初夜
【ユリア視点】
私、ユリアは、カイル様と部屋の中で見つめあう。
「ユっ、ユリア、たっ、立ってないでソファーにでも座ろうぜ!」
カイル様がソファーをポンポンと叩く。
彼の声は少し上ずっていた。
(な、なんだか緊張するわ……)
「あっ、はっ、はい!」
私はゆっくりと、カイル様の対面に座る。
(なんか、こうして見ると、カイル様ってシルク様に似てるのね)
彼は金髪で整った顔立ちをしていた。
でも、どこかゼファー様にも似ている不思議な顔だ。
(お二人の息子様なのだから当然ですわよね!)
またもや、カイル様がソファーの横をポンポンと叩く。
「だっ、だからよ、座る場所そこじゃねぇだろ……隣へ来いよ……ママと親父たちはそうしてたぜ……」
カイル様が顔を赤くしながら、口をとがらせる。
(まっ! まあ! 私ったら、なんて気がきかないのかしら! そういえばリリーママさんもそんな事いってたわ!)
「わっ、わかりました! しっ、失礼します……」
立ち上がり、カイル様の横へ向かうが、自分でも動きがギクシャクしているのを感じる。
なんとか、彼のとなりへ座った。
「なっ、なあ、ユリアって……その、いい匂いするよな……なんか花のような香り?」
自分でも笑顔になるのが分かった。
二人は自然と、小さく手を合わせる。
「あっ、はっ、はい! エルミーラママさんから頂いた、エルフの香油だそうです」
カイル様は、長い軍議のせいか、ちょっと男臭かった。
若い男特有のにおいだ。
(でも、いやじゃない。なんだか、安心する……)
「あっ、そっ、そうか、わりぃ。俺、風呂まだだったわ! 急いで入ってくるから待ってろよな!」
カイル様は、急に立ち上がると、部屋の外へ走っていった。
(ええっと、こういうとき、どうするんだったっけ?)
エルミーラママは、一緒に風呂に入るって言ってた。
でも、いきなりは恥ずかしすぎる!
(あっ、そうだわ、シルクママは、ベッドで待つって言ってたわ!)
そうね、これからカイル様と『いたす』のだし、ベッドで待つのはいいわねっ!
リリーママは、酒でも飲んでたら? と言っていたけど、これもいきなりだと、ちょっとアレよね!
私は、カイル様のキングサイズのベッドに『ぽふん』と横になった。
覚悟を決めて、横になり目を閉じる。
自分の呼吸の音が、妙に大きく聞こえるような気がした。
やがて、カイル様がパジャマ姿で戻って来た。
青い縦じまのパジャマだ。
私を見つけたカイル様もベッドの上に来る。
カイル様は、顔が真っ赤だ。
(どっ、どうしよう……恥ずかしくなってきた……)
自分の顔色は見えないけど、たぶん赤い。
しかも人生で一番赤いと思う。
彼からも、香油の良い香りがした。
私たちは、ベッドの中央に座り、お互い見つめあう。
「よっ、よろしくお願いしますっ!」
カイル様が、ベッドの上に座りながら頭を下げた。
「こっ、こちらこそ、よろしくお願いしますっ!」
私は三つ指をついた。
お互い恥ずかしがりながらも、ゆっくり服を脱ぐ。
彼の体が男らしい事が、やけに印象的だった。
初めての夜は、こうして更けていく。
カイル様の寝室に、私の嬌声が遅くまで響いていた……
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