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交易路の守護者!~理想の国づくりと貿易で無双したいと思います~  作者: 塩野さち
第三章 熱砂の姫君

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ファリーナの朝

【熱砂の姫君 ファリーナちゃん14歳視点】



『リヴァンティア歴208年、5月22日 朝』



 (わらわ)はダブルサイズのベッドでうっすらと目をさます。


 朝は弱いほうだったが、泉の浄化をするようになってからは、起きれるようになった。


 それでも朝が苦手なのは変わらず、ぼんやりとベッドの天蓋を眺める。


 天蓋には、サラーブ川をモチーフにした、リヴァンティア王家の紋章が掘られていた。


(サラーブ川のおかげで、リヴァンティアでは水が手に入るのじゃ……でも砂だらけで飲める水ではないからのう……今日も泉を浄化しにいこうかの……)



 正直、退屈な毎日だった。


 毎朝起きては、泉の浄化……それ以外は何もやらせてもらえない。


 妾は女王じゃが、いまだに『熱砂の姫君』と、姫呼ばわりされておる。


 国政を、宰相で兄のラシームがやってくれるのはありがたい。


 ありがたいのだが、全部を兄がやってしまう。


(少しは妾も政治をやってみたいのだがの……)



 いまだ眠い(まなこ)を覚ますために、ベッドの横にある(から)の洗面器に、権能を使って水を出す。


 青い光と共に、透き通ったキレイで冷たい水が洗面器に満たされる。


 洗面器に両手を入れると、ちょっと乱雑に顔を洗い、髪を整え、体を拭く。



(水はもったいないからのう……)


 自分の体を洗った水を再び浄化する。



 こうしておくと、いつでも奇麗な水が使える。


『コンコンコンッ』


「ファリーナ、入るぞ」


 兄のラシームの声だ。


「どうぞ」


 あくびをしながら、兄を部屋に招き入れる。


 部屋に入ってきた兄は、顔を洗って髪を整えていたようだった。


 兄も水の権能を使えるのだ。


 まあ、兄妹(けいまい)なのだから、同じ権能を使えても不思議は無い。


 正直兄が王になればよいとも思う。


 だが、血筋がどうのこうので、妾が女王になっている。


(そろそろ、姫君ではなくて、女王と呼んで欲しいものじゃがの……)


 兄は手に一枚の羊皮紙を持っていた。


「昨日の赤髪のレオンという男子についての報告書だ。ざっと目を通してくれ」


「ありがと、ラシーム(にい)


 報告書を受け取り読むと、不思議な事が色々と書かれていた。



 まず、出身地は『オーロラハイド』となっているが、これはどこにある異国なのだろう?


 知らない国だ。


 メルヴ総督の『狐のハッサン』の息子、『ラクダのサイード』のキャラバンでやって来たと言うのは分かる。


 メルヴは東の果てにある交易都市だ。


 なるほど、メルヴ総督の息子と何かつながりがあると言うことなのだろうか?


 あとは、バザールの広間で『ペンネ』なる異国の食べ物を実演販売していると書いてある。


 報告書にはペンネの絵が描かれていた。


 円筒形で斜めにカットされている。


 たくさんのお湯で11分かけて茹でる食べ物?


 麦から作られているらしい?


 ここリヴァンティアでは麦自体が珍しい。


 どうにも味が想像できない。


 ペンネとやらを買うためには、行列ができて並ぶほど人気らしい。


「ねえ、(あに)ぃ。このペンネっていうのを食べてみたいのじゃ! 誰か列に並ばせておいてほしいのじゃ!」


 妾はうるうるとした瞳で、兄を見つめた。


 兄は妾のこの顔に弱い。


 大抵の事は聞いてくれる。


「ふふっ、ファリーナがそう言うと思い、すでに手配してある、心配するな。護衛の準備も済ませた」


「じゃあ、じゃあ、妾が行っても問題ないのじゃな?」


 妾とラシーム(にい)は、時々お忍びで街へ出る。


 これは自慢なのじゃが、リヴァンティアの交易品は色々あり、街で知らないモノを探すのが楽しみになっていた。


「それも朝の勤めを果たしてからだ。泉へ行くぞ」


「分かったのじゃ……」


 妾は気のない返事をすると、踊り子の羽衣を持った。



 宮殿に隣接している泉には、今日も多くの水を求める観客が集まっていた。



 その先頭に、赤髪の男子……レオンを見つける。


 妾の顔が『パアアアアッ』と明るくなるのが、自分でも分かった。


(踊れる! 今日はもっと踊れる!)


 なぜか彼を見ていると、心が晴れやかになる。



 彼の優しい視線に目を合わせてから、妾は踊り始めた……


 視線が合うと、体が軽くなるのを感じた。


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