75.仕事始めだ。
「あれ?お嬢。日付間違えてない?」
「そう言う、オッチャンは?制服きちんと着てるし。」
よく見ると、手に漬物の箱がぶら下がっている。
船越と、署長である神代の好物の漬物だ。
船越の親戚が漬物屋なのだ。
========== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
弓矢哲夫・・・京都府警捜査四課刑事。警部。ひげ面で有名。
中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。
楠田巡査・・・チエの相棒。
大前田警視正・・・京都府警本部長。白鳥の父。
船越紅葉・・・副署長の娘。巡査。結婚していたが、離婚して復職。
遊佐圭祐・・・チエの幼なじみ。大学同級生。CATV『きょうとのテレビ』課長。
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午後1時。東山署。署長室。
鼻歌を歌いながら、船越が入ってくる。
「あれ?お嬢。日付間違えてない?」
「そう言う、オッチャンは?制服きちんと着てるし。」
よく見ると、手に漬物の箱がぶら下がっている。
船越と、署長である神代の好物の漬物だ。
船越の親戚が漬物屋なのだ。
「っははーん。オッチャン。正月早々、モミちゃんと喧嘩して、その漬物言い訳にして家出てきたん?」
「さすが、名刑事、暴れん坊小町。鋭い推理。で、お嬢は?」
「事件の記録簿の整理。普段、なかなか出来へんから。あ、チェック終った分、判子押して。そんならモミちゃんに言い訳できるやろ?」
モミちゃんとは、離婚して『出戻り居候』の、船越の娘で、小町の要望で事務作業その他をやらせている。
「そやな。お嬢は、春に研修出向やサカイな。」
チエは、年度が替わると、大阪府警に出向になる。さらに大阪府警からEITO大阪支部に出向が決まっている。
後任があるかどうかは分からないが、チエはチエしか出来ない捜査手順、手腕で通してきた。取り調べ調書が一番厄介だ。外国語を含めて第三者に『翻訳』する必要がある。『公正な取り調べ』の為に録音もするようになったが、あまり役立てる者もいないし、検察に提出を求められるのは、ペーパーである。
午後4時。廊下に出ると、小町が待っていた。
2人がクレープ屋に行くと言うので分かれようとしたが、チエは「たまにはええやろ?」と引き留めたので、3人でクレープ屋に行った。
クレープ屋は、ボックス予約制だった。
そこへ、白鳥が来た。
「今まで、仕事手伝ってくれてたんよ。お礼に誘ってん。」
「チエちゃんは優しいな。」と、白鳥は笑った。
雑談をしている内に、もめ事の原因が分かった。
紅葉が昇進試験受けたい、と言い出したらしい。
「受けたらいいじゃない。僕が指導してあげるよ。いつもって訳にも行かないけど。」
「え?白鳥さんも巡査ちゃうの?」と、小雪が言うと、「違うんよ、小雪ちゃん。巡査部長受かったけど、白鳥君、辞退したんや。な、お嬢。」と船越はチエに同意を求めた。
船越は、昔から神代と付き合いがあり、チエが乳幼児の頃からチエとも付き合いがある。
それで、「オッチャン」「お嬢」と呼び合っている。茂原が「お嬢」と呼ぶのは、それを見て学んだのだ。
「その頃、お嬢はまだ巡査やった。ほら、クルマの後ろにシール貼るやろ。『お先にどうどす』シール。あれと一緒。で、あっと言う間に追い越し車線をずーん。」
「船越副署長、面白い。」と、小雪は手を叩いて喜んだ。
そこへ、チエのスマホに電話が入った。
チエはスピーカーをオンにした。
「ばらさん、事件か?」
「お嬢。烏丸御池のアパートで立てこもった男が火ィ点けよりました。」
「すぐ行く。」
「ほな、オッチャン、小雪ちゃん。後、頼むな。いくで、ダーリン。」
「はいな、あんさん。」
2人は、急いで出て行った。
「「「はいな、あんさん?」」」
船越と小雪は目を見合わせた。
―完―
※「はいな、あんさん」は、有名なマンガの台詞ですが、ネイティブ関西人は使いません。
クライングフリーマン




