ヴェリシア追放
【ステラちゃん17歳視点】
『リベルタス歴18年、フェリカ歴146年 10月10日 昼』
わたくしステラは、レオン教皇様とご一緒に、フェリカ王国の王都ヴェリシアを目指すことになったのです。
ファリーナ様とカルメラ様、そしてシド先生はリバーフォード村に残り、村のこれからの発展について計画を練られるとのことでした。少し寂しかったですけれど、レオン様とご一緒できるのは、とても嬉しかったです。
出発の朝、ファリーナ様とカルメラ様が見送ってくださいました。
「レオン、本当にすぐ戻ってくるのじゃよ? 妾、待っておるからの!」
ファリーナ様は、レオン様の袖をぎゅっと掴んで、心配そうに見上げておられました。
「うん、すぐ戻ってくるよ、ファリーナちゃん。リバーフォード村のことは頼んだからね」
レオン様は優しく微笑んで、ファリーナ様の頭を撫でていらっしゃいました。
「レオン様、ステラ様、道中お気をつけて。わたくし、毎日女神様にお二人のご無事をお祈りしておりますわ」
カルメラ様も、心から心配してくださっているご様子でした。
そして、いよいよ出発の時です。レオン様が、わたくしをひょいと馬に乗せてくださいました。
「わっ、わわわっ! お馬さんに乗るのは初めてなのですぅ! 」
「大丈夫だよ、ステラちゃん。僕にしっかりつかまっていてね」
と、レオン様は優しく仰ってくださいました。
「……護衛に交易騎兵隊を百騎つけよう」
シド様が護衛を手配してくださったのです。百騎ですって! はわわ、なんだかすごいことになってきましたですぅ。
『リベルタス歴18年、フェリカ歴146年 10月15日 昼』
五日間の旅路を経て、ようやく王都ヴェリシアの荘厳な城門が見えてまいりました。ですけれど、門の前に着くと、なぜかわたくしステラが、ヴェリシアへの出入りを禁じられてしまったのですぅ!
屈強な衛兵様が、厳しいお顔で言い渡しました。
「ステラの罪状は、許可なくヴェリシアの宮殿を抜け出したことである。ヘンリー新国王陛下によると、『どうせ今頃、別の男にでも抱かれておるのだろう』とのことだ。よって、ステラの入城は許されぬ。ああ、それから、そこのレオンとやらも、ステラに与する者として同様に出入り禁止とする!」
「そっ、そんな……! ヒドいのですぅ! ご、誤解なのですぅ!」
ヘンリー様のあまりのお言葉に、私はその場で泣き崩れそうになりました。あんなにひどいことをされたのに、今度はこんな仕打ちだなんて……
「ステラちゃん、大丈夫だよ。ここは一旦引こう」
レオン様が、私の肩を優しく抱いてくださいました。その温かさに、堰を切ったように涙が溢れてきましたですぅ。
結局、私たちは王都ヴェリシアへ入ることもできず、私は泣きながら、再び乗せていただいた馬上でレオン様にしがみつくしかありませんでした。
レオン様率いる百騎の交易騎兵隊は、静かに馬首を返し、来た道であるリバーフォード村へと引き返すことになったのです。悔しくて、悲しくて、涙が止まりませんでした。
吹き付ける秋風は冷たかったのですけれど、レオン様の背中はとても広くて暖かくて……わたくしは、まるで最後の希望にすがるように、その温もりに抱き着いていました。
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