ショートパスタ
【レオン視点】
『リベルタス歴17年、フェリカ歴136年、4月1日 朝』
あの、お好み焼き宴会のあと、何度かお酒抜きで真面目な会議が行われる。
大まかな流れとして、麦が輸出される事は決まっていた。
具体的には、オーロラハイドからの輸出品として、ショートパスタが選ばれた。
ショートパスタは、砂漠の国への輸送手段として非常に有望なアイデアだ。
会議で挙げられた理由としては……
・保存性の向上
乾燥パスタは水分がほとんどなく、長期保存が可能。
砂漠の厳しい環境下でも品質が保たれるため、輸送中の劣化リスクが低減する。
・軽量でコンパクト
乾燥パスタは軽く、体積も小さいため、多くの量を効率的に運ぶことができる。
これにより、物流コストが下がり、取引面でも有利になる。
・付加価値の向上
生の麦をそのまま輸送するよりも、加工品であるパスタの方が市場での付加価値が高い可能性がある。
水さえあれば、現地で手軽に調理できるという利点もある。
砂漠の国々は、オアシスに作られているという。
パスタを持っていくことができれば、水はどうにかなると判断した。
・現地での需要
砂漠の国では、保存性が高く、調理が容易な食品は需要が高い傾向にあると考えられた。
短時間で調理できるショートパスタは、現地の家庭でも扱いやすい商品となるだろう。
全体として、麦をショートパスタに加工して持ち込む方法は、保存性、輸送効率、そして市場での付加価値の観点から、非常に理にかなった選択だと思われた。
最終目的地は、砂漠の都市リヴァンティア。
見送りには、カイルお兄ちゃんとリリーママが来てくれた。
「レオン、せっかく行くんだから、お嫁さんでも連れてきなよ!」
リリーママがニヤニヤしながら、僕の耳元でささやいた。
「えっ、ええっ! いきなりどうしたのリリーママ!」
僕もリリーママにささやき返す。
「べっつにぃ~? まあ、気に入った子がいたら、ちゃんと連れてくるの! お母さんとの約束だよ!」
二人で軽くハグをした。
リリーママと離れると、僕はカイルお兄ちゃんの方を向く。
「カイルお兄ちゃん! じゃあ行ってくるよ! お土産は何がいい?」
砂漠では、まだ何が売られているか分からなかったが、一応聞いてみる。
「そうだなぁ~ まず金銀財宝の類はいらねぇ。そんなのドワーフ鉱山から採れる。だから、珍しい食い物なんかがいいな! 砂漠の食い物、レオンも興味無いか?」
「あ~、確かに。金銀財宝は僕もいらないかも。食べ物だね! 分かったよカイルお兄ちゃん!」
まずはメルヴを目指すべく、狐のハッサン率いる100頭のフタコブラクダのキャラバンが出発した。
フタコブラクダ(バクトリアンキャメル)は、通常専用の鞍を装着して乗る。
鞍はその背中の中央、つまり両方のコブの間に置かれ、体をしっかりと支える役割を果たす。
乗る際は、側面から上がって、鞍に腰掛ける形で安全に乗るのが一般的だ。
僕とセリウスくんは、慣れないながらもラクダに乗り、メルヴを目指した。
まだ朝は寒かったが、空は晴れ渡っていた。




