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レオンの癒し(物理)

【レオン教皇17歳視点】


『リベルタス歴18年、フェリカ歴146年 11月16日 夕方』


 重い足取りで家へ帰ると、リビングでは既に女たちの戦いの火蓋が切って落とされていた。議題は「誰がレオン教皇の第一妃にふさわしいか」そして「今夜、誰がレオン教皇と『いたす』のか」である。


 僕としては、ケモ耳少女ファニルちゃんの看病で心身ともに疲れ果てており、正直それどころではないのだが。


 夕食はいつも通り、素朴なパンと干しシャケ、それから野菜の塩漬けだった。気まずい沈黙の中、みんな黙々と食事を終える。


 そして、食事が終わるやいなや、ファリーナちゃんが僕に迫ってきた。


「レオン! 今宵は妾といたすのじゃ!」


 ファリーナちゃんが「うっふん」と色っぽい(?)声を上げ、おもむろに踊り子の薄い衣装をはだけようとする。よく見ると、こんな寒い時期なのに、いつもの露出度の高い踊り子の衣装だ。気合の入り方が違う。


 だが、僕はもう限界だった。


「ファリーナちゃん、ごめん。今日はこれで許してくれないかな?」


 僕は、おもむろに右手をファリーナちゃんに向け、アウローラさんの手紙にあった「奥の手」……癒しの権能の応用編を試してみることにした。青白い光が僕の手のひらから放たれる。


「はあああああああっ! き、きもちいいいいいいいいいっ!」


 ファリーナちゃんは、一瞬にして白目をむくと、そのまま床にばったりと倒れ、ピクリとも動かなくなってしまった。即落ちである。


「じゃあ、次はカルメラさん、君の番だよ」


「えっ!? レ、レオン様の癒し……ああっ、なんだか、体の奥から、深く、深く、沁みてきますぅ……んんっ……!」


 カルメラさんも、僕の癒しの光を浴びると、全身をビクンビクンと小刻みに震わせ、そのまま糸が切れたように倒れて動かなくなった。


「はううっ! こ、この言いようのない快楽は……まさに国家機密級の癒しですぅ……!」


 ステラちゃんが、頬を赤らめ、潤んだ瞳で僕を見つめてくる。


「うん、じゃあ、次はステラちゃんの番だよ」


「やめっ……やめるのですぅ! そんな強いので癒されたら……はあああああんっ!」


 ステラちゃんも、よだれを垂らしながらその場に崩れ落ちた。


 最後に、僕はリビングの隅で固まっていたザイナさんの方を向いた。彼女は、全てを諦めたような、それでいてどこか期待しているような、複雑な表情を浮かべている。


「ああっ……と、とけるぅ……。こんな癒し、初めて……」


 ザイナさんも、僕の青白い光を浴びると、全身をわなわなと小刻みに震わせ、そのままへたりこんでしまった。


 こうして、僕の家の女性陣全員が、癒しの権能(物理的快楽バージョン)によって、もれなく気を失っていた。


「なんか……アウローラさんのメモにあった『究極の癒やし』ってのを試してみたけど……効果絶大すぎてコワッ!」


 僕は、一人ずつみんなを抱きかかえて、それぞれのベッドへと運んだ。大変だったけど、これで今夜はゆっくり眠れそうだ。


 久しぶりに一人きりの静かな夜。僕は満足感と、ほんの少しの罪悪感を感じながら、深い眠りへと落ちていった。


 その様子を、部屋の暗闇の中から、爛々と光る猫のような一対の目が、じっと見つめていた……。


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