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交易路の守護者!~理想の国づくりと貿易で無双したいと思います~  作者: 塩野さち
第三章 熱砂の姫君

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実績のある家臣

【レオン15歳視点】



『リベルタス歴17年、フェリカ歴136年、3月20日 夕刻』



 セリウスくんは、いきなり皇帝(お兄ちゃん)に国家機密を見せられて完全に固まっていた。


 僕は普段バートルさんから国家関連の機密文章を借りて読んでいたため、多少は耐性があった……つもりだった。


 だけど、僕がそれを実行するとなると話は別だ。


(ううん、ここは、僕が話を進めなきゃだめだ!)


「あのさぁ、皇帝(お兄ちゃん)こういう大事なことって、もっと実績のある家臣に任せたほうがいいんじゃないの? 例えばシドさんとか、ヒューゴさんとか、バートルさんとか……」


 そうなのだ、なぜ弟の(レオン)なのかが分からない。


「あ~、レオンそれなんだけどよぉ。俺もそれは考えたワケ。でも断られたわ。いまってグラナリアを併合したばかりで微妙な時期なんだわ……同じ理由で俺自身もダメ」


 (カイル)はあっけらかんとしていた。


 まあ、国家の中枢に多少でも近い人間なら、実績のある家臣に頼むことは、誰しも考えそうなことだ。


「それによ、仮にも外交って地位の低い人間が行くわけにもいかねぇだろ?」


 兄の言ってることはもっともだ。


 そうなると必然的に、僕となるわけか……


「それによ、もう親父のような犠牲は出したくないんだわ……ほら、周辺国家が変に勘ぐって、今度は俺を暗殺しにくるかもしれねぇぞ? そんときゃ兄弟のレオン(おめえ)もタダじゃすまないだろうさ」


「あ~そうか、僕も他人事(ひとごと)じゃないんだ……」


 皇帝(お兄ちゃん)の執務室の窓からは、夕焼けが差し込んでいた。


 兄は残業はしない主義だ。


 椅子から立ち上がると外を見つめる。


「そうは言ったものの、行ったことの無い場所へ行くのは大変だ。親父もメルヴに初めて行った時は苦労したって言ってたしな」


「うん、西方探索の騎兵隊の話でしょ? たしかロイドさんが腹を壊したんだよね」


 こんな感じで、西へ行く話をするときには、ロイドさんが話のネタにされる。


 だけど、これってとても大事な教訓だと思うんだよね。


 準備することの大切さを今に教えてくれる、お父さんの時代の教訓だと思う。



「……おい、カイル、レオン。そろそろ仕事の話は終わりだ。お迎えが来たぞ……」


 いつも通り壁にもたれかかって腕を組んでいたシドさんが、部屋の入口を見る。


『コンコンコンッ』


「あの~ユリアです~。カイル様、お食事の時間ですわ!」


 お兄ちゃんの彼女のユリアさんが入ってきた。


(いつもはバートルさんが宰相室から来るんだけど、バートルさん、いまグラナリアに出向中だからなぁ……)


「あっ、どうも、ユリアさん、兄がいつもお世話になっております」


 僕はユリアさんに頭を下げた。


 たぶん将来は義理の姉になる女性だよね。


 今のうちから仲良くしておかなくちゃ!


「わっ、わわわわっ! レオン様っ! 皇族の方がそのように元メイドにへりくだってはいけないのですぅ……」


 ユリアさんの声はだんだんしぼんでいった。


 顔の前で両手をあたふた動かしていて、ちょっと可愛い。


「はっはっは、ユリア、レオンはお前の義理の弟になるんだ。もうちょっとフレンドリーにしてやれや!」


(カイルお兄ちゃんって、だんだんお父さんに似てきたよな……)


「そうだ! シドにセリウスもメシ食っていくよな!」


(逆に皇帝(お兄ちゃん)はフレンドリーすぎるんだってば!)


「……うむ、いただこう。セリウス、お前もこういう付き合いが増えるだろう。ついて来い……」


 シドさんの口調は静かだったが、相手に拒否をさせない凄みがあった。


 かわいそうなのはセリウスくんで、首を縦にブンブンと振っている。


(さて、西方の砂漠か……どんなものが待っているのか……)


 僕は今一度、地図に目を落とす。


 柔らかな夕焼けの光が、西方の地図を照らしていた。


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