第47話 極限の包囲網
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
「……くそー、なんで全員ここにいるんだよ!」
視線を四方に油断なく走らせながら、声を荒げる。
『理由は不明ですが、何よりまずはここを切り抜けましょう。
相手はまだ油断している様子、突破口を見つけましょう』
「突破口って言っ……」
ヒュンッ!
考える間を与えないかのように、空気を裂く鋭い音が耳を貫いた。
反射的に身を捻ると、白光の矢が地面に突き刺さり、石片が弾ける。
「っぶなっ!」
それを合図にするように、《雷環》のモルバグが構え、《双牙兄弟》グリグリとズクズクが距離を詰めてくる。
「くそー、なるようになれ!」
半ばやけくそに叫び、ホルダーから煙幕弾を取り出す。
――その動きに合わせるように、イチカの声が響いた。
『閃光弾射出!』
次の瞬間、イチカがホルダーを操作し、閃光弾を射出。
弾丸は空を裂き、塔の上空で炸裂した。
バァンッ!
白光が視界を焼き、草原全体が昼間のように明るくなる。
一瞬4体の目線が上を向く。
まるでその隙を狙ったかのように、直哉が使った煙幕弾が辺りに煙を充満させる。
『音響デコイ展開』
イチカの声と同時に、ホルダーから小型装置が四方へ飛び散る。
煙の中でネズミの鳴き声やガサガサという音が鳴る。
『今のうちに少しでも移動してください』
「了解!」
直哉は身を低くし、煙の中を駆け抜ける。
足音を殺しながら、イチカの指示に従って草むらへ滑り込む。
* * *
『残り時間は約7秒。煙が晴れれば、再び包囲されます』
「どうする、双子からか?」
『双子は近接能力が高く、かかりきりになる可能性が高いです。
この状況では危険です』
「じゃあどうすんだよ!」
『モルバグを狙います。空中なら双子も近寄れません』
「なるほど……蜻蛉飛びで一気に距離詰めるってわけか」
『はい。煙が晴れる前に接敵してください』
「わかった!」
返事を言い終わる前に、直哉は地面を蹴り、蜻蛉飛びを発動。
身体が宙を舞い、モルバグ目掛けて一直線に突撃する。
雷球がバリバリと音を立てる中、直哉はバットを構えた。
だが――
『グリグリから魔素反応、警戒を!』
イチカの声が響いた瞬間、視界の端でグリグリが笑った。
「ミロ……ミロ……!(俺を見ろ)」
特殊能力が発動し、直哉の意識が強制的に引き寄せられる。
身体が勝手に軌道を変え、グリグリへ一直線に突っ込んでいく。
「なっ……!?」
直哉は必死に抵抗するが、能力の効果は絶大。
バットを振り下ろし、グリグリの刃と激突する。
火花が散り、衝撃が走る。
「くっそ、目が離せらんねぇ!」
直哉は歯を食いしばり、バットを握り直す。
「こうなったら――インパクト!!」
ホルダーが反応し、イチカの声が脳内に響く。
『変幻武器、モーニングスター展開』
バットにエネルギーフィールドで形成された、棘を纏った球体が姿を現す。
「これで……どうだっ!」
直哉は全力で踏み込み、モーニングスターを振り抜いた。
ゴッ!
衝撃が地面を震わせ、草が吹き飛ぶ。
だが――グリグリは怯まない。
グリグリが二本のダガーを交差させ、直哉の一撃を受け止める。
火花が散り、金属音が耳を裂く。
「ちっ……!」
直哉は間髪容れず、2撃目、3撃目を叩き込む。
モーニングスターが唸りを上げ、空気を裂く。
しかし――グリグリの防御は鉄壁だった。
ダガーを巧みに角度を変え、衝撃を逸らし、回避と防御を織り交ぜる。
「くそっ、全然当たんねえ!」
直哉の額に汗が滲み、呼吸が荒くなる。
それでも――止まれない。
「決着つけるまで、振り続けるしかねえだろ!」
『直哉、落ち着いて。
モルバグを狙ってください』
「そうは言っても、こいつから意識が外れ……
……外れた!」
効果が切れた瞬間、直哉は後退する。
だが――煙も完全に晴れてしまった。
* * *
「やっべ……!」
視界が開けた瞬間、ズゴルの弓が白光を放ち、散弾矢が空を裂く。
同時に、モルバグの雷球が3つ、追尾型に変化して飛来する。
『時穿つ瞳』
世界がスローモーションに変わる。
矢の軌道が線となり、雷球の放電がゆっくりとうごめく。
直哉は地面を蹴り、空中で蜻蛉飛びを使い、何度か軌道を変えながら矢を紙一重でかわす。
雷球も回避――だが、一つが背後から追尾してくる。
「追尾かよっ!」
直哉は振り返り、モーニングスターを全力で振り抜く。
バチンッ!
雷球が砕け散るが、電撃が腕を走り、皮膚を焼くような痛みが走った。
「っぐ……!」
両腕に浅くないダメージ。
息が荒くなる。
その瞬間、再びグリグリが叫ぶ。
「ミロ……ミロ……!(俺を見ろ)」
直哉の視線が引き寄せられた瞬間、死角からズクズクが毒刃を突き出す。
「やべっ……!」
これは……かわせない。
『身体強化:【謀陣】』
イチカの声と同時に頭に紫色のオーラが集中し、意識が冴え渡る。
直哉は刃を紙一重で躱し、地面を転がる。
「助かった……!」
『まだ終わっていません。次の攻撃に備えてください』
* * *
矢が再び飛来し、雷球が唸りを上げる。
ズゴルの弓から放たれる白光の矢は、一本一本が殺意を帯びていた。
空気を裂く音が耳を刺し、直哉は反射的に防御壁を展開。
青い半透明の防御壁が瞬時に立ち上がり、矢を包み込むように受け止める。
だが、衝撃で防御壁が波打ち、魔素の膜が軋む音が響いた。
「くそっ、威力が上がってる……!」
『ズゴルが本気を出しました。矢の魔素濃度が先ほどより20%増加しています』
「分析してる暇があったら、なんとかしてくれ!」
直哉は地面を蹴り、蜻蛉飛びで宙を舞う。
視界が反転し、草原が逆さに流れる。
その瞬間、背後で雷鳴が轟き、モルバグの雷球が追尾軌道を描いて迫ってきた。
「来るなよ!」
直哉はホルダーを操作し、無限拘束を射出。
鋼鉄製のワイヤーが雷球に絡みつき、一瞬動きを止める。
だが――雷球はワイヤーを焼き切り、再び唸りを上げて迫る。
『右へ3歩、次は低く!』
イチカの声が脳内に響く。
直哉は指示通りに身を沈め、草を薙ぎながら滑り込む。
背後で雷球が弾け、熱風が背中を押した。
「っぐ……!」
熱で皮膚が焼ける感覚に、直哉は歯を食いしばる。
腕には先ほどの電撃の痛みが残り、握力がじりじりと奪われていく。
それでも――止まれない。
『直哉、再チャージが追いついていません。
チャージ残量はあと7回分です。無駄撃ちは避けてください』
「わかってる……けど、隙がない!」
双子が再び距離を詰めてくる。
ズクズクのダガーが閃き、グリグリが盾のようにダガーを構える。
2体の動きはまるで舞踏のように滑らかで、攻撃と防御が一体化していた。
直哉がモーニングスターを振り抜くと、グリグリが刃で受け止め、ズクズクが横から攻撃を仕掛ける。
火花が散り、金属音が耳を裂く。
「だーーーっ!」
直哉の呼吸が荒くなる。
『直哉、冷静に。隙は必ず生まれます』
「そんな簡単に言うなよ!」
直哉は叫びながら、再び踏み込む。
だが、その瞬間――視界の端でズゴルの弓が白光を放った。
「んなくそっ!」
直哉は反射的に蜻蛉飛びで宙を舞い、矢を紙一重で躱す。
だが、背後から雷球が追尾してくる。
「また追尾かよっ!」
直哉は振り返り、防御壁を投げる。
バチィンッ!
エアバックが雷球を受け止めるが、同時に砕けてしまう。
「くそっ、ガーディアンが……!」
しかし間髪容れず、矢が再び飛来し、雷球が唸りを上げる。
直哉はバットを振り矢を防ぎ、蜻蛉飛びで宙を舞う。
時には雷球に無限拘束をぶつけて攻撃を防ぐ。
そうやって発明品の数も減っていき、魔石もどんどん減っていく。
だが、包囲は崩れない。
雷光が草原を裂き、毒刃が閃き、矢が空を支配する。
直哉は歯を食いしばり、バットを握り直した。




