第59話 異世界の痕跡
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
ゴーレムの巨腕が振り下ろされ、俺の頭上に影が落ちた。
「……っ!」
避ける暇もなく、拳が迫る。
小型バスほどの大きさの岩の塊が、俺を押し潰そうとしていた。
「やらせるかよッ!」
武虎の声が轟き、視界に飛び込んできたのは赤いオーラを纏った拳だった。
断裂掌――さらに剛を併用した一撃。
そのオーラはいつもの倍以上に輝き、まるで炎の柱のように揺らめいていた。
キュボッ!!
ゴーレムの拳と武虎の断裂掌が正面からぶつかる。
音や衝突した衝撃波すら消し去り、ゴーレムの腕と一緒に周辺の地面も穿られている。
「……ゴーレムの腕が、消えた……!」
俺は息を呑む。
ゴーレムの肘から先――小型バスほどの大きさの腕が、半分ほど消滅していた。
一撃でその半分を消滅させたのだ。
「すげぇ……!」
俺は驚愕し、武虎の背中を見つめた。
* * *
武虎はそのまま前へ踏み込み、断裂掌を連撃で叩き込む。
「コアを砕くぞッ!」
ゴーレムの胸部に亀裂が走り、内部の光がちらりと覗いた。
だがゴーレムもコアが狙われていることに気づき、必死で迎撃を始める。
地面から土を吸収し、瞬時に飛礫へ変換。
マシンガンのように連射し、俺たちへ襲いかかってきた。
ズガガガガガッ!!
飛礫が雨のように降り注ぎ、視界が砂煙で埋まる。
「くそっ、次から次に……!」
武虎は断裂掌で飛礫を迎え撃ち、次々と砕きながら前進する。
掌打が炸裂するたびに、ボッ、ボッ、ボッ、と岩片が消滅する。
俺もバットを振り抜き、蜻蛉飛びで飛礫を避けながら接近する。
だが飛礫の数は尋常ではない。
まるで弾幕のように四方から襲いかかり、空気を切り裂く音が耳を突き刺す。
「多すぎる……!」
俺は必死にバットで弾き返すが、腕が追いつかない。
一瞬の隙を突かれ、肩に石片が食い込む。鋭い痛みが走り、息が詰まる。
その時、脳内にイチカの声が響いた。
(『分体生成を使用し、腕だけ具現化させます』)
次の瞬間、俺の両肩から淡い光が伸び、バールを持った2本の腕が具現化された。
まるで4本腕の戦士になったかのように、俺の手数は倍増する。
「これなら……!」
俺はバットと具現化された腕を同時に振るい、飛礫を次々と弾き返した。
イチカが生成した腕は俺の意識に連動し、まるで自分の四肢のように動く。
1本のバットと2本のバールが交錯し、飛礫の嵐を切り裂いていく。
「お前いつのまに……!」
武虎が驚きの声を上げる。
俺は息を整え、さらに前進した。
* * *
「剛ッ! 砕陣ッ!」
胴体付近まで前進した俺は魔素を瞬間的に重ね、変幻武器をモーニングスターモードへ変形させた。
赤いエネルギーフィールドが展開し、鉄球が形作られていく。
まるで炎の塊が凝縮されて武器になったかのように、赤い光が脈動しながらモーニングスターを形作った。
鉄球が唸りを上げ、ゴーレムの肩へ直撃する。
ズガァァァンッ!!
岩盤が弾け、肩から胸にかけて大きな亀裂が走る。
「よし……!」
俺は息を整え、さらに連撃を叩き込む。
武虎も断裂掌を連続で放ち、ゴーレムの胸部を削り続ける。
2人の攻撃が重なり、コアが露出し始めた。
ゴーレムは最後の抵抗を見せ、背中からも岩の突起を射出。
ミサイルのように飛び、地面を抉る。
「避けろ!」
俺と武虎は同時に跳躍し、蜻蛉飛びで軌道を変えてかわす。
着地と同時に、2人は呼吸を合わせた。
「せぇぇいッ!」
「どりゃあッ!」
バットと鉈が同時にコアへ叩き込まれる。
ガギィィィィンッ!!
亀裂が一気に広がり、コアが砕け散った。
ゴーレムの巨体が震え、崩れ始める。
ドォォォォォンッ!!
瓦礫となって地面に散らばり、静寂が戻った。
* * *
「……倒したな」
俺は肩で息をしながら呟いた。
瓦礫の中から魔石が転がり出る。
だが――。
「普通のサイズ……?」
武虎が眉をひそめる。
超巨大ゴーレムの魔石は、通常種と同じ大きさだった。
「これが噂の……」
「まじで割に合わないな」
2人は口々にぼやいた。
俺たちは瓦礫の中をさらに探した。
崩れた岩をどかし、砂を払い、瓦礫の隙間を覗き込む。
「何か……ないか?」
「あれだけ強かったんだ、他に何か出ててもいいだろ……」
苦労して瓦礫を掘り返すと、比較的状態の良い石碑が姿を現した。
表面はまだはっきりと文字が残っている。
「これ……また文字か」
俺が指でなぞると、イチカの声が響いた。
(『やはりこれはアル・テラスで使われている文字です』)
さらにイチカは続ける。
(『この石碑には、第3層に魔素の研究施設があると記されています。
探索者フォーラムでも報告はなく、初めての発見だと思われます』)
* * *
「研究施設……?」
俺は驚き、武虎へ伝える。
「なぁ、これ見てくれ!
3層に魔素の研究施設があるって書いてある!!」
「まじか!? どれどれ」
武虎が身を乗り出す。
「ほら、ここ」
俺は文字を指差す。
「いや、読めねぇし……お前これ読めんのか?」
「あ、あぁ、あれだよ。魔石に読みたい読みたい!!って思いながら使ってみたら、なんか読めちゃった」
武虎は呆れたように笑いながらも、目を輝かせた。
「面白そうじゃねぇか! 誰も入ったことがないなら、なおさらだ。
んで、どのへんよ?」
「3層の入り口付近に隠し通路があって、そこからいけるみたいだ」
俺は石碑の文字をなぞりながら答えた。
「へー。入口付近で見つかってないなら、すぐに見つかるもんでもないだろ。
とりあえず今日は疲れた。また明日にしようぜ」
武虎が肩を回しながら笑う。
「そうだね。
今日の戦いで魔素がどのくらい上がったか気になるし。今日は帰ろう」
俺も頷き、バットを肩に担いだ。
「よし、温泉でも入ろうぜ!」
武虎が豪快に笑い、拳を突き出す。
俺も拳を合わせ、2人で笑った。
夕暮れの光が瓦礫を照らし、長い影を伸ばしていく。
死闘の疲れを癒すため、俺たちは温泉を目指して帰路に就いた。
次なる目的地は――未知の魔素研究施設だ。




