第58話 超巨大ゴーレム
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私にガソリンをください!!
第3層の岩場を抜け、しばらく進んだ先に広がっていたのは――灰色の世界だった。
崩れた石柱、瓦礫の山、苔むした壁。かつては街だったのか神殿だったのか、今ではただの残骸に過ぎない。
「……遺跡群、か」
俺はバットを肩に担ぎながら呟いた。
武虎も鉈を握り直し、眉をひそめる。
「ボロボロだな。ほとんど痕跡が残ってねぇ」
だが、その中で1つだけ目を引く建物があった。壁面がまだ立ち上がり、そこには何か刻まれている。
「おい、これ……文字か?」
近づいてほこりを払うと、奇妙な記号が並んでいた。漢字でもアルファベットでもない。
「……見たことねぇな」
武虎も首をひねる。
その時、イチカが沈黙を破った。
(『これは……アル・テラスで使われている文字です。
なぜ地球に……』)
(アル・テラスって……イチカがいた異世界だよな? ってことは、この遺跡も異世界のものなのか?)
(『わかりません。ですが、様式からその可能性は高いです。
しかしアル・テラスと地球に交流関係はなかったはず……いえ、あった?
記録が欠落していて不完全です』)
直哉が肩をすくめる。
「まぁわからないんだし、先にいこうぜ」
「だな。俺らは目の前の敵を倒すだけだ」
* * *
遺跡群の中央――そこに鎮座していたのは、異様な巨体だった。
高さ10メートルを超える岩の巨人。
腕は柱のように太く、頭部は城壁の一部を切り取ったかのように無骨。
まるで遺跡そのものが怪物になったかのようだった。
「……でけぇ」
「でけぇな……倒せるのか、あれ」
2人で顔を見合わせる。
「魔素は感じねぇ。ってことは、魔素攻撃に弱い可能性が高い」
「砕陣、か?」
「だな」
武虎が鉈を肩に担ぎながら続ける。
「あれだけでっかいんだ。中途半端な攻撃じゃ意味ないだろう。
がっつり破壊しないとな」
「そうだな、砕陣でどこまで壊せるかわからないけど、やるしかないな!」
「まずは試してみるしかねぇ。俺が正面から叩く。神谷は横から援護しろ」
「わかった」
(イチカ、サポート頼む)
(『はい。魔素の流れを監視し、最適化を補助します』)
* * *
「いくぞ!」
俺と武虎は身体強化を発動し、同時に地面を蹴った。
巨体は緩慢に動き出す。だがその1歩ごとに地面が震え、瓦礫が跳ねる。
「……でけぇ……」
改めてその大きさに慄く。10メートルを超える岩の塊が、ゆっくりと腕を振り上げる姿は圧倒的だった。
「身体強化【砕陣】!!」
赤いオーラがバットに、鉈に集中する。
俺はバットを振り抜き、武虎は鉈を叩き込む。
ガギィィンッ! 岩肌が砕け、破片が飛び散る。
だが――。
「効いてねぇ……!」
「表面が削れただけだ!」
次の瞬間、ゴーレムの巨腕が振り下ろされた。
ドガァァンッ!
地面が抉られ、衝撃波が走る。
俺は横へ転がり、武虎は跳躍してかわす。
かすっただけで体が吹っ飛びそうな威力だった。
すぐさま反撃に転じる。
俺はバットを振り抜き、武虎は鉈を叩き込む。
岩肌に亀裂を加え、破片が飛び散る。
だがゴーレムはひるむことなく、巨体を揺らして腕を振り回す。
「うおっ!」
俺は地面を滑るように回避し、武虎は足場を蹴って空中へ飛び上がる。
振り抜かれた腕が岩壁を粉砕し、破片が雨のように降り注ぐ。
「まだまだだ!」
武虎が蜻蛉飛びを使って上空に躍り出る。
鉈を振り下ろし、肩口へ深く食い込ませたが、ゴーレムが咆哮を上げ、構わず俺に反撃の拳を振り抜く。
俺はその拳を紙一重で避け、バットを横薙ぎに振り抜いた。
ガシャァッ!
岩片が飛び散り、ゴーレムの腕部に大きな亀裂が走る。
だが巨体は止まらない。
次の瞬間、足を振り上げ、地面を蹴り砕いた。
衝撃で足場が崩れ、俺と武虎は同時に跳躍してかわす。
* * *
「くっそ、好きに暴れやがって!」
「魔素の残量は?」
俺が息を整えながら問う。
「3分の1はもう消費してる」
「俺も同じだ。このままじゃ倒す前に魔素が切れる」
武虎が鉈を構え直し、息を整えながら言った。
「砕陣じゃ足りねぇ。剛を併用するぞ」
「剛は消費が激しいだろ」
「インパクトの瞬間だけ剛と砕陣を重ねるんだ。そうすりゃ魔素の消費を抑えつつ威力を上げられる」
「また難しい注文だな!」
俺たちは再び突っ込む。
攻撃を重ね、ゴーレムの体には亀裂や欠けが増えていく。
だが――動作は鈍らず、相変わらず攻撃力は高いままだ。
武虎は身体強化:剛と【砕陣】を瞬間的に重ね、鉈を振り抜いた。
岩の腕が大きく裂け、破片が飛び散る。
続けざまに2撃、3撃。
身体強化:剛と【砕陣】の併用で攻撃は確実に威力を増していた。
「……すげぇ、自然に発動してやがる」
一方の俺は、剛と【砕陣】を重ねようとするがタイミングが合わず、ただの砕陣になってしまう。
「くそ、うまくいかない!」
(『魔素の流れを意識してください。もっと丁寧に出力をコントロールしてください』)
「……わかってるけど、ムズイ!」
イチカの声に集中し、魔素を巡らせる。
瞬間的に体強化:剛を発動、【砕陣】と重ねる。
バットがゴーレムの体に食い込み、轟音とともに胸部の岩が大きく砕けた。
ズガァァァンッ!
亀裂が一気に広がり、肩から腰にかけて岩盤が崩れ落ちる。
破片が雨のように降り注ぎ、巨体が一瞬よろめいた。
「よっしゃあ!」
だがゴーレムはなおも咆哮を上げ、巨腕を振り抜いて反撃してくる。
俺は地面を転がり、武虎は空中で蜻蛉飛びを発動してかわす。
振り下ろされた拳が岩場を粉砕し、砂煙が舞い上がる。
「くそっ、まだ動きが鈍らねぇ!」
武虎が歯を食いしばりながら鉈を構え直す。
俺も息を整え、再びバットを握り直した。
(イチカ、次のタイミング教えてくれ!)
(『了解。次は左肩の関節部、剛と砕陣を重ねれば大きな損傷を与えられます』)
「わかった!」
俺はゴーレムの体を駆け上がり、左肩へ突っ込む。
「剛ッ! 【砕陣】ッ!」
バットを振り抜いた瞬間、赤い魔素が爆ぜる。
ズガァァァンッ!!
肩の岩盤が大きく砕け、腕全体が崩れ落ちる。破片が雨のように降り注ぎ、ゴーレムがよろめいた。
「ナイスだ、神谷!」
武虎が笑い、すかさず背後へ回り込む。
「断裂掌ッ!」
鉈と掌打の連撃が背中を穿ち、岩片が飛び散る。
だが――。
ゴーレムはなおも巨体を揺らし、背中の岩を再構築し始めた。
「再生してやがる……!」
「やっぱり化け物だな……!」
俺たちは息を整え、互いに視線を交わす。
「魔素、残りは?」
「……もう半分切った」
「俺もだ。このままじゃ持たねぇ」
(『敵の再生速度は一定です。攻撃を集中させれば、再生を上回れます』)
「集中攻撃か……!」
バットを握り直す。
「トラ、行くぞ、同時に叩き込む!」
「おう!」
2人は同時に地面を蹴り、巨体へ突っ込んだ。
剛と【砕陣】を重ねた攻撃が、左右から同時に叩き込まれる。
ガギィィィィンッ!!
胸部に大きな亀裂が走り、内部の核がちらりと露出した。
「見えた……!」
俺は息を呑む。
だがその瞬間、ゴーレムの巨腕が振り下ろされ、俺の頭上に影が落ちた――。




