cosθ≒0.982
「あんさん。どないつもりできはったん??」
刀を首筋に当てられ、正座で座ってかれこれ10分…。
どうしてこうなったのだろうか。
たつ兄からのメールからすぐに行動に移し、琴葉の追及から逃げてこの屋敷に来た。土曜日だったので観光客以外にも一般人が多く、混雑の電車に揺られてわざわざ足を運んだのだ。京都の中でも割と観光地に近く尚更混んでいた。観光地から少し歩き人が閑散としてきたところがたつ兄が指定してきた住所であった。表札を見ると、なんちゃら組って書いてあったが古いのか達筆すぎるのかで文字はよく読めなかった。まぁ、所謂仁義を大切にしている人達の家だったのだ。まぁたつ兄の知り合いだし悪いことはしてなさそうだけど。というわけで、堂々とチャイムを押した。それで気づいたらこうなっていたのだ。トホホ…。
「ま、待ってください。さっきから言ってますが、俺は十六夜九十九さんに用事があって来たんです!」
「それはさっきから聞いとんねん!なんで兄貴にこがいな小僧が顔見せできるかって聞いとんねん!」
そんなこと言われましても…。観察した結果どうやら十六夜九十九は出かけているみたいで俺について把握出来ている人がいないみたいだった。誤算だった…。
「何してんだお前ら。俺の客人に手ぇ出してんじゃねぇよ。」
その男は気配を消して入ってきて、ドスの効いた声で部下と思われる人に声をかけた。するとその場にいた者たちが一斉に頭を下げた。どうやらこの人が十六夜九十九なのだろう。
「し、しかし兄貴。こいつ急に来て兄貴に会わせろって…。」
「いいからいいから。こいつと2人きりにしてくれ。」
そう言われると部下たちは全員部屋から出ていった。そろそろ足が痺れそうだったのでありがたい。俺は立ち上がってズボンの誇りをパパっと払った。
「あんたが龍騎のいってたりんたろーってやつか。」
「そうだ。たつ兄とどんな関係かわからんが、三ノ宮家のことについて聞きに来た。」
下手に出ると圧に負けそうなので敬語は使わない。
「そうかそうか。とりあえずそこに座れや。コーヒーでいいか?」
この日本家屋には似合わないコーヒーが出される。よく見ると家具も日本っぽくないものがあった。
「そうか。あんたが龍騎の幼なじみかぁ。あいつの高校生活はどうだったんだ?」
それはもう。
「暴れてた。」
かははと笑うと、十六夜九十九はやっぱりなと言ってきた。
「あいつと俺もなぁ色々あったけど長くなるな。まぁただで三ノ宮家の話をするわけにはいかない。少し俺に付き合え。」
そう言うと、彼専用の椅子から立ち上がり、俺の対面のソファに座った。
「あいつとの出会いは…」
そこから話すのか…。
引越しで忙しくなるので火曜日まで更新無しで!




