表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
109/145

帰還

【レオンくん15歳視点】



『リヴァンティア歴208年、リベルタス歴17年、5月22日 夕刻』



 僕はファリーナちゃんの部屋に連れて来られた。


 部屋には宰相のラシームさんが居た。


 ファリーナちゃんはお花摘み中で席を外している。


 今までファリーナちゃんとラシームさんに、オーロラハイドのことを色々と語った。


 父ゼファーが国を興したこと。


 塩の貿易で発展したこと。


 フェリカ国から独立してリベルタス公国となったこと。


 お父さん(ゼファー)がグラナリア公国に討たれてしまったこと。


 兄カイルがグラナリア公国をオルヴァリスの戦いで破ったこと。


 グラナリア公国の降伏と併合、そして兄カイルがリベルタス皇帝として承認されたこと。


 ヤキトリが流行っていること。


 最近、グラナリアから小麦が沢山入ってきたこと。


 新しく、お好み焼きが流行り始めたこと。


 西方に交易路を伸ばしたいこと。


 僕が皇帝の弟であること。


 など、言い出せばキリがなかった。


 特にファリーナちゃんは、ヤリトリとお好み焼きに興味深々だった。


「レオン殿。貴殿の目的は、我がリヴァンティアとリベルタス帝国との国交樹立でございましたな。よろしいでしょう、宰相として承認したいと思います」


 ラシームさんが、コーヒーを置くと静かに言った。


 僕もコーヒーを置く。


「えっ! よろしいのですか? ありがとうございます! 末永き友好をお願いします! これでオーロラハイドへ帰ることができます!」


 僕は思ったより早く帰れることを素直に喜ぶ。


『タタタタッ』と足音が聞こえると、ファリーナちゃんが部屋に戻ってきた。


「なんじゃ? おぬし、もう行ってしまうのか?」


 彼女は瞳をうるうるさせて、僕のほうを見る。


「あはっ、ファリーナさん。また遊びに来るよ!」


「絶対じゃぞ、絶対じゃぞ! 必ずまた来るのじゃ!」


(おっと、いけない、いけない。つい『ファリーナちゃん』と呼びそうになってしまった。でも、僕の中では『ちゃん』なんだよなあ……)


『コンコンコンッ』


 ドアがノックされ、セリウスくんが食事を持ってきたことを衛兵が告げる。


 ラシームさんが入室を許可する。


「あっ、あの。ペンネとトマトソースをお持ちしました」


(セリウスくん、いきなり連れて来られてパスタ作っていたからなぁ。彼にも悪いことしちゃったかな?)


 その晩は、ファリーナちゃんの部屋で遅くまでペンネをメインとしたパーティーが続いた。



『リヴァンティア歴208年、リベルタス歴17年、5月24日 早朝』



 僕とセリウスくんとサイードさんは、さっそくリベルタス帝国へ帰還することになった。


 相棒のラクダに乗り、リヴァンティアの門へ向かおうとすると、宮殿のほうから駆けてくる少女がいる。


 ファリーナちゃんだ。


 泉の浄化を終えて、そのまま走ってきたのだろう。


 踊り子の衣装に羽衣姿のままだ。


「レオン! また来るのじゃぞ! 必ずじゃ! 必ずじゃぞ!」


 彼女は胸の前で両手を握りしめ、今にも泣きそうな顔をしていた。


 声も少し震えていた。


「うん! また新しいショートパスタを持ってくるよ! ファリーナさん、それまで元気でいてね!」


 僕はラクダに乗ると、彼女に手を振った。


「うん、うん、待っておるぞ……待っておるぞ……」


 数日滞在しただけではあったが、リヴァンティアでの経験はかけがえのないものだった。


 素直にまた来たいと思った。


 なにせ待ってくれる人がいるからだ。


 僕たちを乗せたラクダのキャラバンが見えなくなるまで、ファリーナちゃんが手を振っていた……


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
レオン君とファリーナちゃんの恋愛見れると思ったんだが残念(>_<) 面白かったです\(^o^)/
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ