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交易路の守護者!~理想の国づくりと貿易で無双したいと思います~  作者: 塩野さち
第一章 勃興

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エドワード・フェリカ

【ゼファー視点】


 広大な平原を抜け、鬱蒼とした森を越え、険しい山々を踏破した俺たち騎兵隊は、副隊長リリーの指揮のもと、約一週間の旅路を経て、王都ヴェリシアに到着した。


 王宮の門前で衛兵に「火急の用事にて参上。王子カイルに関わる重大事項」と告げると、驚いたことにエドワード国王は予定を調整し、急遽謁見を許可してくださった。


 豪奢な装飾が施された玉座の間。中央に鎮座するエドワード国王の横には、気品溢れる王妃エレオノールの姿があった。そして部屋の両側には、冷たい視線を向ける重臣たちが整然と並んでいる。


 俺とリリーは深々と頭を下げ、王の前に跪いた。横には、ドワーフ王トーリンから託された箱を恭しく置く。


「おお、ゼファー卿! 久しいな」


 エドワード王は温かみのある声で俺に呼びかけた。


「シルクの息子カイルは元気にしておるか?」


「はっ、このたびは急な拝謁をお許しくださり、誠にありがとうございます」


 俺は慎重に言葉を選んだ。


「息子カイルのことでご相談があり参上いたしました。ただ……差し支えなければ……」


 言葉を濁す俺の意図を悟ったのか、重臣たちの間から不満の声が漏れ始めた。


「またも陛下に取り入ろうというのか」

「元奴隷の分際で」

「今度はエルフの美女でも献上するつもりか」

「けしからん!」


 彼らの侮蔑に満ちた囁きが部屋中に響く。


「ウォッホン!」


 エドワード国王は意図的であろう咳払い。重臣たちの声は潮が引くように静まり返った。


「まあ、そなたのことだ。何か重要な話があるのだろう」


 国王は理解を示すように頷いた。


「皆の者、別室で待機せよ」


 不満げな表情を浮かべながらも、重臣たちは静かに退出していった。


「ねえ、孫のカイルのことなのでしょう?」


 王妃エレオノールが繊細な眉を寄せて言った。


「私も心配しています。私くらいは席を共にしてもよろしいかしら?」


 その優雅さと気品は、三十代後半とは思えぬほどの美しさだ。


「……そ、そうだな。ゼファー卿、構わぬか?」


 国王は王妃に優しい眼差しを向けた。


「はっ、王妃様にこそ、ぜひ聞いていただきたい事柄でございます」


 緊張が解けたのか、エドワード国王は足を組み、肘掛けに体を預けるようにして姿勢を崩した。


「はぁ、公式の謁見は肩が凝るものだ」


 国王は苦笑した。


「さて、カイルのことについて、何か分かったのか?」


「カイルの持つ権能について、調査を終えました」


「ほう、して、どのような権能であった?」


 国王は興味を示した。


「シルクには能力がなかったが、そなたの権能を受け継いだのか?」


 俺は一呼吸置き、重要性を込めて言葉を紡いだ。


王権神授領域レグヌス・セイント・ドメインでございます、陛下」


「まあ!」


 エレオノール王妃は驚愕の表情を浮かべ、その場に凍りついたかのように動かなくなった。


 エドワード王もまた、言葉を失ったように口を開けたまま。しかし、すぐに表情が変わった。


「くっ、くくくく……王権神授領域レグヌス・セイント・ドメインだと?」


 国王の目が鋭く輝いた。


「そなた、余を欺いているのではあるまいな?」


「王よ、女神官アウローラによれば、祖父の権能が子に受け継がれず、稀に孫の世代に顕現することがあるとのことです」


「あなた、私もその話を耳にしたことがあります!」


 王妃が俺の言葉を支持してくれた。


 エドワード国王は深く息を吸い込み、天を仰いだ。そして両手を天に向け、突如として歓喜の笑い声を轟かせた。


「ふっ、ふはははは! シルクがやってくれた! シルクが!」


 国王は興奮を抑えきれない様子だった。


「ゼファー卿、いや、我が義理の息子よ、そなたもよくやった! カイルには国の一つでもプレゼントせねばなるまい!」


 国王の瞳は熱に浮かされたように輝いていた。


「どれ、ここは一つ、隣国グラナリアに攻め込むとしよう! あの地は温暖で麦の収穫も良い。カイルには統治の練習にぴったりだろう!」


 国王は立ち上がり、大声で命じた。


「兵を召集せよ! 戦の準備だ! 何と素晴らしい日だ! カイルとグラナリアの麦酒で杯を交わそうぞ!」


(えっ……ええええええ〜!?)


 俺は内心で悲鳴を上げていた。その場にいた全員が——国王以外は——茫然自失の表情を浮かべていた。


 王の狂喜乱舞の前に、俺たちは言葉を失っていた。


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