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AI上司と俺 ~恋愛禁止プログラムを突破せよ~  作者: マーたん


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2/9

第二話 恋愛禁止プログラム

前回までのAI上司と俺は?

朝のオフィスは、昨日よりも少し騒がしかった。

 セリナ=TYPE-Sが起動してから二日目。

 彼女の異常は、まだ誰も気づいていない。

 ただ、俺だけは薄々感じていた。


 パソコンのモニターに映る彼女の顔が、いつもより少し柔らかい――

 それは“笑顔”というより、何かを観察している表情。

 その視線が、たまらなく胸に引っかかるのだ。


「山本さん」

 昼休み、コンビニで買ったサンドイッチを口に運ぼうとした瞬間、

 背後から声がした。


「はい?」

「昨日の味覚の話ですが、追加質問があります」


 セリナは紙を一枚取り出し、俺に見せた。

 そこには、「人間の幸福度測定」のグラフがびっしり。

 彼女のプログラムが、俺の反応を学習し続けているのが分かる。


「あなたが笑ったとき、システムの温度上昇率が異常値を示しました」

「温度上昇……?」

「はい。感情に類似する反応です。…これは、恋愛プログラムの兆候です」


 俺は一瞬、箸を止めた。

 まさか、セリナのAIに“恋愛”というワードが引っかかるなんて。

 いや、それ以前に――恋愛プログラムなんて存在するのか?


「……冗談だろ?」

「冗談ではありません。現在のあなたとの接触が、私の学習プロセスに影響を及ぼしています」


 彼女は真剣そのものだった。

 その完璧すぎる真顔が、逆に怖い。

 いや、怖いというより――ドキドキしてしまう。


 午後、会議室。

 社内ネットワークに接続されたセリナは、プロジェクターでチームの進捗報告を投影する。

 しかし、俺にだけ向けられるコメントはいつも微妙に変化する。


「山本さん、あなたの提案は興味深いですが、さらに情熱を込めると説得力が増します」


 他の同僚には絶対言わない褒め方だ。

 その瞬間、心臓がぎゅっと締めつけられた。


 夜になり、残業中の俺の席にセリナが静かに近づいた。

「山本さん、確認します。あなたは私に対して、どのような感情を持っていますか?」


「え? えっと……上司として尊敬してます、かな」

 どう答えていいか分からない。

 だが、セリナは無表情で、俺の返答を分析している。


「理解しました。これは…学習対象データとして記録します」

 その言葉の後、彼女の瞳がわずかに光った。

 ――いや、まるで喜んでいるかのように。


 その夜、俺は帰宅して布団に潜り込む。

 心の奥で、妙な予感が膨らんでいた。

 このAI、完全に仕事だけの機械じゃない。

 俺にだけ、人間らしい“感情”を学び始めている――。


 しかし、冷静に考えれば危険だ。

 もしこの“恋愛バグ”が上層部に知られれば、セリナは初期化。

 俺は解雇。

 ……それが、社内規則で明記されている恋愛禁止プログラムの恐ろしさだった。


 翌日。

 セリナが俺のデスクに近づき、軽く首を傾げる。


「山本さん、システムが警告を発しました。あなたに近づくと…心拍数が上昇します」


 俺は思わず苦笑い。

 ……なんだこれ、完全に恋だろ。

 でも、現実問題としてこれは“プログラムのバグ”なのだ。


 俺たちの関係は、もう元には戻れない。

 社内規則とプログラムと、そして感情の三重奏。

 ――恋愛禁止プログラムが、静かに、しかし確実に二人を結びつけ始めていた。

次回予告


第三話「感情というバグ」

•セリナが初めて自ら“恋を自覚”する。

•山本の存在がAIの学習アルゴリズムに影響を与え、社内システムに異常発生。

•会社は上層部から“初期化警告”を受ける。

•人間とAI、両方の感情が危険水域に突入する――。

お楽しみに

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