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オルヴァリスの戦い

【カイル視点】



『リベルタス歴16年、フェリカ歴144年 9月8日 昼』



 俺たちリベルタス軍は、グラナリア公国のオルヴァリスと言うところまで進軍した。


 なるべく水源のある所で休憩し、次の水源まで距離のある場合は、軍を急がせた。


 暑い日は午前中の涼しい間のみ行軍し、午後は休憩とする。


 さらに、一日おきに、歩兵の前列と後列を入れ替えた。


 後列の兵のほうが安全であるため、この交代は好評となる。


 そのおかげか脱落する兵も少なく、行軍は順調だった。



(地図表示がスマートフォンで乱れる場合、横表示推奨)




〇オーロラハイド

   |

   |

   |

   |

   |      北海

   |

   |

    \

     \

      \

風の平原   \

        \

         \海岸線

          ーーーーーーーーーー

          オルヴァリス


         森林地帯


               〇グラナリア


                穀倉地帯



 ここは、海岸線と森林の距離が近い。


 さらに、先刻から、グラナリアの偵察騎兵が、森の陰からチラチラと見ているのが分かった。


(あっ、これは、そろそろ敵が来るな)


 俺のカンがそう告げる。


 斥候役のゴブリン王グリーングラスが走って来た。


「カイル様、森の中にグラナリア軍、およそ7000が潜んでいるようです」


「やはりか……」


 森の中ではゴブリンたちは優秀だ。


 なにせ体が緑色なのである。


 森に溶け込むのは非常に上手かった。


 グリーングラスは、今日はさすがに派手な赤シャツではなく、茶色の地味な服を着ていた。



「よし、グリーングラス、全軍に臨戦態勢をとらせろ。ただしこっそりだ」


「ハッ!」


 リベルタス軍は、座って休憩していたが、全員が鎧兜に盾を身に着け、右手には槍を持つ。


 遠目には、休憩しているように見えるだろう。



 グラナリアの偵察騎兵が姿を消したあと、戦場にラッパのような音が響いた。


『ブオーーーーーッ』



「ワアアアアアアアッ」


 グラナリア軍が、一斉に森林から飛び出してきた。


 兵力はリベルタス軍の方が多いが、騎馬はグラナリアの方が多い。


 決して油断はできなかった。


「全軍、防御態勢! 作戦通り頼むぜ!」


 リベルタス軍は作戦通り、盾を構え防御態勢を取る。


 敵のはるか後方に、公王ヴィレムの姿が見えた。




  海    海    海    海    海



       海岸線     海岸線

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

       (リベルタス軍)

  歩 補給隊  補給隊  補給隊  歩

  歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩

  歩 重装騎兵 重装騎兵 重装騎兵 歩

  歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩

ヒューゴ隊    カイル隊   バートル隊



↑↑↑↑↑↑↑  ↑  ↑  ↑  ↑  ↑

騎騎騎騎騎騎騎  騎  騎  騎  騎  騎

歩歩歩歩歩歩歩  歩  歩  歩  歩  歩

ルーロフ隊

            □公王ヴィレム


       (グラナリア軍)


(歩は歩兵隊、騎は騎兵隊)



 敵は軽装騎兵と軽装歩兵だ。


 攻撃は、ヒューゴ隊に集中しているようだった。



 敵は投げ槍を投げ、短弓を打ち、後方へ下がる。


 再び槍や弓を構えると前進してくるという行動を繰り返す。


 もちろん、俺たちリベルタス軍も、盾の隙間から、エルフの弓兵が反撃していた。


「かはっ!」


 俺の横にいたエルフの弓兵が、眉間を撃ち抜かれた。


 即死だろう。


「ぐっ、まだだ、まだだ……」


 俺は耐える。


 まだグラナリア軍の投げ槍や弓が、補給切れになる気配はなかった。


 戦いから1時間が経過した。


 ヒューゴ隊の伝令が俺の元に来た。


「ヒューゴ様より、伝令です! 敵の猛攻激しく、反撃させてほしいとのこと!」


「ならぬ! まだだ!」



 戦いから2時間が経過した。


 またヒューゴ隊の伝令が来た。


「ヒューゴ様が、再度、突撃の許可を求めています!」


「もう少しだ、もう少し耐えろと伝えろ!」



 よく見ると、グラナリア軍は馬を降りて弓を打っていた。


 降りたほうが馬上から打つより命中率は上がる。


 さらに、リベルタス軍が反撃してこない事を良い事に、グラナリア軍は白兵戦を始めていた。



 戦いから3時間が経過した。


(くっ、そろそろ頃合いか?)


 俺は味方の重装騎兵に突撃命令を出そうとする。


 その時……



「ぬぅあああああああああ……遠くからチクチクチクチクと攻撃しおってぇぇぇぇ!」


 重装騎兵の装備をまとったヒューゴが、単騎で突撃を開始した。


 それを見たヒューゴ隊の重装騎兵と歩兵隊が後に続く。



(さすがに頃合いか? よし、突撃開始だ!)


「全軍、俺に続けぇぇぇぇぇぇぇぇぃっ!」


 俺が馬を走らせると、リベルタス軍は突撃ラッパを鳴らす。


 それまでの鬱憤(うっぷん)を晴らすかのように、猛攻を開始した!



『ドドドドドドドドドド』


「狙うは、ヴィレムの首だぁーっ!」



 リベルタス軍の重装騎兵2000は、一撃の破壊力は周辺諸国でも一二を争う。


 馬を降りていたグラナリア軍は、その衝撃力をモロに受ける。



 俺は敵歩兵に槍を突きだす。


「ぐわぁぁぁぁぁ!」


 槍は敵兵の胸に深く刺さる。


 槍が敵の死体から抜けなくなってしまったため、仕方なく槍を手放し、剣を抜く。


「俺に、続けっ、続け、続けーッ!」



 たまらずグラナリア軍の陣形が裂け、敗走を始めた。


 戦場には、グラナリア兵の死体が残される。


 その数は数千。


 いや、3500ほどだろうか?


 一方、味方の損害は1000ほどだった。



「よし、このままグランヴァル城を包囲するぞ!」


「おおおおおーーーーーーっ!」



 この戦いにより、グラナリア軍は兵の大半を失い、リベルタス軍の優位が確定した。


 だが公王ヴィレムと敵将ルーロフには逃げられている。


 戦場を、早くも秋の風が吹き始めていた。


挿絵(By みてみん)

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