表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水槽少女は立ち上がる  作者: きさきなのは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/7

朝。

薄いカーテン越しに、淡い朝の光が差し込んでいた。

フローレスは、いつものようにぼんやりと目を開ける。

体を起こそうとした瞬間――


(……ん?)


視界が、いつもより高かった。

世界が、ほんの少しだけ遠くに感じる。

足を床につけると、いつもより「トン」と重心が安定する。


違和感は、はっきりしていた。

フローレスはベッド脇の姿見の前に立つ。


「……。」


髪は同じ白。瞳も同じ灰青。


けれど、頬と首がすこしだけ細くなって、

指先は少し長くなり、膝下も伸びていた。


身長は、おおよそ5センチ分。


(……おおきく……なってる。)


ゆっくり瞬きをして、胸に手を当てる。

知らないはずの言葉が、ふっと浮かぶ。


(――成長、した。)


理由はわからない。

でも、昨日のあの瘴気に触れたときの、身体の奥が引かれるような感覚が

まだどこかに残っていた。







階下に降りると――

ミア&カイ&ガルドが、完全に二日酔いでテーブルに沈んでいた。


「うぅ……あたま……割れる……」


「わたし……もう酒やめる……」


「……水……」


ライオネルは一人だけキラッキラの笑顔だった。


「おはよう! みんな爽やかな朝だなっ!!!」


「うるさぁい……」


「静かにして……」


「殺すぞ……」


三者三様に低い声。


フローレスは、とてとて歩いて、彼らの隣に座る。


ミアが顔を上げ――

次の瞬間、目がまんまるになる。


「……え?」


カイも、ガルドも、ライオネルも、一斉にフローレスを見た。


「…………」

「…………」

「…………」


そして――


「「「「おっきくなってるーーーー!!?!」」」」


フローレスは胸を張って、えっへんと顎を上げた。


「おおきく、なった。」


「いや、可愛……いや綺麗……いやでも可愛い……」


カイが頭を抱えながら叫ぶ。


「うわ、なんだその言い方かわいい……」


ミアも目をこすりながら感動している。


「昨日の浄化……身体が“本来の時間”を取り戻したのかもしれんな。」


ガルドが淡々と理由を述べる。


ライオネルは、しみじみと頷いた。


「成長ってのは、誰でもできるわけじゃない。ちゃんと今を、生きてる証拠だ。」


フローレスは、その言葉の意味はよくわからなかったけれど――


胸が、あたたかくなった。


「……ん。」


小さく笑った。

本当に、うれしそうに。







その頃。



宿の裏手、タバコをくゆらせるイムラ。


指先はわずかに震えていた。


(……成長した。外で力を使ったことで、戻り始めている。)


家族の顔が頭をよぎる。

教会の命令の声が耳に焼き付いている。


(……報告しなきゃ……)


背を壁に預け、空を見上げる。


「……ごめん。」


その小さな呟きは、誰にも届かなかった。

イムラは煙を吐き出し、教会へと文書を書きはじめた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ