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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第2層 意識の芽生え
8/11

第8話 妄想と発明のファミレス会議

昼下がりのファミレス。窓際の席に座るヤスは、ノートPCを開いて何やらグラフを眺めていた。


神谷がドリンクバーでコーラを注ぎ、ポテトをトレイに乗せて戻ってくると、ヤスは顔を上げて問いかけた。

「さて、ナオヤ氏。発明品の使い心地はいかがでしたかな?」


神谷はポテトを1本つまみながら、煙幕弾スモーク・カプセル閃光弾フラッシュ・ピン音響デコイ(チューチュー・ボット)の使用感を語り始めた。


「スモーク、マジで助かった。

あれなかったら、モグラに囲まれてたわ。

フラッシュも、ゴーレムの目潰しに使えたし。

で、チューチューな。あれ、思った以上に使えるぞ。

モンスターが音に反応して、そっちに突っ込んでいった。

特にモグラ系は聴覚頼りだから、完全に引っかかってた。

あれがなかったら、囲まれて終わってたかもしれん」


ヤスは満足げに頷いた。

「ふむふむ、音響デコイ(チューチュー・ボット)は初投入でしたが、効果ありと。

改良の余地もありそうですな。音の種類を選べるようにすれば、さらに撹乱力が上がるかもしれませんぞ」


「それ、いいな。モグラには地鳴り系、生物には炸裂音とか。

敵の種類に合わせて使い分けできたら、戦術の幅が広がる」

「では、次なる発明の参考にさせていただきますぞ」


神谷はポケットから魔石を取り出し、テーブルの上にいくつか置いた。

ヤスはそれを手に取り、目を輝かせる。

「おお、これは……9等級!良い純度ですな。これでまた1歩、お楽しみに近づきましたぞ」


ヤスはノートPCを操作しながら、ニヤリと笑う。

「あと25個もあれば完成します。ふふふ、ナオヤ氏が驚く顔が楽しみですぞ」


「そんなにすごいのか?」

「ええ、すごいですとも。

ですが、詳細はまだ秘密ですぞ。さて、それはそうと、今回の新作をお見せしましょう」


ヤスはバッグから小さな盾型のアイテムを取り出した。

飴玉サイズで、見た目は可愛いが、ヤスの顔は真剣そのもの。


「まずはこちら、防御壁エア・ガーディアン

盾型アイテムで、魔石をチャージすると約1メートルのエアバッグが瞬時に展開します。

衝撃を吸収する素材に変化し、咄嗟なことにも対応可能ですぞ」


直哉はそれを指でつつきながら、苦笑した。

「咄嗟の時に使えないとだな」

『私がフォローします』

イチカの念話が、神谷の思考に静かに届いた。


ヤスは今度は小さなサイコロ状のものを机に置いた。

縞模様で、表面が少し凸凹している。


「そしてこちらが、無限拘束ジャック・イン・ザ・トラップメント

サイコロ型の投擲兵器で、投げると網に変わります。

拘束・驚き・演出を兼ね備えたエンタメ系兵器ですぞ」


「……ビックリ箱……?」

「トラップメント、です。ぜひ、いいセリフで発動してほしいですぞ」


「ホルダーを貸してください。ついでに2つに対応したバージョンにアップデートするでござる」

|多機能携行型アイテム収納具ホルダーを渡すと、ヤスはノートPCと|多機能携行型アイテム収納具ホルダーをケーブルで繋ぐ。


画面には魔石の波形データや発動条件の設定項目が並び、ヤスはそれを見ながら気軽にプログラムを書き変えていく。

「ふむふむ……これで同時発動も可能になりますぞ。

しかも、セリフによって演出が変わるようにしておきました。

叫び方次第で、網の展開速度や音響効果が変わるように……むふふふ、これは楽しいですな」


「お前、絶対遊んでるだろ」

「遊びと実用の境界は、発明において曖昧なのですぞ」


* * *


直哉はサイコロ型の網兵器を手に取りながら、第2階層でのモンスターハウスの戦闘を思い出し、得意げに語り始めた。


「そういえば、モンスターハウスでさ。

煙幕で撹乱して、魔石で床に傾斜つけたり、凸凹にしたりしてさ。

アルマジロは明後日の方向にすっ飛んでいくし、モグラは穴に引っ掛かるし、ゴーレムは足場を失って転倒。

その隙にバールで膝を砕いた。あれはもう、俺の脳内シミュレーションが完璧すぎて、敵が俺の脚本通りに動いてたって感じだったぜ」


ヤスは目を丸くする。

「それは……即興で魔石を使ったとは思えないほどの精度ですね。

どうしてそんなに効果的に使えたんですか?」


「火事場の馬鹿力的な?いつもより周りが見えて体が動くというかさ。

あの時の俺、ちょっと“主人公補正”かかってたかもしれん」

「それは……妄想の域ですな」


「いやいや、妄想こそ現実を超える力だって、ヤスが言ってたじゃん」

「それは確かに言いましたが、ここまで堂々と妄想を語るとは……さすがナオヤ氏ですぞ」


直哉はポテトを口に放り込みながら、肩をすくめた。

「まじだって。最後のほうなんかスローモーションで見えたんだぜ!」

「うーん、本当だとすると興味深い現象ですね。

魔石は時間軸にも影響を与える可能性があるかもしれないと。

なかなか面白い仮説です。

では、その現象も次なる発明の参考しましょうぞ。

ちなみにナオヤ氏、どんなものがあると便利ですか?」


「そうだな……魔石で瞬間移動とかできたら便利だよな。

あと、敵の位置がわかるレーダー的なやつとか」

「ふむふむ、空間転移と索敵機能ですか。

空間転移はあれですが、索敵機能はいけそうですな。

魔石の力を利用して音響レーダー的なものを……うむ、理論上は可能ですぞ」


「あと、魔石でぱぱっと傷が治ると、戦闘中に助かる」

「たしかに魔石での治療はもう実用化されていますな。

でもかなりの専門知識がないとできないみたいですが……それをフォローするように設計すればいけるかもしれませんな」


「それだ!戦闘中に使える“お手軽回復”って、絶対需要あるって。

ポケットから取り出して、ポンって使えるやつ。

名前は……“ヒール・スナック”とか?」

「ネーミングセンスが軽すぎますぞ……だが、方向性は悪くないですな。

魔石をお菓子みたいに変化させて食べられるようにすれば、即効性と携帯性を両立できますぞ」


「分身なんてどうだ?」

「分身ですか。

確かに実物は無理でしょうが、映像を投影する感じにすれば…なるほどなるほど。

ホログラム式の幻影を作って、敵を撹乱する……これは“幻影兵器”として開発可能ですな」


「厨二病っぽいな」

「厨二病こそ、発明の源ですぞ」


2人はファミレスの片隅で、魔石を使った妄想を延々と語り合った。

周囲の客がちらちらと視線を送るが、2人は気にする様子もない。


『瞬間移動、索敵、回復に分身。興味深いです。

身体機能の再構築と適応に応用可能な要素として記録します』


イチカは直哉の願いとヤスの発想を融合させるため、こっそりと学習を進めていた。


* * *


話しこみすぎて外はもう夕暮れだ。

直哉は大きく伸びをしながら呟いた。


「次は……もっと深く、だな」

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