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結局三ノ宮家の本質的な謎は分からなかったものの、何かしらの秘密がありそれを握るのが菜花さんであることが何となくわかった。十六夜九十九とこれ以上関わることは双方にとって不利益を生じる可能性があるので必要以上に関わらない方がいいだろう。それは向こうもわかってるだろう。たつ兄からくるメールは毎回アドレスが違う。きっとスマホを落としたからって道行く女性に話しかけそのスマホからメールを送っているのだろう。たつ兄から言われたら断れないだろうしね。だからこちらからたつ兄へコンタクトをとる手段もない。たつ兄の実家に行けばなにか分かるかもしれないが、こちらも大学生としての本分があるので東北まで帰る時間は無い。これは詰んだか?
「りんくん。何をそんなに難しそうな顔してるの?」
九十九の所へ行くのに、琴葉を置いていったことによって、今日は1日琴葉に付き合うことになってしまった。まだ夏は遠いというのに蒸し暑い京都を。しかも観光客が溢れているような場所を歩かなければいけないことを億劫に思いながらも、ここで琴葉を放置したら怒られる。琴葉からではなく琴葉の両親と俺の両親からだ。理不尽すぎる…。
「こんな暑さなら誰だって怖い顔にでもなるだろ。」
「誰も怖い顔だなんて言ってないもん。」
「それで?今日はどこに行くんだ。」
「それはね!聖地巡礼だよ!」
いったいどんな宗教の聖地巡礼なのかと思いきや、琴葉が好きな漫画の舞台があるらしい。それも駅から結構離れており、琴葉は自分の好きなものだから元気だろうが俺からすればただの重労働である。荷物持ちもするからほんとに重労働である。
琴葉はオシャレに全く興味がなく、今日も変なTシャツにジーパン姿である。なんのキャラなのか聞いたけど特になんのキャラでもないらしい。そんな可愛らしいティラノサウルスが描いてあるのに?でもまぁ、こんな暑さだとオシャレに気を使う方が大変か。いい子とか悪いことか分からないけど、この辺な趣味のおかげで男が寄ってこない。寄ってこない訳では無いけど、めっちゃ可愛い変な女だと思われて逃げて言ってくれるから俺としてはその面では楽だな。
「ちょっと寄りたいとこあるんだよね。」
はいはい。どこでもついていきますよー。
「ここは…。」
そこは正に琴葉にとってのエルサレム。そう。変なTシャツがいっぱい置いてある古着屋であったのだ…。
変なTシャツがいっぱい置いてある古着屋にて
琴葉「あれもほしい!これもほしい!でもお金足りないなぁ。(*˙꒳っ|チラ」
凛太郎「こんなTシャツに金なんかだすか!」
琴葉、変なTシャツ以下略
「ガーンΣ(`・ω・Ⅲ)」




