表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
交易路の守護者!~理想の国づくりと貿易で無双したいと思います~  作者: 塩野さち
第一章 勃興

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/171

商人シド

【シド視点】


 俺はシド。元は軍の酒保で働いていた男だが、今やオーロラハイド随一の商人を名乗っている。爵位を得たゼファー男爵の片腕として、この街の経済を支えるのが俺の役目だ。


 ゴブリンとの戦火を乗り越えた街には平穏が戻った。だが、次は『交易』で領地を豊かにしなければならない。


 乾いた風が石畳を撫でる午前、俺は広場の倉庫前で帳簿を閉じた。先日、王都の商人との輸出契約がまとまったのだ。


「……よし。塩、麦、薬草、魚介類。これで次の商隊は完璧だ」


 思わず口角が上がった。俺が見込んだのは、王都でも評判になりつつある、白く輝くオーロラハイドの塩。ゼファーが専売権を持つこの塩を、王都の市場に流し込むのだ。交易路を確立し、他の交易品と交換すれば、オーロラハイドに必要な物資が手に入る。


 街の南門で見張りをしていた衛兵隊長のヒューゴが、忙しなく歩み寄ってきた。


「シド、すまんが次の王都行き商隊は明後日だ。馬車の手配は済んでいるか?」


「……任せておけ。鹿肉の干し肉も積み込む予定だ。あとは相手先に連絡するだけだ」


 ヒューゴは満足げに頷き、鋭い眼光を俺に向けた。


「お前の手腕にはいつも助かっている。だが、今回は少し余裕を持って動いてくれ。領民が塩を待ち望んでいるんだ」


 その言葉を背に、俺は市場のほうへ足を向けた。馬車が行き交い、人々の話し声が活気よく響いている。


 店先に立つ俺の脳裏には、契約の瞬間が蘇っていた。王都の大商人……銀髪を後ろで束ねた壮年の男が、塩の結晶を掌に載せて感嘆の声を上げた。


「これは……まさに幻の塩だ! オーロラの光を閉じ込めたかのような白さ。ぜひ王都で売りましょう!」


 その熱意に、俺は内心ほくそ笑み、契約書に署名した。あの日を思い出す度に、背筋が伸びる思いがする。


 ふと足元に目を落とすと、小麦袋を肩に掛けた少女がこちらを覗き込んでいた。


「シドさん、今日の薬草はいつ届くの?」


 市場の片隅で薬屋を営む親父を手伝う彼女は、目を輝かせていた。


「……ああ、明日の朝一番だ。待っていてくれ。新しい治療薬もできるって噂だからな」


 子どもたちの将来のためにも、俺は交易の先にある『安心』を売っているのだ。


 午後になり、俺はシド商会の事務所に戻った。木製のカウンター、壁に掛けられた大きな地図。俺は地図を指さしながら、次のプランを練る。


(……南のフェリカ王国はワインが豊富だ。塩と交換し、さらに途中の街へ……)


 帳簿のページをめくるたび、未来が開ける気がした。しかし同時に、肩の重みも感じる。ゼファー男爵の信頼、領民の期待、王都との約束。失敗は許されない。


「シド!」


 呼び声に振り返ると、リリーが立っていた。元女騎士だが、今や俺の良き相談相手だ。


「次の交易路の候補地について、相談があるの」


 俺は微笑み、リリーに椅子を勧めた。


「……よし、聞こうか。次は君の眼で、市場を攻略する手助けをしてもらおう」


 リリーは小さく頷き、俺が差し出した地図を受け取った。


 ……こうして俺たちは、次の商機へ向けて歩み出す。


 商人シドの物語は、まだ始まったばかりだ。



シド商会の取り扱い商品例


資源:小麦、オーツ麦、海塩、薬草、魚介類、毛皮、鉱石


加工品:塩漬け肉、乾燥キノコ、織物、薬品


贅沢品:ワイン、香料、宝飾品、砂糖


その他:奴隷、価格がつくものなら何でも……


「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ