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以前、立て続けに続いた三ノ宮家が関わる企業の事故。それ以降これと言った事件、事故のニュースは見ていない。たまたまだったのか。若しくは、あの2件で目的が遂行しきったのか。スマホが鳴る。この着信音は電話の方だ。今どき電話をしてくる人は少ない。アプリでの通話やメッセージで事足りるからである。電話であると言うことはビジネス的なものであることが予測できた。実際にスマホを開いてみると三ノ宮家から電話であった。少し緊張する。俺は悪いことしてる訳じゃないんだけど。
「もしもし。梔子です。」
『もしもし。三ノ宮菜花の父親です。いつもお世話になってます。』
「いえいえ。今日はどういったご要件でしょうか。」
まだ学生の身分であるため、ビジネス的な話し方が身についているわけはなく。なるべく失礼のないよう、気を使う。
『いま、家庭教師休んでもらっているけどね。来週から復帰してもらいたいんだよ。』
「なるほど。承知しました。曜日と時間は今までと同じで良いでしょうか。」
『問題ないよ。ではよろしくね。』
電話が切られる。家庭教師が復活?三ノ宮家に潜り込むチャンスではあるものの、菜花さんはたつ兄が保護しているはずで、そんな簡単に奪い返されるような人じゃないのを知っている。誰に対して授業をするのだろうか。罠か?それともまた違う子供を連れてきたのか?しかし、潜り込むにはまたとないチャンスだ。これを逃すことはできない。再びスマホが鳴る。
「「三ノ宮菜花は保護している。罠だ。行くな。」」
たつ兄からのメッセージ。短く的確な文章。なんでこっちの状況を知っているかは知らないけど。再びの忠告である。罠か。男には罠だったわかっていても開けなければいけない宝箱がある。例えそれがミミックだろうが、上から斧が降ってこようが。その宝箱の中に宝石が入っていると信じて。
たつ兄には申し訳ないけど俺は行くことにした。念の為、十六夜九十九にだけはメッセージを送ることにする。助けてくれって訳では無いけど、向こうの邪魔になると困るからな。
俺は鬼の住む屋敷へ鬼退治へと向かうのであった。
試合が中止になったおかげで単独首位です!熱いね




