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魔物討伐

「ふーちゃんはさ、どうして俺のこと助けてくれるの?」

 山を移動中、俺はそんなことを聞いた。

 ふーちゃんはサクサクと山道を進んでいくので、俺は置いていかれないように何とかついていく。

「拓斗が助けてくれたからだよ?」

 振り返るふーちゃんは、何をおかしなことを聞いているのかとでも言いたげな顔をしている。

「……拓斗、多分私たちがいることバレてるかも」

 スンスンとふーちゃんは鼻を鳴らしながら歩いて行く。

「バレてるなら行かない方がいいんじゃ」

「んーん、多分平気。私先に行ってるから、拓斗はゆっくり来て」

 言い残して、ふーちゃんは木から木へ、軽快に飛び移って消えて行った。

 あの子、アホっぽいけど運動神経はいいんだよな。

 仕方なく、俺は言われた通りゆっくりとふーちゃんの後を追っていくと、遠くの方に火柱が見えた。

 少し道に迷いかけていたからありがたい。

 俺は火柱の見えた方に少しずつ進んでいく。徐々に熱くなってきて、全身から汗が出てくる。

 俺、この戦いが終わったら風呂に入るんだ。……戦ってんのふーちゃんだけど。

「拓斗来た!」

 焦げ臭いと感じ始めると、ふーちゃんが手を振って俺のところまで来た。

「もしかして、もう終わった感じ?」

「うん!」

 村長さんとかを見るに、相当厄介そうな相手だったはずなのに。さすがはふーちゃんと言ったところか。

「一応確認したいから、案内してもらえる?」

「分かった!」

 元気よく頷いて、俺の手を引くふーちゃん。

 若干この手が熱く感じるのは、さっきまで戦っていた影響なのだろうか。

 2分ほど歩くと、俺は焼け焦げた場所に着いた。

「これがね、多分あの人たちの言ってたやつ」

 炭になった何かの骸をつつくふーちゃん。

「そうやっていじらないの」

 ぴたっと手を止め、ふーちゃんは立ち上がる。

「えっと、だいたいどれくらいだこれ」

 最初は1匹くらいだと思っていたが、そんなことはなかった。

 辺りに転がっている骸を全部合わせたら……

「31匹だよ」

「あ、あぁ。そうなんだ」

 多いな……ていうかふーちゃんは数えながら戦ってたのか。

「ふーちゃん的には、この……生き物は強かった?」

 ごめんな。俺お前たちの名前知らないんだ。

「んーん。あんまり」

 首を横に振るふーちゃん。

「そっか。でもお疲れ様」

 俺は自然とふーちゃんの頭を撫でていた。

 一瞬事案とか犯罪とかが頭に浮かんだが、ここは日本じゃなさそうだし平気か。ふーちゃんもニコニコと嬉しそうにしてるし。

「拓斗、これで終わり?」

「多分そうだね。一応村長さんは角を持ってきてくれたらって言ってたけど……この様子じゃ全部炭になってそうだね」

「……ごめんなさい」

 俺が苦笑すると、ふーちゃんは申し訳なさそうに謝った。

 別に謝るほどのことでもないのに。

 俺は先ほどよりも、ほんの少しだけ力を込めて頭を撫でた。

「いいんだよ。ちゃんと倒せてるし、きっと村長さんたちも言えば分かってくれるよ」

 ふーちゃんの強さもなんとなく理解してるだろうし。

「ほんと?」

 上目遣いで見てくるふーちゃん。

「ほんとほんと。俺嘘つかない」

 笑ってやると、ふーちゃんはいつも通り明るい表情に戻った。

「なら拓斗、早く戻ろ!」

 頭の上にのせていた手を握ると、ふーちゃんは走り出した。

「ちょっと、ふーちゃん? ここ斜面になって……!」

 軽快に走るふーちゃんと、軽快に転ぶ俺。

 このまま麓まで転がっていくのかな。

 俺は自然と目を瞑っていた。

 何やら体が軽い。それに涼しい……。

 ……もしや俺、死んだ?

 嘘だろ!

 目を開けると、そこには広大な大地が広がっていた。

 ふーちゃんに握られていた右手は、鉤爪に掴まれていた。

 下から見えるこの毛色、見覚えがある。

「あ、ふーちゃんか」

 ということは、俺は今空を飛んでるのか……。

「え待って怖い怖い!」

「ちょっと拓斗! 暴れないで!」

 掴むのならせめて両腕にして欲しい。さすがに片腕だけだと、ちょっとした拍子に落ちそうで怖すぎる。

「いや無理だってこれ怖すぎるって!」

 俺がぴーぴーぎゃーぎゃ騒いでいると、空いていた脚で胴を掴まれた。

 さっきよりは安定感がある……落ち着く。

 完全に脱力しきって、ふーちゃんにすべてを委ねる。

「見て拓斗! 綺麗だよ!」

 言われて、俺は前を向いた。

 確かに綺麗な光景だ。……でもなあ、さっきから鉤爪が食い込んで、それどころじゃなくなってきたんだよなあ……。

「拓斗怪我してる?」

「え、どうして?」

「なんか、血のにおいがするから」

 ……だとしたらそれは、出来立てほやほやの傷から流れた血だね。

「あーうん、多分山で擦りむいたんだと思う」

「……そっか。人間、弱いから心配」

 ふーちゃん視点だと、そうなるのか。でもさすがにこれくらいじゃすぐには死なないぞ。

 俺は掴まれている腹を見る。

 うん、ちょっとしか食い込んでない。気にするから痛いんだ。

「急いで村に戻るね!」

 ふーちゃん超特急便は、加速して俺を村まで届けてくれた。

 乗り心地は記憶にない。


 〇●〇●〇


 村に着いた俺が最初にしたことは、傷を誰かに診てもらうでもなく、村長に報告をしに行くでもなく、下ろされた途端に火柱に包まれるだった。

 もちろん本当に焼けたわけではないし、なんなら腹の傷が治っていた。

「私の再生能力をね、拓斗に少しだけ分けたの」

 ということらしい。

 敵だと思えば焼けるし、仲間だと思えば守りに力を使えるといったところだろうか。

 なにはともあれ、俺の傷はまたも村人たちから驚かれることを代償に完治した。

「実はですねヘルファさん。証拠となる角なんですが、ふーちゃんの火力に耐えられずに炭になってしまいました」

 傷の癒えた俺は、即ヘルファさんに報告へ向かった。

 困惑していたヘルファさんも、俺が必死に説明をしたら直接確認に行くということで納得してくれた。

 またあの山登るのか、とかあそこまで歩くのか、とかそういうことは考えないことにした。

 (ふーちゃんのおかげ100%で)依頼を達成した俺は、ようやく念願の風呂に入れることになった。

 ……と思っていたのだが。

「まあそういうもんだよな」

 湯船なんて贅沢なものは、ここには存在しないらしい。

 基本的には水浴びをするらしいのだが、今回は特別に桶1杯分のお湯を用意してくれた。

 久しぶりのお湯、なかなかに温い……。

 俺は桶に手を入れたまま、しばらくぬくもりを感じ、渡された布を使って体中を隈なくきれいにした。

 ちなみにふーちゃんはというと、一番汚れていてもおかしくないはずなのに、どこにも汚れは見当たらず、狩りに行ってしまった。

「拓斗さん。あなたにはなんとお礼を言えばいいのか……」

「俺は何もしてないですよ」

 頭を下げるヘルファさんに、俺は笑って返す。実際何もしてないしね。

「しかし……本当に良かったのでしょうか。報酬があのお湯だけで」

 たしかに、欲を言えば浴槽いっぱいのお湯が欲しかった。

「いいんですよ。こういうときは、助け合いです」

 何もしていない割りに、かっこつける俺。

 知り合いにはこういう場面見られたくないな……。

「拓斗みてー」

 背後から名前を呼ばれ、俺の体はびくっと跳ねた。

「お、おぉ。すごいのもってきたね……」

 ふーちゃんはでかいイノシシを2頭引きずって戻ってきた。

 俺の今の発言、聞かれてないよね……?

「拓斗、助け合いって、なに?」

 首をかしげるふーちゃん。

 俺は素早くふーちゃんの隣に行く。

「いやーそれにしてもすごいねふーちゃん! ちゃんと言った通り、火を使わないで狩れたんだね! いやー偉い! 偉すぎるよ!」

 俺は力いっぱい頭を撫でた。

 そう、今回ふーちゃんは獲物を炭に変えていないのだ。これでようやく炭以外を食えるかもしれない。

「それじゃ、そのお肉は村の人たちに料理してもらおうか」

 名残惜しそうにイノシシを見てから、ふーちゃんは頷いた。

 それから俺とふーちゃんは、料理ができるまで軽く散歩をしたあと、寝て待つことにした。

「お、おいしい!」

 初めてまともな食事をしたのか、ふーちゃんは肉を一口かじった途端に飛び跳ねた。それを見ている村人たちの目はとても優しい。

「拓斗拓斗! これすっごくおいしいよ!」

「そうだね、すごくおいしいね!」

「ほら拓斗もたべて!」

 ふーちゃんの食べかけを、無理やり口に詰められる俺。

 でも本当においしい。

 そうそう。俺はこういうのをふーちゃんに食べて欲しかったんだと、はしゃぐふーちゃんを眺めながら思う。

「本当に私たちもいただいてよろしいんでしょうか」

「いいんですよ。むしろ、この量は2人で食べるには多すぎますから」

 ふーちゃんならもしかしたら食べつくすかもしれないが、せっかくならみんなで一緒に食べた方がおいしいに決まってる。

 俺は串に刺さった焼いた肉を1つ取ると、ヘルファさんに渡した。

 夜は長く、それから俺たちは満足するまで肉を食べ、騒ぎに騒いだ。



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