表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/70

48.湯豆腐と『最後の一葉(いちよう)』

チエは、白鳥と、休暇を楽しんでいた。チエは水路閣のアーチや琵琶湖疎水を眺めるのが好きだった。

突然、チエのスマホが鳴った。茂原だ。


 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。

 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。

 嵐山幸恵・・・小雪の母。

 島代子しまたいこ・・・芸者ネットワーク代表。元芸者元プログラマー。小雪の先輩らしいが、小雪以外には、本名は知られていない。また、本部の住所も極秘である。



 =====================================


 ※「最後の一葉」(さいごのひとは、さいごのいちよう、原題:The Last Leaf)は、オー・ヘンリーの短編小説。「最後の木の葉」とも。

 ※最後に残った葉はベアマンが嵐の中、煉瓦の壁に絵筆で精緻に描いたものだった。 ジョンジーは奇跡的に全快を果たすが、冷たい風雨に打たれつつ夜を徹して壁に葉を描いたベアマンは、その2日後に肺炎で亡くなる。

 ※肺炎で寝こんでしまったジョンシーと、それを支えるスー。 ジョンシーは、毎日隣家のレンガの壁にしがみついている古いツタの葉を見つめる日々。 一枚ずつ散っていくツタの葉と自分の命を重ね、「最後の一枚が散ったら、わたしも死ぬんだわ」と言い出す。 そんなジョンシーを不憫に思う、同じ建物に住む絵描きのベアマン老人。

 ※湯豆腐


 ☆営業時間は、お店に寄って違います。事前に確認しましょう。



 午後5時。南禅寺の水路閣。

 チエは、白鳥と、休暇を楽しんでいた。チエは水路閣のアーチや琵琶湖疎水を眺めるのが好きだった。

 突然、チエのスマホが鳴った。茂原だ。

「お嬢。今、どこです?」

「南禅寺の水路閣や。」「デート中に申し訳・・・。」

「ええから、要件いいや。ばらさん。」

「場所は南禅寺の純正。湯豆腐屋さんです。外人同士揉めてるらしいです。私、まだ、大阪です。」

 電話を切ると、「また、デートの邪魔が入った。」と、チエは白鳥に甘えた。

 笑いながら白鳥は、「すぐそこだね。行こう。未来の奥様。」と言い、ヘルメットを被り、白バイに乗った。

 チエは、予備のヘルメットを被り、『勝負スカート』を翻し、白鳥の後ろに跨がり、しがみついた。

 白バイは、10分もしない内に、店に到着した。

 揉めている外人の1人を見て、チエは声をあげた。以前、芸者ネットワークの関係の事件で知り合った、日本駐在のアメリカ人ジャーナリスト、ジョンシー・マッケンジーだ。

「あれ?ワールド・サテライト・ジャーナルのジョンシーさんやないの。」

「ああ。いい所へ、警視。実は、17時にオープンのお店に来たら、クローズだって言われて。」と、手にしたガイドブックを見せた。

「ああ。これ、間違っているわ。17時にオープンのお店もあれば、クローズのお店もあるの。このお店は18時にクローズだけど、17時にラストオーダーなの。ごっちゃに掲載したのね。それと、夜オープンのお店は、予約制よ。予約してあげるわ。」

 チエがスマホで予約電話している間、キャッチホンが入った。

 電話を切ると、小雪が涙ながらに電話してきた。

「ウチ・・・ウチ・・・。」

「どうしたん?小雪ちゃん。もしかして、おばちゃんが?」

「うん。さっき来たんやけど・・・。」

「すぐ行く。」チエは、湯豆腐屋の電話番号を紙に書いて、ジョンシーに渡した。

「ゴメン。急用できたわ。場所は、電話で確認して。Sorry」

 最後は、もう一方の外人に言って、チエは、白鳥の白バイに乗って去って行った。

 ジョンシーは、チエのことを『暴れん坊小町』とは紹介せず、『将来の警察トップ』と紹介した。

 午後5時45分。上白川上野病院。

 チエ達が案内されたのは、小雪の母幸恵の病室ではなく、個室だった。

 医師が、チエ達に黙礼をして出て行った。

 小雪は、チエに抱きつき、号泣した。

 暫くして、看護師がやってきた。

 遺体の清拭を行うので、待機室で葬儀社に連絡してくれ、と泣いている小雪に言った。

 チエは、小雪の肩を抱き、待機室に移動した。

 東山署の署長である父に電話した。「白鳥君から聞いた。葬儀その他は、島さんに任せて、お前は、小雪ちゃんにずっと付いていてやってくれ。全部終るまで帰って来なくていい。家にも、署にも。」

「今、看護師さんから経緯を尋ねて来た。昨夜、誤嚥性肺炎を起こしたらしい。小雪ちゃんには報せるな、『最後の一葉いちよう』が落ちたから、覚悟は出来てるって。一旦回復したんだけど、五時頃、急変したらしい。最後の一葉って、隣の幼稚園のことらしい。今、改装で吹き付け工事の為、壁面の『木』は見えなくなっているんだ。」と白鳥は淡々と話した。

「ちゃんが、ずっと付いていてやれって。葬儀とかは、島さん達に任せればいい、って。」「うん。仕事の方は、皆でバックアップするからね。」

 翌日、翌々日。お通夜告別式は盛大に行われ、元芸者だった、小雪の母の為に、芸者組合からも次々と弔問に訪れた。

 チエは、『親族代表』になった。

 ―完―



今、看護師さんから経緯を尋ねて来た。昨夜、誤嚥性肺炎を起こしたらしい。小雪ちゃんには報せるな、『最後の一葉いちよう』が落ちたから、覚悟は出来てるって。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ