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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

すれちがいの四季─空欄のむこうへ─

掲載日:2026/02/24

これは、武 頼庵(藤谷 K介)様 主催「すれ違い企画」参加作品です。


(2/25追記)

企画規定の文字数2000字〜のために加筆しました!(;´∀`)<危なかった…

― 春 ―


桜がひらくころ、

通知欄に並ぶ あなたの名前は、花びらよりも軽やかに、私の一日をやわらかく彩っていた。


「新作を投稿しました」、のひとことに心が弾み、

「感想ありがとうございます」、のやさしい返事に心が往復する ぬくもりを知った。


たった数行で、世界はこんなにも明るくなるのだと知った。


顔も知らない。

声も知らない。


けれど、物語の温度だけは、確かに伝わっていた。


画面越しに読む文章の向こうに、息づく心があると信じられた春だった。


だからこそ、ある朝、何気なく開いた お気に入り欄にぽっかりと空いた空白を見つけたとき、一瞬、意味が理解できなかった。


──昨日まであった名前がない。


作品一覧も、活動報告も、何もかもが、まるで最初から存在しなかったかのように消えている。


花は散るとき、音を立てない。


けれど心は、はっきりと音を立ててひび割れた。


どうして、ひとこと、言ってくれなかったのだろう。

どうして。

どうして、何も言わずに。


ほんの一言でよかった。


「少し休みます」でも、

「ここまでにします」でも、


たったそれだけで、こんなにも取り残された気持ちにはならなかったのに。


桜の花びらが、風に巻き上げられて遠ざかっていく。


手を伸ばしても、指先は空を切る。


春は、出会いの季節だという。


けれど私はそのとき、別れの形を知った。


― 夏 ―


陽射しの強い午後、

ふと、あなたの物語の一節を思い出す。


あの場面が好きだった。


主人公が雨の中で立ち尽くしながら、それでも前を向くと決めた瞬間。


あの台詞に、私は何度救われただろう。


あのあと、きっと主人公は笑っただろうと、勝手に続きを想像する。


もう本文はどこにもないのに、物語だけが、私の中で生きている。


私の中で、何度も読み返したあの情景は、今も鮮やかに立ち上がる。


でも、ページはもう開けられない。


リンクを辿っても、そこにあるのは無機質な空白だけ。


創作もまた、書き手が去れば、跡形もなくなる。


夏雲は大きく、けれど触れればすぐに消えてしまう。


言葉も、アカウントも、こんなにも簡単に消えるのだと知った。


それでも。

あなたが書いた言葉は、確かに私の時間を変えた。


私の心に、小さな灯をともし、私の夜を照らした。


「ねえ、あなたは今、元気ですか?」


「ねえ、今どこで、何をしていますか?」


現実の波が押し寄せて、どうしても筆を置くしかなかったのでしょうか。


理由はわからない。


すれちがいのまま、問いだけが空に昇っていく。


― 秋 ―


風が冷たくなり、ページをめくる音が少しだけ寂しくなる、夜の長い季節。


新しい作家と出会い、新しい物語に心を動かされる。


──それでも、ときどき思い出す。


あなたなら、どう書いただろう。

この展開を、どう評しただろう。

あの主人公の続きは、どんな未来を歩いたのだろう。


退会の理由は、きっとそれぞれにあったのだろう。


創作は喜びであると同時に、傷つく行為でもある。


誰かのたった一言が、刃物のように深く刺さることもある。


見えない場所で、何度も何度も、心が削られていたのかもしれない。


事情も、痛みも、私には見えない。


わかっている。

わかっているのに。


それでも。

一言、ほしかった。


一言、「さようなら」と言ってほしかった。


最後に、「ありがとう」と返したかった。


あなたの決断を止めたかったわけではない。


ただ、最後に、同じ時間を共有した者として、きちんとお別れをしたかった。


落ち葉は、枝から離れる瞬間、どんな気持ちなのだろう。


落ち葉は、枝から離れるとき、きっと風に身を任せるしかないのだろう。


けれど、枝の側には、確かにその重みが残る。


あなたがいた場所には、今も形のない気配がある。


それは喪失であり、同時に、確かな記憶でもある。


― 冬 ―


白い朝。


お気に入りの空欄は、雪原のように静まり返っている。 


けれど、足跡は消えていない。


あなたと交わした感想。


夜更けに読んだ更新。


「次も楽しみにしています」と送った一文。


「励みになります」と返ってきた言葉。


笑ったやりとり。


それらは、私の中に静かに積もっている。


すれちがったままでも、消えたわけではない。


創作の場は、出会いと別れが交差する場所だ。


交差点のように、同じ方向へ歩く人もいれば、すれちがい、二度と会わない人もいる。


私たちは、ほんの短い時間、同じ物語を見つめ、同じ言葉に心を揺らした。


それだけで、十分だったのかもしれない。


それでもやはり、寂しさは消えない。


もし、どこかでまた筆をとることがあれば。

もし、別の名前で物語を書いているのなら。


どうか覚えていてほしい。


あなたの物語に救われた読者が、ここにいたことを。


静かに拍手を送っていた人間が、確かに存在したことを。


ここに、あなたの物語を愛した読者が、確かにいたことを。 


そして私は、今日も春を待ちながら、新しい誰かと出会い、また別れ、それでも物語を読み続ける。


またいつか訪れるかもしれない別れを、どこかで覚悟しながら。


すれちがいの痛みを抱えたまま、それでもページを私はめくる。


春を信じて。


──物語を愛しているから。


最近、お仕事などが忙しいせいか、悲しいことがあると、余計に悲しくなります〜(´;ω;`)


どうか、私に「推し事」をさせてください!୧(ಠДಠ)୨<何でもお声がけ下さいませ!

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― 新着の感想 ―
寂しいですよね… でも、素晴らしい一期一会でもありますね。 再読しなくても、人の心に残り続ける作品を書けた事。 それは書き手として最高の幸せだと思いますので、退会されてしまった方がこのお話を読んでくれ…
素敵な物語ありがとうございました。 私も高校生の頃に読んだ、今では名前もわからない作品をずっと探し続けています。 ある日、突然見れなくなったあの作品。 思い出補正かもしれない。でも、若い私には青春の…
さびしいですよねー。そして「一言ほしかった」。これ、すごくわかります。 割烹で悩んでる気配がある場合は、理由を察することもできますけど、それでも一言って思ってしまう。理由が想像できない場合は、もうやる…
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