表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第3層“起” 魔素能力者

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/42

第34話 決戦前夜 ― 52名の集結①

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

ダンジョン課の大会議室――普段は事務的な打ち合わせに使われる空間が、今日は異様な熱気に包まれていた。

長机が整然と並び、壁際には大型スクリーン。蛍光灯の白い光が、探索者たちの顔に影を落とす。

そこに集まったのは探索者49名、そして魔素能力者2名と俺を加えた計52名だ。


今日は誰も武具を身につけていない。

代わりに、ラフな服装やジャケット姿――だが、その眼光は鋭く、歴戦の猛者というオーラが隠しきれない。

革靴の音、椅子の軋み、低く交わされる声。

緊張と高揚が入り混じり、空気が重くなる。


「……すげぇな、これ」


思わず口から漏れた言葉は、誰に向けたものでもなかった。

俺――神谷直哉は、群れの端で立ち尽くしながら、目の前の光景に圧倒されていた。


(52人中、俺の実力は30位前後……身体強化を使えば20位には食い込めるか?)


(『推定順位、32位。身体強化を使用した場合、21位まで上昇します。

なお、現状の筋力では盾役との直接衝突は非推奨です』)

(……数字で言われると余計にプレッシャーだな)


(『プレッシャーは集中力を阻害します。呼吸を整え、視線を一点に固定してください』)

(了解)


胸の奥がじわじわと重くなる。

この場にいる全員が、俺より強いんじゃないか――そんな錯覚が、喉を締めつける。


* * *


視線を巡らせながら、俺はふと考えた。


(……こういう場面、トラなら絶対テンション上がってるよな)


あの頼れるバカ――藤堂武虎。

何かと「実戦こそ修行!」とか言って、こういう大規模イベントには率先して参加しそうなタイプだ。

だが、今回はいない。


(『藤堂様は、大学の試験期間中につき不参加と記録されています』)

(……試験かよ。あんまりトラが勉強してるのが浮かばないな)


(『成績は良いようです』)

(えっ、なんで知ってるの?)


(『調査いたしました』)

(怖っ!)


* * *


職員が声を張り上げる。


「魔素能力者の皆さん、こちらのテーブルへお願いします!」


視線を向けると、すでに2人の男女が席についていた。

どちらもラフな服装だが、纏う雰囲気は普通じゃない――圧がある。


1人目は、長身で切れ長の目をした男。

黒のタートルネックにジャケットを羽織り、姿勢がやけに整っている。

彼は俺を見るなり、軽く顎を引いた。


「篠崎だ。戦車ぐらいならなんとかできる自信がある。よろしくな」


冗談めかした口調だが、声に妙な説得力がある。

俺は思わず笑ってしまいそうになりながら、慌てて頭を下げる。


「神谷直哉です。よろしくお願いします!」


すかさず、隣の女性が肩をすくめて笑った。


「最上よ。

篠崎さんのようなパワータイプじゃなく、私はスピード重視ね。

遠距離攻撃もそれなりにできるわ。よろしくね」


彼女は栗色の髪を後ろでまとめ、白シャツにカーディガンというシンプルな服装。

だが、その目は鋭く、笑みの奥に何かを隠している。


「ちなみに、篠崎さんが戦車を止めるって言ったら――本当にできるから、あんまり疑わない方がいいわよ?」


「おいおい、ハードル上げるなよ」

篠崎が苦笑する。


(……冗談なのか、本気なのか、わからないのが怖いんだけど)


胸の奥で、緊張と期待がせめぎ合う。


* * *


スクリーンがゆっくりと切り替わり、砦の全景が映し出された瞬間、会議室の空気が一段と張り詰めた。

白い蛍光灯の光が、砦の立体図を青白く照らし、壁に影を落とす。

プロジェクターの低い駆動音が、静寂の中で妙に耳に残る。

紙の資料をめくる音、ペン先がノートを走る微かな擦過音――それらが、緊張のリズムを刻んでいた。


「今回のターゲットは、砦に潜むゴブリン約1,000匹。

弓兵、マジシャン、ホブゴブリン多数。そして――主ゴブリン4体を確認済みです」


職員の声が、冷たい空気を震わせる。

その言葉に、ざわめきが広がった。

椅子の背もたれが軋む音、誰かが小さく息を呑む音が、妙に生々しい。


主ゴブリン――その名だけで、場の空気が重くなる。

俺の背筋にも冷たいものが走った。


(1,000匹……? 数字で聞くと、胃が痛くなるな)


(『正確には1,027体と推定されます。弓兵比率は約3割、魔法使い型は1割未満』)

(イチカ、そういう細かい数字、今いらない!)


スクリーンがズームし、砦の外壁、見張り台、内部構造が次々と表示される。

石造りの壁は厚く、通路は狭い。

その奥に――魔石結晶が眠っている。


「目標は敵の殲滅、および砦最深部に保管されている魔石結晶の入手。

報酬は人数割ですが、主ゴブリンを討伐したPTには特別報酬があります」


俺は深呼吸をした。

胸の奥で、不安と期待が渦を巻く。

この場にいる全員が、明日、命を賭ける――いや、死なない世界だとしても、痛みも疲労も本物だ。

甘く見れば、即リタイア。

その現実が、胃の奥を冷たく締めつける。


(『直哉、心拍数が上昇しています。深呼吸を3回、推奨します』)

(了解……でも、イチカ、俺……)


言葉にならない感情が喉に詰まる。

怖い。

でも、ワクワクしている自分もいる。

この52人と肩を並べて戦う――その事実が、妙に誇らしい。


職員がタブレットを操作し、声を張り上げる。


「ここからが本題です。各部隊の進行ルート、役割分担、そして緊急時の退避経路について――詳細を説明します」

こうして、決戦前夜の作戦会議が本格的に始まった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ