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69.監禁

チエは、珍しく、楠田、紅葉と一緒に昼食を採っていた。

トレーに食事を載せた男が、チエのテーブルについた。

「警視。あのひげそり、よう剃れますわあ。流石、舶来は違いますな。」と、弓矢は言った。


========== この物語はあくまでもフィクションです =========

============== 主な登場人物 ================

戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。

船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。

茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。

白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。


中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。

楠田巡査・・・チエの相棒。

畑山紅葉もみじ・・・副署長の娘。巡査。亡くなった夫の姓のまま、復職。

弓矢哲夫・・・京都府警捜査四課刑事。警部。ひげ面で有名。


=====================================


午後12時。東山署。食堂。

チエは、珍しく、楠田、紅葉と一緒に昼食を採っていた。

トレーに食事を載せた男が、チエのテーブルについた。

「警視。あのひげそり、よう剃れますわあ。流石、舶来は違いますな。」と、弓矢は言った。

「私ら、席外しましょうか?」と、楠田が言うと、「大丈夫。デートの誘いやあらへんので。大体、白鳥君に勝てるもんはおらん。」

「で?」

「今朝、京都駅ビルの店で誘拐がありました。男女5人組。目撃者の撮影した写真で、下っ端の男を別件逮捕しました。自供によると、鞍馬の貸しビルに立てこもったようで、被害者と、リーダー格の被疑者が顔見知りで、金銭トラブルがあって、連れ去られたようです。被疑者の一人はオンナです。鞍馬に向かう途中で、運転手が事故起こしてます。で、怪我したから、その下っ端が包帯や消毒液をドラッグストアで買いあさってたんです。店員が『テンバイヤー』かと思って警察に通報。見張りやパシリやったら罪軽いよって諭して自供したんです。」

「ほな、捕まえたらエエンゃう?」

「貸しビルは反社でなく、半グレ。困ったことに外国語を話す。下っ端は在日やけど、日本語の方が得意。そこで・・。」

「応援やったら・・・そうか。引き受けた。いつ行くの?」

「夕方4時半に、半グレの会合があるそうです。」

「ご褒美は・・・考えておくわ。」

「おおきに。」


午後4時半。

表で、何かの映画の上映でもしているのか、大音声で聞こえるので、半グレの連中がぞろぞろ出てきた。

すると、音声が途切れ、チエの声が響いた。

"Who is bullying women?"(オンナを虐めるのは誰だ?)


チエを先頭に、府警四課と二課の刑事が半グレに対峙した。


午後6時。東山署。第一取調室外。

暫く続いた嗚咽が止んだ。

チエが出てくると、茂原と中町がオムツを持って入った。

「チエちゃん、『オンナの闘い』が絡んでたって?」

「そう。あんな醜男のどこがええねん。全員那珂国人やかけど、英語は通じた。」

暫くして、弓矢率いる刑事達が引き取りに来た。

連行する時、弓矢はチエと白鳥に軽く会釈した。

「何の合図?」と小雪が言うので、「お疲れさん、やな。」とチエは言った。

「本署にも、英語しゃべれる警察官雇用して、と募集しているけど、なかなかねえ。」

「ダーリン、オジサン、お義父さん、いや本部長に言うて。現場に向かう警察官のスマホに英語含めた外国語話せる『事務員』からテレビ電話で通訳させて中継させて、って。事務員を募集するんよ。危険な任務やない。」

「流石、国立大学卒業!!」と、小雪が茶化した。

「言ってみる。自動翻訳機だけでは間に合わない場面もあるからね。」

チエと白鳥は、熱い抱擁を始めた。

小雪は後ろを向いた。

取調室から出てきた船越は、回れ右して、取調室に戻った。


午後8時。神代家。

「小雪ちゃんから聞いたで。『アマエタ』やな、チエは。」

チエは、「うん。」と言って、服を脱ぎ始めた。

親子の『裸の付き合い』の合図だ。


―完―


※「アマエタ」とは、「甘えん坊」の意味の放言です。





今朝、京都駅ビルの店で誘拐がありました。男女5人組。目撃者の撮影した写真で、下っ端の男を別件逮捕しました。自供によると、鞍馬の貸しビルに立てこもったようで、被害者と、リーダー格の被疑者が顔見知りで、金銭トラブルがあって、連れ去られたようです。

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