すれちがいの四季─空欄のむこうへ─
これは、武 頼庵(藤谷 K介)様 主催「すれ違い企画」参加作品です。
(2/25追記)
企画規定の文字数2000字〜のために加筆しました!(;´∀`)<危なかった…
― 春 ―
桜がひらくころ、
通知欄に並ぶ あなたの名前は、花びらよりも軽やかに、私の一日をやわらかく彩っていた。
「新作を投稿しました」、のひとことに心が弾み、
「感想ありがとうございます」、のやさしい返事に心が往復する ぬくもりを知った。
たった数行で、世界はこんなにも明るくなるのだと知った。
顔も知らない。
声も知らない。
けれど、物語の温度だけは、確かに伝わっていた。
画面越しに読む文章の向こうに、息づく心があると信じられた春だった。
だからこそ、ある朝、何気なく開いた お気に入り欄にぽっかりと空いた空白を見つけたとき、一瞬、意味が理解できなかった。
──昨日まであった名前がない。
作品一覧も、活動報告も、何もかもが、まるで最初から存在しなかったかのように消えている。
花は散るとき、音を立てない。
けれど心は、はっきりと音を立ててひび割れた。
どうして、ひとこと、言ってくれなかったのだろう。
どうして。
どうして、何も言わずに。
ほんの一言でよかった。
「少し休みます」でも、
「ここまでにします」でも、
たったそれだけで、こんなにも取り残された気持ちにはならなかったのに。
桜の花びらが、風に巻き上げられて遠ざかっていく。
手を伸ばしても、指先は空を切る。
春は、出会いの季節だという。
けれど私はそのとき、別れの形を知った。
― 夏 ―
陽射しの強い午後、
ふと、あなたの物語の一節を思い出す。
あの場面が好きだった。
主人公が雨の中で立ち尽くしながら、それでも前を向くと決めた瞬間。
あの台詞に、私は何度救われただろう。
あのあと、きっと主人公は笑っただろうと、勝手に続きを想像する。
もう本文はどこにもないのに、物語だけが、私の中で生きている。
私の中で、何度も読み返したあの情景は、今も鮮やかに立ち上がる。
でも、ページはもう開けられない。
リンクを辿っても、そこにあるのは無機質な空白だけ。
創作もまた、書き手が去れば、跡形もなくなる。
夏雲は大きく、けれど触れればすぐに消えてしまう。
言葉も、アカウントも、こんなにも簡単に消えるのだと知った。
それでも。
あなたが書いた言葉は、確かに私の時間を変えた。
私の心に、小さな灯をともし、私の夜を照らした。
「ねえ、あなたは今、元気ですか?」
「ねえ、今どこで、何をしていますか?」
現実の波が押し寄せて、どうしても筆を置くしかなかったのでしょうか。
理由はわからない。
すれちがいのまま、問いだけが空に昇っていく。
― 秋 ―
風が冷たくなり、ページをめくる音が少しだけ寂しくなる、夜の長い季節。
新しい作家と出会い、新しい物語に心を動かされる。
──それでも、ときどき思い出す。
あなたなら、どう書いただろう。
この展開を、どう評しただろう。
あの主人公の続きは、どんな未来を歩いたのだろう。
退会の理由は、きっとそれぞれにあったのだろう。
創作は喜びであると同時に、傷つく行為でもある。
誰かのたった一言が、刃物のように深く刺さることもある。
見えない場所で、何度も何度も、心が削られていたのかもしれない。
事情も、痛みも、私には見えない。
わかっている。
わかっているのに。
それでも。
一言、ほしかった。
一言、「さようなら」と言ってほしかった。
最後に、「ありがとう」と返したかった。
あなたの決断を止めたかったわけではない。
ただ、最後に、同じ時間を共有した者として、きちんとお別れをしたかった。
落ち葉は、枝から離れる瞬間、どんな気持ちなのだろう。
落ち葉は、枝から離れるとき、きっと風に身を任せるしかないのだろう。
けれど、枝の側には、確かにその重みが残る。
あなたがいた場所には、今も形のない気配がある。
それは喪失であり、同時に、確かな記憶でもある。
― 冬 ―
白い朝。
お気に入りの空欄は、雪原のように静まり返っている。
けれど、足跡は消えていない。
あなたと交わした感想。
夜更けに読んだ更新。
「次も楽しみにしています」と送った一文。
「励みになります」と返ってきた言葉。
笑ったやりとり。
それらは、私の中に静かに積もっている。
すれちがったままでも、消えたわけではない。
創作の場は、出会いと別れが交差する場所だ。
交差点のように、同じ方向へ歩く人もいれば、すれちがい、二度と会わない人もいる。
私たちは、ほんの短い時間、同じ物語を見つめ、同じ言葉に心を揺らした。
それだけで、十分だったのかもしれない。
それでもやはり、寂しさは消えない。
もし、どこかでまた筆をとることがあれば。
もし、別の名前で物語を書いているのなら。
どうか覚えていてほしい。
あなたの物語に救われた読者が、ここにいたことを。
静かに拍手を送っていた人間が、確かに存在したことを。
ここに、あなたの物語を愛した読者が、確かにいたことを。
そして私は、今日も春を待ちながら、新しい誰かと出会い、また別れ、それでも物語を読み続ける。
またいつか訪れるかもしれない別れを、どこかで覚悟しながら。
すれちがいの痛みを抱えたまま、それでもページを私はめくる。
春を信じて。
──物語を愛しているから。
最近、お仕事などが忙しいせいか、悲しいことがあると、余計に悲しくなります〜(´;ω;`)
どうか、私に「推し事」をさせてください!୧(ಠДಠ)୨<何でもお声がけ下さいませ!




