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交易路の守護者!~理想の国づくりと貿易で無双したいと思います~  作者: 塩野さち
第二章 交易路の守護者

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グラナリアへの道

【カイル視点】



 親父との別れの宴の翌日。


 俺、宰相バートル、軍務大臣ヒューゴ、商人シドの四人は、城の会議室に集まっていた。


 円卓には、オーロラハイドからグラナリアまでの地図が広げられている。




(地図はスマートフォンでは横表示推奨)


〇オーロラハイド

   |

   |

   |

   |

   |      北海

   |

   |

    \

     \

      \

風の平原   \

        \

         \海岸線

          ーーーーーーーーーー


         森林地帯

               〇グラナリア


                穀倉地帯





 俺たち4人は地図を凝視していた。



「基本的には、海沿いを進軍しようと思う」


 俺はオーロラハイドから、グラナリアへ海沿いに指を動かす。


 沿岸部には細い道がある。


 各地に点在する漁村が使う道で、大きな交易路ではない。



「理由を、お聞かせ願いますか?」


 宰相のバートルが質問する。


 当然の質問だろう。



「なあ、親父はどうやって殺された?」


 俺の脳裏を、あの時の光景がよぎる。



「グラナリアの軽騎兵にやられましたな。投槍騎兵隊の仕業です」


 ヒューゴが顔をしかめて言う。


 そうだ、憎きヴィレム率いる、グラナリアの投槍騎兵隊だ。



「……フム……真っ先に補給隊が狙われそうだ」


 補給担当のシドらしい意見だ。


 食料などの軍需物資を失えば、撤退するしかない。


 しかも、途中の村々から食料を強制徴収しながらの撤退となる。


 あまりにも後味が悪い。



「そうだ。軽騎兵の強みは機動力だ。現にオーロラハイドの重装騎兵の追撃は失敗している」


 機動力が全く違うのだ。


 ドワーフたちの作った武具や鎧をまとった重装騎兵は強い。


 一撃の衝撃力なら、おそらく周辺国でも一二を争うだろう。


 だが、動きが遅いのだ。


 歩兵相手なら十分な速度があるが、軽騎兵相手では、機動力で分が悪い。



「そこで、海沿いを、こういう陣形で進もうと思う」




 俺は新しい紙に、陣形を描き始めた。



  海    海    海    海    海


       海岸線     海岸線

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  歩 補給隊  補給隊  補給隊  歩 →

  歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩 →進行方向

  歩 重装騎兵 重装騎兵 重装騎兵 歩 →

  歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩歩 →


(歩は歩兵隊)




「なるほど、一方を海に預けるわけですな?」


 ヒューゴがポンと手を叩く。


 この陣形のメリットに気が付いたようだ。



「……なるほど、これなら補給隊としては安心できる」


 シドも納得したようだ。


 そう、海からは騎兵隊は襲ってこない。



「これは一種の背水の陣ですね」


 バートルがうなった。


 背水の陣と聞くと『もう後が無い、追い詰められた必死の状態』というイメージがあるかも知れない。


 だが、背後を狙われないと言う利点がある。


 一番の弱点の背中をとられない、合理的な陣形だ。



「しかし、重装騎兵を中に配置するのはなぜですかな?」


 バートルが当然の質問をする。


 通常であれば、騎兵はもっと動きやすい位置に置かれる。


 例えば陣形の両翼だ。


「グラナリアの軽騎兵が、投げ槍や短弓(ショートボウ)を使い切るまで、悪いが歩兵隊には耐えてもらう。もちろん、盾は持たせる」


 全員が黙る。


 歩兵隊を指揮するのは至難の技となる。


 突出したり反撃する部隊が出ては困るためだ。


 今回は、陣形に穴を開けるわけにはいかない。



「投槍騎兵隊の戦い方は、槍を投げたら、大きく後方へ下がり、また予備の槍を構えて突進してくる」


 俺は槍を投げるフリをする。


「確かに何度も繰り返すと、人馬(じんば)ともに疲れて動きが鈍るでしょう」


 バートルは納得したようだ。


 ヒューゴも頷いている。



「今回の作戦のキモは、歩兵を抑えられるかどうかと、重装騎兵の突入タイミングだ。間違えば……負ける」


 俺が作戦を締めくくった。



 その後もいくつかの案が議論されたが、これ以上の案は出なかった。


 特に、交易路を通る案が最後まで残った。


 正規の交易ルートを使える利点がある。


 だが、グラナリアの軽装騎兵に、何時(いつ)どこから襲われるか分からないと言う点で却下となった。



 こうして、軍議はおわった。



 俺は、軍議で出されたヤキトリ(ねぎま)片手に廊下を歩く。



 すっかり、日も暮れた。


 城内には、夏特有の湿気が満ちている。


 自室へ戻ると、暑いと思い、コップへ水をそそぐ。


 置いてあったジンジャーの粉末をコップに入れて混ぜる。


「ふうっ」


 飲むと、一瞬だが暑さを忘れられた。



『コンコンコンッ』


 俺がくつろいでいると、ドアがノックされる。


「す、すみません、ユリアです。あの……その……来ました……」


「わっ……分かった……入ってくれ……」



 ユリアは、ピンクのパジャマ姿だ。


 何をしに来たのかは聞かない。


 俺の額を、夏の暑さとは別の種類の汗が流れていった。


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