表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/146

落ちた琥珀

【ゼファー視点】


 俺たちは、メルヴからオーロラハイドに帰還することにした。

 本当は軍馬の調達もしたかったのだが、当然ながら軍馬は軍事物資である。

 バザールで売っているような駄馬は買う気がしなかった。


 お土産に、大きな宝石の原石を何個か買う。


(これをドワーフ王トーリンに加工してもらおう。それから、シルクとリリーとエルミーラと……ついでにアウローラさんの分も買っておこう)


 宝石売りの商人によると、これは琥珀という宝石らしい。

 オレンジアンバーというそうだ。

 夕焼けのような、温かみのある色合いが特徴で、気に入った。


 お代を払おうとすると、宝石売りの商人に声をかけられる。


「旦那、もしかして海塩というものをお持ちではないでしょうか」


 俺は少し驚いた顔で答えた。


「へえ、噂が広まるのは早いもんだな。まだ少しならあるぞ」

「海塩と交換で、どうでしょう」

「うーん、帰りに舐める塩以外なら渡してもいいぞ」


 俺が海塩の小袋を取り出す。

 中身を見た宝石売りはニンマリと笑った。


「はい、お代はこいつで結構です。ありがとうございました」


 お土産を買うと、狐のハッサンにも挨拶しようと思い、彼の店へ行く。


「やあ、狐のハッサンはいるかい」


 俺もメルヴの言葉に大分慣れてきた。


「はい、こちらへどうぞ」


 シドとバートルを伴って、客間へ行くとハッサンが来た。


「ハッサンさん。俺たちオーロラハイドへ帰ります。本当は軍馬が欲しかったけど手に入らなかったんで」


 ハッサンは目見開く。


「えっ。もうお帰りになるので? それに軍馬が欲しいですと? 最初に言ってくだされ! おい! 番頭を呼べ! 軍馬を集めてオーロラハイドへ届けさせろ! あと、ワシの旅支度だ! 馬の常足で十五日と聞いたが、念のため三十日分の用意をしろ! 急げ! 他にも売れそうな若い家畜を集めろ」


 ハッサンがバタバタと指示を飛ばし始めた。

 彼の部下たちが忙しく走り回る音がする。


「……やはり、ついてくるのだな」


 シドはこうなる事を予想していたらしい。


(まあ、同じ商人だから気持ちが分かるのかな)


「オーロラハイドは良い街だよ」


 バートルが得意げにしている。


(バートルくん、君は最近来た子でしょうが)


 俺たちは待っている間、またもザクロジュースをごちそうになる。

 軍馬や家畜の代金は、オーロラハイドに着いてから渡すことになった。



 メルヴの城門を出て、オーロラハイドへ向かう。

 帰りは順調であった。


 ハッサンがえらく興奮していたのが印象的だ。

 なかなかタフなやつである。


 この風の草原にも慣れてきた。


(要は草原を長期間移動するときの、食べ物と飲み物が大事ということだな)


 ヨーグルトを飲んだり、果実やチーズを食べたりしながら移動する。


 夏が終わりかけていたのか、途中から肌寒くなってきた。


(そろそろ秋か、カイルは元気かなぁ。いつかお父さんって呼んでほしいな。まだ喋れないかな? リリーのお腹は大きくなっただろうか? エルミーラは元気にしているかなぁ)


 やたらと家族に会いたくなってきた。

 野営の時に、シルク、リリー、エルミーラの夢を見た。

 内容はよく覚えていない。


 十五日後、我が家であるオーロラハイドに到着した。

 南門の衛兵が顔パスで俺たちを通してくれる。

 ハッサンは建築中の石の城壁に驚いているようだった。


 俺やドワーフたちから見ると、まだまだ完成には遠い。

 何年かかかるだろう。

 今もドワーフたちがせっせと城壁を組み上げていた。


 日々発展を続けるオーロラハイドの街を通る。

 至る所で住宅や店舗が建築されていた。


 そして、我が屋敷へついた。


 敷地の入口で白い神官服のアウローラが出迎えてくれる。


「やぁ、アウローラ、お土産買ってきたぞ」


 俺はのんきな声でアウローラに話しかけた。


「あっ、ゼファー様、大変です! カイル様が熱を出されました」


 思わず持っていた、琥珀を落とす。


 琥珀は、夕日を受けながら、静かに転がっていった。


「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ