42．轢き逃げの真相
「東山署の神代チエ警視です。良心に従って真実を述べ，何事も隠さず，偽りを述べない旨を誓います。」
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝ この物語はあくまでもフィクションです ＝＝＝＝＝＝＝＝＝
============== 主な登場人物 ================
戸部（神代）チエ・・・京都府警警視。東山署勤務だが、京都市各所に出没する。戸部は亡き母の旧姓、詰まり、通称。
白鳥純一郎・・・チエの許嫁。京都府警勤務の巡査。実は、大前田警視正の息子。母の旧姓を名乗っている。
小雪（嵐山小雪）・・・チエの小学校同級生。舞妓を経て、芸者をしている。
神代宗佑警視正・・・京都府警東山署署長。チエの父。
茂原太助・・・東山署生活安全課警部補。
船越栄二・・・東山署副署長。チエを「お嬢」と呼んでいる。
大前田弘警視正・・・京都府警警視正。大きな事件では本部長を勤める。
中町圭祐・・・下鴨署からの転勤。巡査部長。
楠田幸子・・・チエの相棒の巡査。
小鹿・・・小雪の仲間の芸者。
小夏・・・小雪の仲間の芸者。
小梅・・・小雪の仲間の芸者。
小菊・・・小雪の仲間の芸者。
灘康夫・・・京都府知事。元作家。「康夫ちゃん」のニックネームがある。
金平桂子・・・京都市市長。
島代子・・・芸者ネットワーク社長。
貴志塔子・・・代子がプログラマー時代、組んでいた相棒。ネットワークシステムは、2人の合作だ。
西川稲子・・・代子と塔子の、プログラマー修行時代の仲間。
橘吉右衛門・・・府会議員。芸者ネットワークのスポンサーの1人。
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午後1時。中央区菊屋町。京都地方裁判所。
休廷の後、検察官の滝前映子は裁判長に、新たな証人の出廷を申請した。
「よろしいでしょう。」
チエは、証人席に立った。
「東山署の神代チエ警視です。良心に従って真実を述べ，何事も隠さず，偽りを述べない旨を誓います。」
チエは、2日前の午後4時半、四条烏丸のレンタルオフィス『烏マン』立てこもり事件の被疑者を逮捕、取り調べ中に共犯がいたことを究明、被疑者渡辺皓太が肩甲骨下に『双子の観音様』の入れ墨があることに目を付けて、交友関係や警察の前科者データを調べた。
前科者データには該当者が無かったが、轢き逃げ犯として捕まった、『ゴミ踏んだから罪にならへんと思って走ってたんや。』と嘯く（うそぶく）被疑者徳光守に共通点、詰まり、『双子の観音様』を見いだした。
徳光は、威勢が良かったが、被害者の高齢者女性が死亡したことで『過失致傷』から『過失致死』に変えて送検されていた。
「余程、被告人と渡辺皓太は仲が良かったのでしょうね。『おそろの入れ墨』彫ったりする位だから。被害者小沢慧子は、徳光守とは接点が無かったけれど、渡辺皓太と接点がありました。お金、借りていたようですね。小沢慧子は、無許可で所謂『高利貸し』をしていました。立てこもり犯にしては、あっさり投降したのが不自然でした。」
チエの供述を得て、滝前は、「裁判長。罪状を殺人に切り替え、殺人の『共同正犯』として、渡辺皓太を後日出廷させたいのですが・・・。」
「弁護人？」「しかるべく。」
午後4時。ミニパトの車中。
「観音様が1人、って知らないのかしら？厚かましい。いや、欲張りだわ。」
チエの隣の楠田が珍し興奮していた。
「楠田君。運転、変わろうか？頭に血イ上ってたら、危ないで。」と、後ろから茂原が声をかけた。
「だ、大丈夫です。」
「俺もおかしいな、と思っていたんや。被害者の社長とは、隣のオフィスというだけで、口論の末に立てこもり。で、お嬢を見たら投降した。お嬢が無傷で逮捕も珍しかった。」
「ばらさん、ありがとう。褒めてくれて。あの日は『ダブルヘッダー』やったからなあ。あ、楠田。西京極球場よって。」
「え？わかさスタジアムですか？遠回りですけど。」「ちゃんが、あの近くのグッズ屋さんで売ってる、タペストリー欲しがってたんや。誕生日プレゼントや。」
午後7時。神代家。
「チエ。わしの誕生日、8月やで。」「ええやん、前渡しや。」
神代は、『自分へのご褒美』のダシにされたことを叱らず、おでんを作った。
―完―
※京都市西京極総合運動公園野球場（きょうとしにしきょうごくそうごううんどうこうえんやきゅうじょう）は、京都府京都市右京区の京都市西京極総合運動公園内にある野球場。施設は京都市が所有し、京都市スポーツ協会が指定管理者として運営管理を行っている。
通称は「西京極球場」。2009年4月から京都市下京区に本社を置くサプリメントメーカーの株式会社わかさ生活が命名権を取得しており、「わかさスタジアム京都」（わかさスタジアムきょうと）の呼称を用いている。
「俺もおかしいな、と思っていたんや。被害者の社長とは、隣のオフィスというだけで、口論の末に立てこもり。で、お嬢を見たら投降した。お嬢が無傷で逮捕も珍しかった。」
