表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/171

バートル

【ゼファー視点】


 俺は朝食のあと、浅黒い肌の青年と執務室で会う事にした。


 執務机の椅子に座って待つ。朝の静けさが執務室に満ちている。窓からは街の様子が分かり、早朝から働く住民たちの姿が見えた。


 やがて部屋の扉がノックされ、浅黒い肌の青年がヒューゴに連れられて、部屋に入って来る。


 青年は物珍しそうに周りをキョロキョロしていたが、俺の姿を見ると……


「こんにちは……」


 青年がたどたどしく口を開いた。


「おお、言葉を覚えたのか! 久しぶりだな!」


 俺は椅子から立ち上がり、青年の前に歩み寄ると握手を求めた。


 文化が違うからだろうか?


 青年は一瞬とまどっていたが、俺の手を握り返してきた。


「俺はゼファー、君の名前は?」


「バートル!」


 おお、会話が成立しているぞ!


 平原で身振り手振りでコミュニケーションを取ろうとしたっけ。


 俺は昔を思い出して、ちょっと感動していた。


「バートルは、誰から言葉を教わっているんだ?」


「グリータ! ゴブリン、グリータ!」


 輝きのゴブリン亭の看板娘じゃないか!


(あ~、あの娘、コミュニケーション能力高そうだもんな~)


 バートルの表情が一変、険しいものになった。


「敵、来る! 羊、取られる! 助けて!」


「敵? どこから来るんだ? どんなやつだ?」


『ドンドンドンッ!』


 部屋のドアが荒々しくノックされた。


「入れ!」


 入って来た兵士は、息が荒かった。


「た、大変です! 南門が襲われています! 不審な騎馬隊が、羊を奪おうと……!」


「騎馬だと? 数はどれぐらいだ?」


 ヒューゴが緊張した声を出す。


「騎馬の数、およそ二十騎!」


 俺は少し冷静に考えてみた。


 オーロラハイドには、作りかけの城壁がある。


 城壁をいったん土で作り、固め、周囲に石垣を積んでいくと言う工法で作っている。


 まだまだ基礎工事の段階だが、それでもしゃがむと兵を隠せるぐらいの高さはあった。


「おい、ヒューゴ、オーロラハイドの騎兵はどれぐらいになった?」


「はい、やっと二十騎になったばかりです。ただ、半数が新兵で、戦闘経験は全員がありません」


 これは不利だろうな……


 地形を利用するか……


「ヒューゴ、作りかけの城壁の陰にエルフの弓兵を隠しておけ! 指揮はお前が執れ!」


「閣下はどうなさるおつもりで?」


 ヒューゴが心配そうな声を出す。


「打って出る。俺たちが逃げ出して、敵が追ってきたら、エルフの弓兵に仕留めさせろ!」


「はっ! 了解しました! お気をつけて!」


「バートル、お前は見学でもしてろ!」


「わ、分かった……」


 俺たちは、羊を奪うやつらを撃退するため、行動を開始した。


 南門の前には、既に十名ほどの騎兵が集結していた。若いロイドの姿も見える。彼は前回の西方遠征でお腹を壊した兵士だ。


「全軍、聞け! 今から敵を誘き出す! 彼らが追ってくるようにして、城壁の前まで連れてくるのだ! ヒューゴの合図で、全員が左右に分かれて逃げろ! そうすれば、エルフの弓兵が敵を射落とす!」


 騎兵たちは緊張した面持ちで頷いた。俺は馬に飛び乗る。手綱を強く握る手に汗が滲んだ。


 南門が開かれ、二十騎の騎兵隊が出撃した。俺は先頭に立ち、風の平原へと馬を駆けた。


 俺はトーリン王に作ってもらった槍を高く掲げる。太陽の光を浴びて、槍身が白銀の輝きを放った。


「オーロラハイド騎兵隊、突撃……!」


 俺の号令一下、騎兵隊は楔形の隊列を組み、一斉に襲撃者たちに向かって駆け出した。


 乾いた大地を蹴り上げる馬蹄の音が轟き、風が頬を叩く。心臓の鼓動がさらに激しさを増す。


(準備はよし、勝算はある……)


 これが俺たち若きリベルタス公国の初めての戦いになる。


「とても面白い」★五つか四つを押してね!

「普通かなぁ?」★三つを押してね!

「あまりかな?」★二つか一つを押してね!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ