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砂漠への旅立ち

【レオンくん15歳視点】


『リベルタス歴17年、7月11日 早朝 晴れ』


 朝日がオーロラハイドの城壁を赤く染め始めた頃、トーリン門は既に活気に満ちていた。商人たちが荷物を運び、兵士たちが警備につき、旅人たちが行き交う。その中でも特に目立っていたのは、ラクダのキャラバンだった。


「セリウスくん、今回はもっといろんなショートパスタを持っていけるね」


 僕は相棒のラクダの首元を撫でながら、セリウスくんに声をかけた。


「はい、リヴァンティアの人たちも喜んでくれるでしょうね」


 セリウスくんは既に荷物の最終確認を終えていた。前回の旅で随分と成長したと思う。


 僕たちが出発の準備をしていると、リリーママとシドさん、そして意外な人物がトーリン門にやってきた。


「お兄ちゃん!」


 振り返ると、エリュアが小さな包みを両手に持って走ってきた。緑色の長い髪が朝の風に揺れている。


「エリュア、こんな早くに来てくれたの?」


「もちろんよ! これを持っていって」


 彼女は小さな木箱を差し出した。開けてみると、カイルお兄ちゃんからの親書と、エリュアが作ったと思われる小さな織物が入っていた。


「これは?」


「わたしが作った織物よ。オーロラハイドの伝統的な模様を入れたの。ファリーナさんへのプレゼントにしてね」


 エリュアは少し照れくさそうに笑った。


「ありがとう、きっと喜んでくれるよ」


 僕が箱を荷物に加えると、リリーママが近づいてきた。


「レオン、気をつけて行ってらっしゃい。そしてね……」


 リリーママは周りを見回してから、小声で続けた。


「ファリーナちゃん連れてきちゃいなよ! レオンの選んだ子なら、ママ許すから!」


「リ、リリーママ! そ、そんなこといきなり言われても!」


 思わず声が上ずった。リリーママはクスクス笑いながら僕の頬をつねる。


「いいのよ、分かってるわ。でも無理はしないでね」


 シドさんは少し離れたところで腕を組み、真剣な表情で僕を見ていた。


「……レオン、アークディオンの動きが気になる。危険を感じたらすぐに逃げろ……」


「分かってます、シドさん。メルヴでもリヴァンティアでも情報収集します」


 シドさんは頷くと、僕の肩に手を置いた。


「……次回からは商会の者を行かせる。皇帝の弟に何度も砂漠を往復させるわけにはいかん……」


「はい、ありがとうございます」


 僕は深く頭を下げた。シドさんは少し照れたように咳払いをすると、護衛の隊長に合図を送った。


「さあ、出発の時間だ」


 僕が大声で叫ぶと、キャラバンの人々が一斉に動き始めた。


 僕とセリウスくんは相棒のラクダに乗り込む。頭の良いラクダは既に準備ができていて、こちらの合図を待っているようだった。


「では行きましょう! リヴァンティアへ!」


 セリウスくんの声に合わせ、キャラバンは動き始めた。


 僕は振り返り、手を振るエリュアとリリーママ、頷くシドさんに別れを告げた。前を向き、深呼吸する。


 オーロラハイドの南門側は、広大な草原が広がっている。途中西へと交易路を曲がり、その向こうにメルヴが、砂漠まで行くとリヴァンティアがある。そしてファリーナちゃんが待っている。


 僕は今回持って行くショートパスタのことを思い出した。


 ペンネだけでなく、リガトーニ、マカロニ、ディタリーニ、オレキエッテ……様々な種類のパスタをファリーナちゃんに食べてもらえる。それを想像すると、自然と笑みがこぼれた。


 同時に、アークディオンの動きが気になる。ファリーナちゃんからの手紙にあった通り、何か不穏な動きがあるのかもしれない。


「セリウスくん、メルヴについたら、まずハッサンさんに会って情報を集めよう」


「うん、レオンくん。それがいいと思うよ」


 草原の道を進みながら、僕たちはメルヴまでの旅程を確認し合った。


 オーロラハイドからリヴァンティアまで約49日の旅になる。


(ファリーナちゃん、元気にしているかな……)


 青空の下、キャラバンは進んでいく……


 長い旅路の苦労はある。だが、ファリーナちゃんの喜ぶ姿を見たいという気持ちのほうが強かった。


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