第36話 砦攻略戦 ― 城壁
是非、ブックマークか評価を。
私にガソリンをください!!
朝の空気は澄み切っていて、肌を撫でる冷気が妙に心を引き締める。
さて、改めて現状のステータスをまとめてみよう。
レベル:0→7→11
体力:10→26→37(44)
筋力: 8→27→38(46)
敏捷:10→31→45(54)
器用: 9→20→30(36)
知力: 7→18→28(34)
特殊能力:現象伝導、時穿つ瞳
内在魔素:0→79→175
内在魔素:72
一番左がレベル0の時。真ん中が第3層に初めて入った時のだ。
最期のが現在の数値で、括弧が身体強化を使った数値。
こうやってみると、第3層に入ってからステータスの伸びが大きくなってるな。
イチカの身体最適化の効果なんだろうか。
気がついたら車ぐらいの速度で走れるようになってるし、いろいろ人間を辞めている気がする。
とはいえ、これでも今回のレイドの中だと、真ん中ぐらいの実力らしい。
第3層で活動している探索者の上位はステータスはいくつぐらいなんだろう。
第3層の猛者たちと肩を並べるにはまだ遠いが、俺には俺の武器がある。
時穿つ瞳による時間認識の加速、敏捷特化の身体強化、そして――ヤスが作った発明品の数々。
(『心拍数が通常値より18%上昇しています。興奮と推定します』)
(そりゃそうだろ……1,000体って、もう戦争だよ)
(『呼吸を整えてください。過度な興奮は判断力を鈍らせます』)
(了解……でも、ワクワクしてるんだよな)
砦までの距離は――1.7km。
普通に走れば約2分で到達可能だ。
* * *
砦前の広場に、52名の探索者が整列していた。
第1部隊は特に重装備が目立つ。
その中でも異彩を放つのは――
軽自動車くらいある鉄板を2枚、両腕につけた男だ。
縦3メートル、横1.5メートルの巨盾が朝日に鈍く光り、まるで移動する城壁だ。
矢が弾け、火球が砕けても、彼は微動だにしないだろう。
(……あれ盾っていうより、もう壁だろ)
(『盾から魔石反応が伺えます。おそらく重量軽減の効果があると推察します。』)
(それにしてもだよ)
職員が前に出て、声を張り上げる。
「第1部隊に、魔石入りの装置を渡します!」
銀色の筒状の装置が手渡される。
「この装置を使うと、城壁に向かって**スロープが生成**されます!」
「バリスタの射撃や魔法は――各自で回避してください!」
その言葉に、全員が無言で頷く。
(……すげぇな。“各自で避けろ”って、当たり前みたいに受け入れるのかよ)
視線を横にずらすと、篠崎と火野がいた。
2人とも、戦闘前の興奮を隠しきれず、魔素を練り上げている。
篠崎の周囲には圧が渦巻き、火野の足元には風が集まっていた。
(……やっぱり、次元が違うな)
* * *
「作戦開始! 第1部隊、前へ!」
リーダーの号令と同時に、空気が震えた。
ドンッ! ドドドッ!
重装備のはずなのに、動きは速い。
第1部隊は時速40kmで城壁へ突進。
盾を2枚構えた男が最前列で進む姿はまるで戦車だ。
第2部隊、第3部隊、そして俺たち魔素能力者も続く。
砦が視界に入るまで、わずか数分。
石造りの城壁が朝日に照らされ、バリスタの影が不気味に並んでいる。
* * *
ヒュウウウウッ! ドガァン! ズガァァン!
矢が空を裂き、火球が爆ぜ、バリスタの矢が地面を抉る。
第1部隊が攻撃を集め、盾役が2枚の鉄板で矢を弾き、火球を受け止める。
衝撃で地面が震えるが、彼は微動だにしない。
(……人間じゃねぇだろ、あれ)
「スロープ、展開!」
銀色の装置が光を放ち、城壁に向かって斜面が生成される。
だが――
「さぁさぁさぁ、いくぜぇぇぇー!」
篠崎が吠え、魔素を爆発させて跳躍。
ズガンッ!
5メートルを超えるジャンプで城壁を飛び越える。
「まったく、世話が焼けるわね」
最上が呆れ顔で笑い、壁を駆け上がる。
その速度は風そのものだった。
(……化け物かよ)
俺たちはスロープを使う予定だったが、その瞬間――
「――ッ!」
視界に3本のバリスタ矢が迫る。
(やばっ!)
「蜻蛉飛び!」
足元に淡い光が浮かび、俺は空中へ跳躍。
――ギュンッ!
2段目の足場を踏み、軌道を変える。
3本の矢が地面を抉り、土煙が爆ぜる。
「もう1回!」
3度、4度と蜻蛉飛びを繰り返し、城壁より高い位置まで跳躍。
視界が開け、敵の隊列が見えた。
(『直哉、右側の隊列に隙があります。そこに飛び込んでください』)
「了解!」
俺はさらに蜻蛉飛びを繰り出し、城壁に向って突撃する。
「クリムゾンっ!!」
イチカが俺の掛け声に反応し、変幻武器を起動。グレートソードモードにする。
バットにグレートソード状のエネルギーフィールドが形成され、巨大な剣が腕に収まる。
「うおおおお!」
空中で体をひねり、隊列の裂け目に突入。
ズガァァン!
薙ぎ払う一撃で、ゴブリン3体が吹き飛ぶ。
その瞬間、背後から矢が飛ぶ。
シュバッ! シュババッ!
松岡さんが同時に4本の矢を放ち、3体のゴブリンに命中。
(……やっぱりすげぇ!)
「ナイス!」
俺が叫ぶと、佐伯が笑う。
「お前こそ派手にやるじゃねぇか!」
「死なない程度にな!」
軽口を叩きながら、3人が俺の背後に布陣。
水城が前に出て、剣が閃く。
だが、周囲は敵だらけ。
ゴブリンの咆哮、矢の雨、火球の爆発――
それでも、笑い合う声が戦場に響く。
高揚感が胸を満たす。
(……これだ。これが戦闘だ!)
(『魔素残量87%。戦闘開始』)
「よし、ここからだ――!」
――砦攻略戦、開幕。




