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62.まさか

チエは言った。「さっき小雪ちゃんから連絡あってな。芸者ネットワークのスポンサーさんが倒れはったから、今日はホットラインが鳴ることはない。バラさん、警備は?」

 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。

 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。

 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。


 中町巡査・・・茂原の交代要員だったが、そのまま勤務している巡査。

 楠田巡査・・・チエの相棒。

 畑山紅葉もみじ・・・副署長の娘。巡査。亡くなった夫の姓のまま、復職。

 弓矢哲夫・・・京都府警捜査四課刑事。警部。ひげ面で有名。

 灘康夫・・・京都府知事。元作家。「康夫ちゃん」のニックネームがある。

 金平桂子・・・京都市市長。


 ジョンシー・マッケンジー・・・日本駐在のアメリカ人ジャーナリスト


 =====================================



 午後1時。東山署。会議室。

 チエは言った。「さっき小雪ちゃんから連絡あってな。芸者ネットワークのスポンサーさんが倒れはったから、今日はホットラインが鳴ることはない。バラさん、警備は?」

「配備、終りました。ホンマに来るんですかね?」と茂原は不審そうに言った。

「ホンマかどうか、その時間になったら、分かる。愉快犯の可能性も勿論ある。この頃は、SNSが普及したお陰で色んな情報が飛び交うが、悪戯の類いも多いからな。でも、市長宛に脅迫状来たら、まさかの準備もせんわけにはいかん。幸い、文化芸術会館は、こじんまりしている。以前、大学に逃げ込んでいたけど、捕まえられた。逃げ道は限られているんや。」

 署長の言葉に続けて、「幸か不幸か、イベントは今日だけや。何日も張り込む訳やないから、気張ってや。」と、副署長が続けた。

 午後5時。上京区。京都府立文化芸術会館。

『民族衣装コスプレ大会』は、市長の肝いりの企画だった。

 政府の外国人インバウンド体制の影響で、外国人の訪日が増えた。

 京都は、日本一と言っていいほどの観光都市だ。

 以前にも増して、外国人が多くなった。

 ただの観光客だけではない。

 外国人犯罪者も増えた。

 半グレ、反社が絡んで、複雑な事件も多く発生している。

 東山署が陣頭指揮を執るのは、『暴れん坊小町』こと神代チエがいるからだった。


 午後8時。

 市長と秘書が、楽屋に戻ると、死体があった。

 秘書は、すぐにチエ達を呼んだ。

 チエは、大会コンテストの参加者の1人が死体になっていたと思ったが、おかしい。

 鑑識が来る前にチエが検分すると、殺されてから、そんなに時間が経っていない。

 茂原は、非常線を張るために奔走した。

 大会主催者がやってきて、参加者名簿を見たが、該当者はいない。

 金平市長が気づいた。

「神代さん、おかしいわ。この女性、ミニスカートを履いている。マレーシアの民族衣装っぽいけど、違う。マレーシアでは3種類ほど民族衣装があるけど、『肌の露出はタブー』なの。」


 そこに、弓矢が鑑識と入って来た。

「膝の裏を見せて下さい。」と、弓矢は鑑識課員に言った。

「四課の仕事だな。この仏さんは、ただもんじゃない。タレコミの通りの入れ墨だ。」

「この大会を隠れ蓑にするとは、洒落がキツいですね。」

 弓矢の隣から顔を出したのは、ジョンシーだった。

 普段はジャーナリストとして諜報活動をしているCIA局員だ。

「CIAにもタレコミですか?」と、弓矢が尋ねると、「いえ、コスプレ大会の取材だったけど、騒がしいから。因みに、出場者は全員ロビーにいますよ。」と、ジョンシーが答えた。

「弓矢さん、タレコミって?」「入れ墨女が大会で殺される、ってタレコミです。まんまだな。」

「バラさん。宿泊先明らかにしてくれた出場者は帰してあげて。」

「そうですね。観客がアリバイ証人か。分かりました。」茂原が出て行った。


「警視。これ、この入れ墨、ペイントですよ。」と、鑑識課長が言った。


 ジョンシーは走った。チエも走った。

 ロビーに大会出場者が、名簿に宿泊先を書いていた。


「MCの常井さん、よく見ると、靴を履き替えてますね。何かで汚れたかな?」とジョンシーが言うなり、常井は逃げ出した。

 チエは、追い掛け、延髄切りをし、常井は伸びた。

「楠田。手錠。」

 楠田はチエに手錠を渡し、チエは、常井を引きずり挙げて手錠をかけた。

「お見事!!」と、ジョンシーが言うと、大会出場者はスタンディングオベーションをした。後から来た灘知事が驚いた。


 午後9時。神代家。

 電話を切ると、神代はチエに言った。

「落ちたよ。雇い主は、ゼッド組の若頭・・・副社長。ガイシャの女は組員で、妊娠を理由に抜けようとしていたが、ばれて殺されることになった。MCの常井は、途中で利用されていることに気づいた。で、マッチポンプでタレコミ。殺す積もりでなく逃がそうとしたが、揉み合い、結局殺した。捕まって良かった、と言ってる。しかし、流石CIAやな。靴が変わったのに気がついてた。MCが『お色直し』はおかしいからな。」

 チエは、杏月バーを神代に手渡しながら、「大丈夫かな?芸者ネットワーク解散するかも、って小雪ちゃんが言ってた。」と言って口を歪めた。

「明日、また小雪ちゃんに聞いたら?」

「そやな。今夜は『一寸法師』がええな。」

 神代は、溜息を付きながら、「はいはい。」と応えた。


 ―完―



市長と秘書が、楽屋に戻ると、死体があった。

秘書は、すぐにチエ達を呼んだ。


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