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交易路の守護者!~理想の国づくりと貿易で無双したいと思います~  作者: 塩野さち
第三章 熱砂の姫君

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リヴァンティアの親書

【レオン視点】



『リベルタス歴17年、7月8日 16時ごろ 曇り』



『コンコンコンッ』


 皇帝の執務室のドアが優しめにノックされる。


「エリュアだよ~カイルお兄ちゃん入るわね~」


「おう! エリュア、入れ!」


 皇帝(お兄ちゃん)が入室許可を出す。


 僕たち兄妹(けいまい)の末っ子で、エルフのエリュアが入ってきた。


 オーロラハイドも既に初夏である。


 エリュアは涼し気な、白いワンピースを着ていた。


 彼女はエルミーラママとお父さん(ゼファー)の娘なのだが、ママのほうに似ている。


 緑色の長い髪を姫カットにしており、翡翠(ひすい)色の瞳をしていた。


「おかえり! レオンお兄ちゃん! おみやげのお菓子どこ~?」


 エリュアはソファーのほうに『トトトッ』と走りよると、カイルお兄ちゃんの隣に座る。


「ははっ、エリュア。お土産なら、セリウスのヤツが取りにいってるぞ。それよりレオン、親書のほうはどうだ?」


 カイルお兄ちゃんは、イチゴジュースを飲み干してしまい、エリュアの分も含めておかわりを頼んでいた。


「ちょっと待ってお兄ちゃん。けっこう時候の挨拶が長くて……やっといま本題を読んでいるところ……うん、基本的には国交樹立をお願いしますって書いてあるよ。それより二枚目があるね……あっ、これファリーナちゃんからだ」


 僕はファリーナちゃんからの手紙に喜んだ。


 彼女の踊りを思い出し、思わず笑みがこぼれる。


 熱砂の姫君(ファリーナちゃん)はなかなか達筆で、字がうまい。


「あら~レオンお兄ちゃん……そのファリーナちゃんって子が気になるんじゃない?」


 エリュアがニヤニヤしながら僕を見る。


「ああ、本当だぜ。レオンって分かりやすいヤツだったんだな。いい女なのか?」


 カイルお兄ちゃんまでニヤニヤしていた。


「ちょっと、二人とも冷やかさないでよ! まあ、確かにファリーナちゃんはカワイイけどさ。ん? リヴァンティアの西にある、アークディオンが最近兵を集めているらしいと書いてあるね」


 僕は眉間にシワを寄せると、声を若干低くした。


「ふ~ん、砂漠で戦争か? レオンどうする? いちおう様子を探らせるか?」


 戦争となればカイルお兄ちゃんはとても強いと思う。


 小国とは言え、今まで独立を保っていたグラナリアに勝利し、リベルタス帝国に編入したのだから、その手腕は心強い。


「そうだねお兄ちゃん。狐のハッサンさんとか、ラクダのサイードさんに偵察を頼めないかな? 砂漠の情勢を探らせるんだ!」


 土壁から砂岩の城壁へ移行しているメルヴの様子を思い出す。


「レオン分かったぜ。お前のオンナのためだもんな! いいぜ、兄貴として一肌脱いでやる!」


 カイルお兄ちゃんは、腕まくりしながらガッツポーズをとる。


「きゃ~! レオンお兄ちゃんの好きな人ってどんな人なんだろう?」


 エリュアまでも両頬に手を当てながら、腰をくねくねさせている。


 座りながら器用なものだ。



『コンコンコンッ』


「セリウスです、お土産のデーツバー持ってきました」


 セリウスくんが入室して、僕の隣に座る。


 ローテーブルの上に、デーツバーの入った皿を置く。


「これはデーツとかナツメヤシと呼ばれる砂漠の果物を乾燥させて、ナッツと混ぜてオイルでコーティングした食べ物です。保存食としても良いですよ」


 セリウスくんがデーツバーについて説明してくれる。


 デーツバーはダークブラウンで小さな長方形をしていた。


「じゃ失礼して毒見しますね」


 セリウスくんがデーツバーを1本とると口の中へ含む。


 彼は美味しそうにムシャムシャしている。


 どうやら毒はなさそうだ。


 僕たち皇族もデーツバーに手をつける。


 口の中に入れると、味のファーストインパクトがくる。


 しっとりとしたデーツの甘みが口中に広がり、キャラメルのようなコクとフルーティーな酸味のバランスを感じる。


 噛むほどに、ナッツの香ばしさと細かい粒感がプチプチと弾け、歯ごたえのあるアクセントをプラスしてくれる。


 デーツの自然な甘さとナッツのほろ苦さが交互に顔を出す。


「おうっ、コレめちゃくちゃ美味いじゃん! レオンよくやったな!」


 お兄ちゃんはデーツバーを平らげると、もう一本に手をつける。


「はむはむはむっ! これオーロラハイドじゃ食べられないわ! 珍しいわねっ!」


 妹のエリュアも夢中でデーツバーを食べていた。


「ほかにも色々な香辛料があります。砂漠で仕入れたレシピを厨房の人に渡したので、後で味見してみましょう!」


 セリウスくんが色々と手回ししてくれていたらしい。


 旅の前と比べると、ずいぶんと頼もしくなっている。


(ファリーナちゃん、無事だといいけどなぁ……まさかリヴァンティアが戦争に巻き込まれたりしないよね?)


 デーツバーは美味しかったが、それだけにファリーナちゃんを強く意識してしまい、胸がしめつけられるような気がした。


 デーツバーの後味は、少しほろ苦かった……


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