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現代ダンジョン奮闘記  作者: だっち
第3層“起” 魔素能力者

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35/40

第33話 うかれポンチの蜻蛉飛び《フリップ・ターン》

是非、ブックマークか評価を。

私にガソリンをください!!

放課後、校舎を出た直哉は、冷たい風に頬を撫でられながらスマホを取り出した。

画面に表示された通知は一件。送り主は「ヤス」。


『ナオヤ氏、例のアレをお渡しします。ファミレス集合』

短い文面に、妙な緊張感と期待が混じる。

ヤスからの呼び出しは、たいてい何か面白いことが起きる前触れだ。


ファミレスに着くと、奥の席でヤスが手を振った。

黒髪の長髪を軽く束ね、制服の上にカーディガンを羽織っている。

進学校帰りの姿は、どこか知的な雰囲気を漂わせていた。


「おお、ナオヤ氏! 来てくれて感謝ですぞ」

「今日は学校帰りか、急に呼び出すから何かと思ったよ」


ヤスは笑みを浮かべ、ドリンクバーのグラスを指で回す。

その仕草が妙に余裕を感じさせる。

「むふふふふ」


直哉はその笑いにピンときて、身を乗り出した。

「あっ、まさか無限収納か!?」


ヤスは肩をすくめ、残念そうに首を振る。

「残念ながらそれはまだです。いいところまで来ているのですが、空間の拡張が実現できておらず……」

「そうなのか。まぁ急いでるわけじゃないからヤスに任せるよ」

「任されましたぞ」

ヤスは軽く笑い、グラスを置いた。


* * *


次の瞬間、ヤスは急に声のトーンを上げ、目を輝かせた。

「それより! これを見てくだされ。」


カバンから取り出したのは、一見普通のインナーソール。

だが、表面には淡い光沢があり、縁には魔石を埋め込んだような微細なラインが走っている。


直哉は首をかしげる。

「……靴の中敷き?」


ヤスは得意げに笑みを浮かべ、指先でそれを軽く弾いた。

「侮るなかれ! これは新しい発明品、その名も蜻蛉飛び(フリップ・ターン)でござる」

「フリップ・ターン……何ができるんだ?」


ヤスは身を乗り出し、声を潜めるように説明を始めた。

「靴に仕込んでおくと、好きな時に足元に一瞬だけ“足場フィールド”を生成できるのです。

空中でジャンプしたり、軌道を変えたりすることが可能になるのですぞ」


直哉は思わず息を呑む。

「それ、めちゃくちゃ便利じゃん……!」


ヤスは指を立て、さらに続ける。

「ナオヤ氏がボス・ゴブリン戦で防御壁エア・ガーディアンを足場代わりに使ったと聞いて、ひらめいたのです。

あれをもっと簡単に、もっと軽快にと思いましてな」


直哉の脳裏に、あの死闘がよみがえる。

ゴブリンの猛攻を避けるため、空中で防御壁エア・ガーディアンを踏み台にした瞬間。

イチカのサポートあってこそだが、あの瞬間、テンションが爆上がりしていた。


「……ヤス、これ本当にすげーよ!」

「ふふ、そう言ってもらえると嬉しいですな。ではさっそくホルダーとリンクさせてしまいましょう」

ヤスはいつものようにPCを操作し、あっという間にホルダーをバージョンアップさせてしまった。


* * *


ヤスはグラスを置き、ふと問いかけた。

「ところで、第3層はどうですかな? 最近は特殊個体も増えていると聞きますが」


直哉は少し考え、笑みを浮かべる。

「順調だよ。敵のパターンも読めてきたし、俺の動きもかなりよくなった」


言葉を選びながら、直哉はここ数日の戦闘を思い返す。

第3層に入った当初、視界に広がる草原と廃墟の入り混じったフィールドに圧倒された。

第2層までとは違い、敵は速く、攻撃も重い。


しかし身体強化を駆使し、時には時穿つ瞳(クロノス・ハック)を併用することで、戦闘は別次元に変わった。


「ゾーンも安定して発動できるし、反応速度も上がってる。

前はギリギリで避けてた攻撃も、今は余裕を持って捌ける」

直哉は指先を軽く握り、感覚を確かめるように言葉を続ける。


「身体能力もめっちゃくちゃ上がってさ。

3層に入りたての時と比べたら1.5倍ぐらいになってるじゃないかな」

「まぁ何より魔素だよな。

これを使いだしてからは、もうアニメみたいなもんよ」


ヤスは目を細め、満足そうに頷く。

「ほう……成長を実感しているわけですな。

私も一度ナオヤ氏の戦いを見たほうがいいかもしれません。

魔素の話しは時々耳にしますが、何せ周りに使える人はナオヤ氏以外いませんからな。」


「俺は実験台か!?」

「むふふふふ、いやしかし、そうなら、第4層も視野に入ってきますな」

「いや、それがそうでもないんだ。

もっと強くならないと通じないだろうな。今のままじゃ、まだ足りない」


ヤスは顎に手を当て、真剣な表情になる。

「なるほど、私には想像できないのですが、そうとう高いレベルが要求されるようですね」

「あぁ。だからさ、まだ未完成だけど別の必殺技も試してるんだ。完成したら、ヤスにも見せたい」

「ほう……必殺技、胸が高鳴りますな」


* * *


談笑の中で、直哉はふと思い出したことを口にした。

「そういえば、バットを買い替えてから壊れなくなったんだよな」


ヤスは興味深そうに身を乗り出す。

「探索者の中には、魔石で自分の武器を強化している人がいるらしいですね。

ナオヤ氏はやっていないのですか?」


「いや、心当たりはないな……」

その瞬間、頭の奥に柔らかな声が響く。

(『直哉、敵を倒した際に漏れ出た魔素を、私がバットに還元し強化ています』)

イチカの念話だ。直哉は内心で驚愕しながらも、表情を崩さず答える。


「……もしかしたら、無意識にやってたのかも」

ヤスは納得したように頷き、話題は他愛ない雑談へと移っていった。


* * *


別れ際、ヤスから《蜻蛉飛び》を受け取った直哉は、夜道を歩きながら人目を避けて試すことにした。

街灯がぽつぽつと並ぶ暗い道。

冷たい風が頬を撫で、遠くで車のエンジン音が低く響く。

直哉は周囲を見渡し、人気のない路地を選んで足を止めた。


「……よし、ここなら誰にも見られない」

靴に仕込んだインナーソールを意識すると、足元に淡い光の足場が一瞬だけ浮かび上がる。

「……おお、本当に出た!」

光は半透明で、まるで水面に映る月のように揺らめいている。

直哉は軽く跳躍し、空中で再び足場を踏む。

軌道が変わり、まるでトンボのように方向転換できる。


「すげぇ……これ、戦闘で使えたらマジで別次元だ」

直哉はもう1度試す。

今度は2段ジャンプから急旋回。

足場が現れるタイミングは一瞬だが、踏み込んだ瞬間、体が軽く浮き上がる感覚がある。


『直哉、魔素の流れを安定させれば、連続使用も可能です』

イチカの声が頭に響く。

「連続って……何回までいける?」

『現状では3回が限界です。ですが慣れれば何度でも使えるようになるでしょう』


「おぉ、それはやばいな!」

『ただし、連続使用時は足場の生成時間が短縮されます。踏み損ねると落下しますので注意を』

「了解。……でも、これ、攻撃にも応用できそうだな」


直哉はバットを肩に担ぎ、試しに空中で振り抜く。

足場を踏んだ瞬間、体が加速し、バットの軌道が鋭くなる。

「……やばい、これ本当に必殺技に組み込める」


夜空を見上げると、雲間から覗く月が淡く光っていた。

直哉は深呼吸し、もう1度跳躍する。

足場を踏むたび、体が空を切り裂くように動く。


「イチカ、さっきの話だけど……バットの強化って、どれくらい進んでるんだ?」

『現在、強度は初期の約4.2倍。攻撃時の衝撃吸収も最適化済みです』


「……4.2倍って、思った以上に硬くなってた……

おまえって、そういうとこ凄いよな」

『ありがとうございます』


足場の光が消え、静かな夜道に戻る。

次は砦攻略のレイドイベントだ。

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