合わないはずの彼と、目があった。
「どうかしたのか」
あんまりじっと見てたせいか、低い、やっぱりこれもかっこいい声で、珍しく言葉をかけてくれた。
あたしのこと、気にしてくれた。
すごく嬉しくて、自然に笑顔がこぼれ
「なんでもないです!」
今日も不安を胸の中にしまう。
大好きな気持ちを、少しでもわかってもらえるように笑顔で。
まずは嫌われないように、明るくしなきゃ。
それから、なるべく会話もして、お互いをわかるように、距離がすこしでも近付くように努力するんだ。
今のところ、あたしが自分のことを話してばかりだけど。
そしたらいつか、あたしがあの人に感じるキモチの10分の1でも、好きになってくれるかもしれない。
あたしたちは、しばらく見つめ合った。
それは、今までにないシチュエーション、だけどいい雰囲気ではなく、やはり零さんは無表情。
「なあ」
零さんが、さらに珍しく続けてあたしに話しかける。
「ドラマ、終わったぞ」
「ぅううーそぉおーーー!」
ぼんやり零さんを見てるうちに、大好きなドラマは終わってしまっていた。
「どうなったんですか?あのあとぉー」
ショックだあ!
次まで1週間ずっと気になる!
でも零さんの答えは、クールで、半ば予想通り。
「別に、見てない。」
「ぅううーそぉおーーー!」
それでも、好き。
キレイな顔で、なんだか怖くて、優しくないけど、この家に住む代わりってことで、言うことは一応なんでもきいてくれる。
自分のことをあんまり話さなくて、たまに低くぼそぼそとしゃべる声もかっこよくて、いつも無表情で、時々悲しそうな目をする、この人。
あなたは本当はどんな人なんですか?
何か悲しい過去があるのですか?
わからなくて、でもそばに居るだけでどんどん好きなキモチは大きくなって。
好きだから、あんな目はしてほしくない。
影があってかっこいいんだけど、でもやっぱり、笑ってほしい。
その笑顔があたしに向けたものじゃなくても。
きっと、笑ってといえば笑って見せるのだろう。
けど、心の中は、笑ってない。
それじゃ意味がない。
あなたを笑わせてあげられたら・・・。
(続)