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43.賭け

チエは、神代の指示で、部下達と府知事と市長の『新春討論会』の警備に来ていた。

チエのスマホが鳴動した。


 ========== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 戸部(神代)チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。

 白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。

 小雪(嵐山小雪)・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。

 神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。

 茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。

 船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。

 大前田弘警視正・・・京都府警警視正。大きな事件では本部長を勤める。

 中町圭祐・・・下鴨署からの転勤。巡査部長。

 楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。

 灘康夫・・・京都府知事。元作家。「康夫ちゃん」のニックネームがある。

 金平桂子・・・京都市市長。

 弓矢哲夫・・・京都府警4課刑事。警部。


 =====================================


 午後9時。文化芸術会館。大ホール楽屋。

 チエは、神代の指示で、部下達と府知事と市長の『新春討論会』の警備に来ていた。

 チエのスマホが鳴動した。

 神代からだった。午後10時に『バカラ賭博が開かれる』というタレコミがあったのだ。

 芸者ネットワークからではない。チエは戸惑った。

「神代さん。何か事件ね。ここは、府警の警察官と警備員に任せて行って頂戴。」と市長は言った。

「そうだよ。『起るかも知れない犯罪』より、『起った犯罪』が優先だ。」と知事も言った。

「了解しました。あ、これを。」と、チエは市長と知事に『お守り』を渡した。

「まあ、八坂神社のお守りね。しっかり持っているわ。」と、市長は微笑んだ。

 2人は、数々の事件でチエが活躍していることを知っていた。

 だから、『全幅の信頼』があるのだ。

「では。」と敬礼をして、会館を後にした。


 午後10時。祇園。雑居ビル3階。カジノ店。

 現場には、既に府警4課刑事弓矢哲夫と部下達と、東山署から茂原・中町が来ていた。

「暴れん坊小町か、心強いな。」と、ひげ面の弓矢は笑った。

 午後10時半。

「そろそろだな。行くぞ、警視殿。」と、弓矢が合図した。

 20人の捜査員が一気に踏み込んだ。

 あっと言う間に、店長と従業員6人、客5人らが逮捕された。

 チエは、経営者の男、門前浩一に言い渡した。

「こんな所でショバ開くとは、エエ度胸やな。門前浩一。『賭博開帳図利の疑い』で現行犯逮捕する。大人しく、お縄につけ。」

 府警の刑事達は、現金約400万円やバカラ台2台などを押収した。

 この店は、既に府警から目を付けられており、監視カメラが取り付けられていた。

 チエは不審に思った。監視カメラがあり、刑事達が張り込みをしていた筈なのに、何故、『タレコミ』があったのだろう。

 しまった!罠か。

「ばらさん、このカメラとビル全体、調べさせて。中町、ついて来て。」

 ミニパトに戻ると、楠田が待っていた。「署に戻ります?それとも自宅に?」

「違う。文化芸術会館や。引き返すんや。サイレン鳴らせ。」

 出発すると、チエは署に電話をした。

 副署長が出た。「お嬢。えらいこっちゃ。府知事と市長が誘拐された。白いライトバンの目撃情報がある。今、白鳥君が追跡中や。」

 チエはデジャブを感じながら、一か八かだったが浅川運輸に電話、相手は簡単に出た。

「はい。浅川運輸京都営業所。」

「こちら、東山署の戸部警視です。御社のトラックのネットワークで探して貰えませんか?白いライトバンとしか分かっていません。目撃情報は複数台でも構いません。府知事と市長が討論会の後、誘拐されました。」

「了解しました。喜んで協力させて頂きます。」幸い、以前の事件でお世話になったオペレーターだった。

 固有のネットワークを持つ、トラックのドライバーは、いつも運転しながら、お互いに情報交換し、独自の合図を送る。『この先、事故で迂回させせられるぞ』とか。

 白鳥を信頼していない訳ではない。だが、白バイの追跡ならサイレンは鳴らせるが、通常バイクは、そうは行かない。

 今日は非番だったが、念の為、チエが白鳥に応援を独自に頼んでいたのだ。

 午前2時。京丹後市大宮町。

 別荘の一つに、白いライトバンが駐車している。

 浅川運輸の情報通りだった。

 チエと楠田は、必死で叫んだ。「火事やー、火事やー!!」

 家人が出てきた。

 楠田はミニパトの中に隠れ、警察無線で本部に連絡した。

 白鳥・チエ・中町の3人は、20人いた、反社の人間を倒した。

 パトカーのサイレンが鳴って近づいて来た。

 地元の警察署のパトカー、府警のパトカーが到着した。

 3人は、別荘の中を『家捜し』した。

「遅いわよ、神代さん、お腹減っちゃった。」

「僕は、ラーメンでもいいよ。」

 チエのゲラゲラ笑う声が、夜中の別荘地に響いた。

 翌日。午前8時半。東山署。宿直室。

 小雪が、パンと缶コーヒーを置いて、出て行った。

 目覚めたチエは、呟いた。「パンティは要らんやろ。パンは要るけど。」

 パンと缶コーヒーはパンティの上に乗っていた。

 ―完―

 ※このエピソードは、現実の事件を題材に、小説として再構成しています。



地元の警察署のパトカー、府警のパトカーが到着した。

3人は、別荘の中を『家捜し』した。

「遅いわよ、神代さん、お腹減っちゃった。」

「僕は、ラーメンでもいいよ。」


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