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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第3層“承” 魔素修行

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第57話 岩の軍勢

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

第2層の山道を登り続けるにつれ、空気が急に乾き、岩肌の色が鈍い灰色へと変わっていった。

直哉はその変化を肌で感じ取りながら、バットを握り直す。

武虎も鉈を肩に担ぎ、気を引き締めた表情で前を見据えていた。


山道は細く、左右は切り立った崖。

足元の岩は乾いてひび割れ、踏みしめるたびにザリッと音を立てる。

風が強く、砂が舞い、視界が揺らぐ。


(『第3層に入りました。足場が不安定ですので気をつけてください』)


イチカの念話が静かに響く。

直哉は小さくうなずき、武虎に聞こえないように息を整えた。


「ここからが本番って感じだな」

「まあ、どんなのが出てくるか楽しみだな」

武虎が笑った、その瞬間だった。


ゴゴゴゴゴ……ッ!

山道の上方から巨大な影が転がり落ちてくる。


「おいおい、いきなりかよ!」


岩の塊が高速で転がってきた。

直哉と武虎は左右に飛び退き、岩は2人の間を轟音とともに通過する。


転がり終えた岩が、ギギギ……と音を立てながら二足歩行の形に変形する。

丸い外殻が割れ、内部から人型の岩の巨体が姿を現す。


* * *


「変形かよ……!」

武虎が鉈を構えた瞬間、ゴーレムが地面を踏み砕きながら突進してきた。


直哉はバットを構え、拳を受け止める。

ガギィィンッ!


バットが岩の拳を弾き、火花が散った。

衝撃でゴーレムの腕にひびが走る。


(『右腕の関節部に亀裂あり』)


「おらぁ!」

直哉は踏み込み、ひびの入った関節へバットを叩き込んだ。


バキィッ!

腕が砕け、ゴーレムが体勢を崩す。

そこへ武虎が飛び込み、鉈を振り下ろした。


「どりゃああッ!」


鉈が岩の胴体に深く食い込み、ゴーレムは悲鳴のような音を立てて崩れ落ちた。


武虎は肩で息をしながら言う。

「弱くはないが、そこまででもないな」


直哉もうなずき、イチカの気配に意識を向けた。

(『まだ序盤です。油断しないように』)


* * *


山道を進むと、今度は2体のゴーレムが立ちふさがった。


「2体か……ちょうどいい。

トラ、どっちが先に倒すか勝負な!」

「おぉ、いいぜ。スタート!!」


2人は同時に地面を蹴り、ゴーレムへ向かって駆け出した。


距離が半分ほど縮まったところで――

「トラ、この勝負もらったぜ!

スモーク!!」


直哉が煙幕弾(スモーク・カプセル)を発動する。


ボンッ!!

白い煙が爆ぜ、衝撃波とともに一気に視界を覆った。


「うおっ!? あ、てめーきたねぇぞ!!」

武虎の怒鳴り声が煙の中から響く。


直哉は笑いながら返した。

「ふはははは、勝負の世界は厳しいのだよ、トラ君!」


(『ホルダーのチャージを消費。煙の中に敵の輪郭を浮かび上がらせます』)

直哉の右目が淡く光り、煙の中に“光の線”としてゴーレムの輪郭が浮かび上がる。


「フッ……俺から逃げられると思うなよ……!」

(『厨二病による戦闘力、3%上昇を確認』)

「だからそのバフいらねぇって!」


直哉は光の軌跡を追い、ゴーレムの拳を紙一重で回避。

そのまま膝へバットを叩き込む。


ガキィッ!

ゴーレムがよろめく。


煙で視界ゼロ。

普通なら戦えない状況だ。


だが武虎は――

「おりゃ……ここだ!」


ゴーレムの拳が振り下ろされる直前、

空気の流れが変わる“わずかな圧”を肌で感じ取っていた。


煙の渦の流れ、

足音の反響、

岩が擦れる微かな振動。


それらを一瞬で組み合わせ、

武虎は拳を横へ避け、鉈を振り下ろす。


ガシュッ!

ゴーレムの腕が割れた。


直哉は横目でその動きを見て、思わず息を呑む。

(……え、なんで普通に戦えてんの!?)


自分はイチカのサポートで見えている。

だが武虎は完全に見えていないはずだ。


それなのに、通常時と変わらない精度で攻撃を避け、反撃している。


「くそっ……このままだと負ける!」

直哉はバットを構え直し、光の軌跡を追ってゴーレムの頭部へ一撃。


ゴシャァッ!

ゴーレムが崩れ落ちる。

「よし、倒した!」


すぐに武虎の方へ目を向ける。


* * *


武虎はゴーレムの拳を受け止め、

身体強化のオーラを強めて衝撃を殺す。


「ぬぅっ……!」


ゴーレムが後退しようとした瞬間、

空中で蜻蛉飛び(フリップ・ターン)を発動、三角飛びの要領でゴーレムの後ろに飛び込む。


「おらぁッ!」

鉈がゴーレムの首元を割り、岩片が飛び散る。


「よし、こっちは終わりだ!」

煙が晴れ、2人の視線がぶつかる。


「……倒した?」

「おう、倒した!」


ほぼ同時だった。


* * *


直哉は息を整えながら武虎に近づく。


「トラ……なんであの煙の中で普通に戦えるんだよ!

絶対勝ったと思ったのになー」


武虎は当然のように答えた。


「空気の流れだな」

「空気……?」


「ああ。煙の渦の切れ目、風の向き、足音の反響……

五感を研ぎ澄ませば、相手の位置も動きも全部わかる」


直哉は思わず息を呑む。

「……すげぇ……」

(『せっかく“戦術的スモーク”を披露したのに、上回れましたね……』)

(若干嫌味を感じたんだけど、気のせい……?)

(『……』)


武虎は鼻で笑いながら言った。

「まあ、勝負は引き分けだな」

「……次は負けないからな!」


* * *


戦闘を終え、山道をしばらく進む。


(『右側の岩壁の裏に細い道があります。

そのまま3メートルほど進み、崖を登ってください』)

「トラ、こっち。近道がある」

「お、マジか」


イチカの丁寧な案内が頭の中に響く。

直哉は何事もなかったかのようにうなずき、武虎へ自然に言葉をつないだ。


「ほら、こっちの岩の裏。ちょっと狭いけど、抜けられる」

「ほんとだ……よく見つけたな、こんな道」


「はは……まあ、ね」

直哉は内心でイチカに感謝しながら、あくまで“自分が知っていた”という体で先導していく。


(『次は崖を登ります。

左側の突起を使ってください』)


直哉はその指示を受け取り、自然な動きで足場を示した。

「ここ、登れる。足場がしっかりしてるから」

「お前……よく見つけたな」


崖はほぼ垂直で、ところどころに小さな突起があるだけ。

普通なら絶対に気づかない。


直哉は先に登り始め、指先とつま先だけで岩をつかんで進む。

武虎も続き、2人は慎重に崖を登り切った。


その先には、さらに狭い隙間があった。


「ここ、通るのか?」

「うん。横向きになればギリギリいける」


2人は体を横にし、岩壁に挟まれながら進む。

途中、岩が軋む音がして武虎が青ざめた。


「おい、これ本当に大丈夫か……?」

「大丈夫、大丈夫」

(『左側の岩が崩れやすいので右へ寄ってください』)


直哉はその指示に従い、武虎にも伝える。

「トラ、右寄りな。そっち崩れそうだ」

「おうよ」


隙間を抜けると、広い岩場へ出た。


* * *


岩場の中央に、5体のゴーレムが立ちはだかっていた。

そのうち3体が前へ進み出ると、互いの腕を絡め、岩が砕ける音を響かせながら融合を始める。


ゴゴゴゴゴ……ッ!


3体の岩塊がねじれ、押し潰され、再構築され――

やがて1体の巨大な合体ゴーレムが姿を現した。

背中にはドリル状の突起が複数生え、腕は太く、脚は柱のように太い。


「うお……かっこいい……!」


直哉の目が輝く。

武虎は呆れたように笑った。

「お前、テンション上がってんじゃねぇよ!」


通常型の2体は、左右から直哉たちへ迫ってくる。


直哉はバットを握り直し、低く呟いた。

「縛っ!」

ホルダーから2つの無限拘束ジャック・イン・ザ・トラップメントを投げる。

鋼鉄の網が飛び出すように広がり、通常型2体の脚へ絡みつく。


ガシャァンッ!

鋼鉄の網が締まり、2体の動きが一気に鈍る。

ゴーレムたちは腕を振り回して抵抗するが、網はびくともしない。


「よし、動き止まった!」


直哉が武虎へ目配せする。

武虎も笑い、うなずき返した。

「先にこいつら片付けるぞ!」


2人は同時に駆け出した――その瞬間。


ズドォンッ!!

合体ゴーレムが巨腕を振り下ろし、地面を砕いて妨害してきた。

岩片が弾け飛び、進路を塞ぐように転がる。


「っと……!」

直哉は岩片の隙間を滑り込むように抜け、武虎は跳躍して岩を踏み台にし、かわす。


拘束された通常型2体は、網に絡まれながらも腕を振り回して抵抗していた。


「トラ、右のやつは任せた!」

「おうよ!」


2人は左右に分かれ、同時に踏み込む。

直哉はバットを肩に担ぎ、武虎は鉈を逆手に構え――


「行くぞッ!」

「おらぁッ!」

2人の攻撃が、拘束されたゴーレムの左右から同時に叩き込まれた。


バキィィンッ!!

バットと鉈がそれぞれに命中し、2体の通常型は左右へ弾け飛ぶように砕け散った。


残るは巨大な合体ゴーレム1体。


背中のドリル状突起が震え始める。

次の瞬間、突起が轟音とともに射出された。


ズバァァァンッ!!

岩がミサイルのように一直線に飛び、地面を抉りながら迫る。


「避けろ、トラ!」

「言われなくても!」


直哉は横へ転がり、武虎は地面を蹴って跳躍し、ミサイルを回避する。


着地した武虎が叫ぶ。

「神谷! 背中のあれ、撃った後は隙ができる!」

「了解!」


合体型は再装填のように背中を震わせている。

その一瞬の隙を逃さず、2人は同時に駆け出した。


「せぇぇいッ!」

直哉は正面から踏み込み、バットをフルスイング。


「どりゃああッ!」

武虎は側面から回り込み、鉈を振り下ろす。

バットと鉈が同時に命中し、合体ゴーレムの胸部に大きな亀裂が走った。


巨体が揺れ、岩片がパラパラと落ちる。

だが、合体型はまだ倒れない。


「まだまだッ!」


直哉は間髪入れず、2撃目を叩き込む。

バットが亀裂へめり込み、岩が砕け散る。


武虎も続けざまに鉈を振り抜いた。

「おらぁッ!」


鉈が肩口を裂き、腕の付け根まで深く食い込む。


合体ゴーレムが咆哮を上げた。

グォォォォォッ!!


背中のドリル突起が震え、1本が射出される。


「危ねぇ!」

直哉は地面を転がって回避し、

武虎は跳躍してミサイルをかわす。


着地した武虎へ、合体型の巨腕が振り下ろされた。

ドガァァンッ!!


「トラッ!」

「効かねぇよッ!」


武虎は身体強化のオーラを爆発させ、腕を受け止めながら鉈を逆手に持ち替え、そのまま肘の関節へ叩き込む。


ガキィィンッ!!

岩の腕に深い亀裂が走る。


直哉も背後へ回り込み、バットを構えて低く息を吸った。

「いっけぇぇぇッ!!」

3撃目のフルスイング。

バットが背中の装甲を砕き、内部の核へ届くほど深くめり込む。


合体ゴーレムがよろめく。


武虎が叫ぶ。

「直哉、合わせるぞ!」

「おうッ!」


2人は左右から同時に踏み込み、呼吸を合わせて武器を振り上げた。


「「せぇぇいッ!!」」

バットと鉈が、合体ゴーレムの中心核へ同時に叩き込まれる。


ガギィィィィンッ!!

亀裂が一気に全身へ走り――


ゴゴゴ……ッ!

巨体が震え、崩れ始め――


ドォォォォォンッ!!

合体ゴーレムは粉々に砕け散った。

砂煙が舞い、岩片が雨のように降り注ぐ。


静寂が戻る。


直哉は肩で息をしながら笑った。

「……よっしゃ!」


武虎も鉈を肩に担ぎ、満足げに頷く。

「なかなかだったぜ」


(『超巨大ゴーレムのエリアはすぐ先です』)

イチカの念話が静かに響く。


「マップみると、そろそろ超巨大ゴーレムの場所だな」

「よっしゃ、気合いれるぜ!」


直哉は武虎と視線を交わし、歩みを進めた。

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